スポーツ用品編・2014年【業界トレンド】

ランニング、アウトドア分野が好調。業界全体で若年層を取り込む動きにも注目

スポーツ用品・アパレル業界における主な国内メーカーとしては、アシックス、ミズノ、デサント、ゴールドウイン、ヨネックスなどが挙げられる。一方、海外メーカーとしてはナイキ、アディダスなどが大手だ。また、小売業ではアルペン、ゼビオ、メガスポーツ、ヒマラヤなどがある。こうした大手小売チェーンはスポーツ用品全般を扱うケースが多いが、各分野に特化した専門店(例えば、サッカーの加茂商事など)も数多く存在する。

矢野経済研究所の「スポーツ用品市場に関する調査結果 2013」によれば、2012年のスポーツ用品国内市場は1兆2838億円となる見込み。市場は09年から3年連続で縮小していたが、12年は対前年比で3.4パーセント増とプラスに転じた。背景にあるのは、健康志向の高まりだ。さらに、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まったことは、業界にとって追い風。スポーツへの関心がさらに強くなり、さらなる成長につながるのではないかと期待されている。

このところ好調なのが、ランニング関連商品。ランニング愛好者は着実に増えており、東京マラソンの一般申込者は30万人を超えるほどだ(実際に走れるのは、抽選などで選ばれた約3万6000人のみ)。こうした盛り上がりを受け、スポーツシューズ、アスレチックウエアといった商品が売り上げを伸ばしている。各社は、膝などの関節や足を守る「機能性ウエア・シューズ」や、多彩なデザイン・色を採用したファッション性の高いウエアなどを開発し、他社との差別化を目指している。また、中高年を中心とした登山ブームを追い風にして、アウトドア関連商品も堅調だ。

ただし、市場全体の先行きは、必ずしも明るいだけではない。国内では少子高齢化で人口減が進み、顧客数の伸びが期待しづらいからだ。また、ひと昔前は収益の柱となっていたウインタースポーツ分野は、スキー・スノーボード離れに歯止めがかからない状態。ゴルフも同様に、若年層の取り込みがうまくいっていない。

そこで各社は、市場の拡大を目指し、若者がスポーツに親しみを持つような取り組みを行っている。特に目立つのが、スポーツ施設などと連携する動き。例えば、リクルートライフスタイルが中心となって進めているキャンペーン「雪マジ!19」は、全国170カ所以上のゲレンデで、19歳限定でリフトが無料となるもの。スキー場には、飲食収入・用具レンタル料などの増加、今後のリピーター確保といったメリットが期待できる。また、小売企業にも、スキー・スノーボード用品の拡販につながる可能性がある。このように、小売・メーカーといった枠を超え、業界全体でスポーツを盛り上げようとする取り組みには、今後も注目したい。

ナイキ、アディダスなどの海外メーカーに象徴されるように、この業界はグローバル化が進んだ業界。そこで国内メーカーにも、さらなる海外進出が必要になるだろう。すでに北米市場は、各社にとって重要な市場となっている。また、アジアでの競争も激化の一途だ。今後は、ブラジル・アルゼンチンなどの南米市場なども焦点となるはず。オリンピックや、サッカーのワールドカップといった国際的スポーツイベントに合わせ、世界各国で拡販を進めることが各社に求められる。

押さえておこう <スポーツ用品・アパレル業界に影響を与えそうなイベントとは?>

オリンピック
16年にブラジルのリオデジャネイロで開催される次回オリンピックでは、7人制ラグビーとゴルフが新種目として採用された。この2種目に対する注目度は世界的に高まると考えられることから、関連商品の開発に注目が集まっている。
サッカー・ワールドカップ
次回ワールドカップは、14年にブラジルで開催。同国では大きな経済成長が見込まれており、ワールドカップを機に市場拡大を目指す企業が多い。また、18年のロシア、22年のカタールでも、サッカー用品の需要拡大が期待されている。
富士山の世界遺産登録
13年6月、富士山が世界遺産に登録された。また、登山ブームが続いていることもあって、富士山への登山者数は増加傾向だ。14年夏には、五合目以上を目指す登山者に1000円の「保全協力金」が課せられる予定で、影響に注目しておきたい。

このニュースだけは要チェック <「非スポーツアパレル分野」への進出に注目しよう>

・アシックスが、卒園式や入学式などで使える女の子向けシューズ「FINO LUKINA(フィーノ ルキナ)」を発売。スポーツ分野で培った技術を基に、子どもにとって歩きやすいフォーマルシューズを生み出した。事業拡大のため、スポーツ分野以外の商品を手がけることも、各社にとっての課題の一つだ。(2014年1月25日)

・ミズノが、自社商品の物販だけでなく、カフェ・ランナー向け設備・フィットネススタジオなどを備えた直営店「NOHARA BY MIZUNO」を、14年3月に原宿に出店すると発表。ブランドイメージをダイレクトに顧客に伝えること、顧客の声を吸収して商品開発に役立てること、スポーツ愛好者層の拡大などに期待が持てる。(2013年12月20日)

この業界とも深いつながりが <機能性ウエアの開発で繊維業界と協力>

アパレル
スポーツ関連商品を一般アパレル企業が手がけ、競合となるケースが増えている

スーパー
スポーツ関連製品を扱う競合だが、大型スーパーにスポーツ専門店が入ることも

繊維
機能性ウエア・シューズの開発には、繊維や樹脂といった素材が欠かせない

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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