オーストラリアのシドニーにある日系企業の現地法人に勤務。現地での楽しみは、3000円前後(2015年12月時点)とリーズナブルな値段でコースを回ることができるゴルフ。暇さえあれば練習場に行くほどゴルフライフをエンジョイしている。
物価は感覚値で日本の1.3倍くらい
こんにちは。豪太です。今回は、私のシドニーでの生活についてお話しします。
皆さんには、オーストラリアの物価はさほど高くないイメージがあるかもしれませんが、実は結構高いのです。オーストラリアでしばらく続いたインフレのせいだと思いますが、感覚値としては、平均すると日本国内の1.3倍程度でしょうか。というのも、なにしろ、500ミリリットルのミネラルウオーターの値段が3オーストラリアドル(約260円、2015年12月時点)にもなるほど。350ミリリットルで2.5オーストラリアドル(同約217円)のビールの方が安く感じられます。日本では700円台のラーメンも、こちらでは1300円くらいになります。
そういうわけで、外食の値段も高いので、普段の食事はもっぱら家で取っています。平日の昼も、弁当持参で安くあげています。オフィス近隣のフードコートでハムとチーズだけのサンドイッチを買うだけで12オーストラリアドル(同約1000円)にもなってしまうだけに、自炊と弁当持参が高すぎる物価に対する自衛策となっているのです。和食材は極めて入手しやすいので、その点では恵まれています。
しかしアフリカや南米の過酷な駐在のご苦労を伺うと、オーストラリアは天国かもしれません。最近はサメが多くなったため遠ざかってはいますが、オーストラリアのビーチはサーフィンを楽しむ環境としては最高だし、ビーチそのものもとてもきれい。海面の30~40メートルほど上から海を見下ろしても、水深10メートルまで見通せるほどに海水は澄んでいます。ゴルフもパブリックのコースなどはとてもリーズナブルに楽しめますし、各都市でマラソン大会が頻繁に催されているので、初心者から本格的なランナーまで気軽に出場できます。またスポーツを楽しむための公共施設も充実しており、大きくて立派なプールでも混雑していないので、ストレスなく存分に泳ぐことができます。
聴き取れない英語には遠慮なくダメ出し
強いて難を言えば、オーストラリア独特の発音で英語を話す方がおられるので、わかりにくいことぐらいでしょうか。同じ英語でも、イギリス英語やアメリカ英語とは、発音も違えば、単語の使い方も違います。こちらの生活にすっかり慣れたうちの子どもが「下着(under wear)」のことを「アンディー(undie)」と言ったときも「そんなふうに言うのか!」と衝撃を受けましたし、マクドナルドのことを「マッカス」などと略すのにも戸惑いました。ひどいときなど、会議で30分間、発言者の言っていることが聴き取れなかったことがあったほどです。「全然わからなかった」と正直に言ったところ、比較的わかりやすい英語を話せる人が出てきてもう一度繰り返してくれたことで、なんとか理解しましたが…。
赴任してから2年たってようやく慣れましたが、今でも、早口で聞き取りづらい発音の英語だとよくわからないことがあり、そういうときは遠慮なく遮って「私にわかる英語でお願いします」という意味で「English, please!」とジョーク交じりに指摘。ゆっくり言い直してもらっています。
海外駐在に当たっては、自分にもほかの駐在員や現地社員にも、「家庭がすべてに優先する」ということを徹底するようにしています。なぜなら、海外で家族に何か心配ごとがあっては、業務どころではないからです。例えば、日本でどんなに活動的な人であっても、慣れない海外での生活のせいで家に閉じこもりがちになる駐在員夫人は少なくありません。ついには日本に帰国してしまうケースなど往々にして起きうるのです。家族が現地での生活を楽しんでくれて初めて、業務に集中することができることを肝に銘じておかねばなりません。
そのため、上司として部下のプライベートな時間は死守するようにしています。どんなに忙しい時期でも、多くの場合18時には部下を家に帰し、急いだ方が良いときはタクシーも使わせます。日本からの出張者のアテンドが入っても、それが部下の長期休暇と重なっており、スケジュール的にも動かせない場合は、自分ひとりでアテンドを引き受け、部下にはバカンスを優先させます。こういうときに家庭でのプライベートな予定を犠牲にしてしまうと、後々に家族の恨みを残すからです。
任地の文化を学ぶことも最優先しています。なぜなら、その地の歴史や、その地で生まれた文学に触れるなど、現地の文化をリスペクトする姿勢は、おのずと現地の人々に伝わるからです。例えば、オーストラリアの歴史や政治に関する本を読み込んでから現地の人と会話すると、間違いなく盛り上がります。そうしているうちに、現地の人と盛り上がっている私の姿を見た部下も、私の真似(まね)をして現地に関する本を読むようになりました。「自分で実践して、その背中を見せる」作戦が功を奏したというわけです。
次回は、オーストラリア駐在の苦労やメリットについてお話しします。
ホテルのコンドミニアムの一例。長期滞在できるようにできている上、清掃などのサービスも付いており、こうしたコンドミニアムに住む駐在員も多い。
シドニーのトラム(路面電車。2014年3月には5.6キロメートル延伸開業し、今後もさらなる整備が予定されている。
オーストラリア大陸中央部にある一枚岩「エアーズロック」。先住民アボリジニたちによる呼び名「ウルル」と呼ばれることもある。
構成/日笠由紀