おもちゃ編・2017年【業界トレンド】

定番商品強化とターゲット層拡大が成功し、市場は好調。今後はグローバル化がテーマに

一般社団法人日本玩具協会によれば、2015年度における国内玩具市場規模は、前年度比1.0パーセント減の8003億円(希望小売価格ベース)。ただ、「妖怪ウォッチ」シリーズの大ヒットで過去10年で最高の売り上げを記録した14年と同程度を維持した。なお、この業界では、人気アニメを中心としたキャラクターマーチャンダイジング(キーワード参照)に強いバンダイナムコと、定番商品を多数持つタカラトミーが2強と言われる。一方、中小規模の玩具メーカーも数多く存在する。

日本玩具協会は、ジャンルや顧客層の性別によって、おもちゃをゲーム(テレビゲーム関連を除く)、カードゲーム・トレーディングカードゲーム、ハイテク系トレンドトイ、男児キャラクター、男児玩具、女児玩具などに分類している。このうち男児キャラクターは、「妖怪ウォッチ」シリーズの売れ行きが一段落し、前年比20.6パーセント減となった。しかし、ほかの分野が伸びたことで男児キャラクターの落ち込みをカバー。例えば、リニアモーターカーを模したおもちゃ「リニアライナー」や、会話を楽しめるロボット「オハナス」などが話題となったハイテク系トレンドトイが前年度比31.8パーセント増。「トミカ」や「プラレール」などが人気を集めた男児玩具が前年度比16.7パーセント増。「デュエル・マスターズTCG」や「遊戯王OCG」などが売り上げを伸ばしたカードゲーム・トレーディングカードゲームも前年度比10.5パーセント増となった。

市場が好調な理由は、国内各社が定番商品を強化しつつ、新たな顧客層の開拓に成功しているからだ。そうした取り組みの1つが、大人をターゲットにしたおもちゃの開発である。例えば、数多くの人気シリーズを抱えるタカラトミーは、15年度、「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」などの全定番商品で前年比増を達成(国内出荷実績ベース)。一方、同社のコミュニケーション型ロボットである「ロビジュニア」は、子どもだけでなく50歳以上の層にも支持されている。このように大人が遊べるおもちゃの開発は、今後、大きな焦点となる可能性がある。

海外市場で顧客層を開拓しようとする動きも活発だ。例えばバンダイナムコは、日本の『スーパー戦隊シリーズ』を現地化した『パワーレンジャーシリーズ』を中心に、欧州進出を加速している。一方、アジア市場に対しては日本で定番の「ガンダムシリーズ」などを展開し、人気を得ている。

アジア市場に注目しているのは、海外のグローバル企業も同様だ。「バービー人形」や『きかんしゃトーマスシリーズ』などで知られる世界最大級の玩具メーカーであるマテル(アメリカ)は、中国市場への進出を加速中。中国の電子商取引大手アリババと提携し、共同で商品開発を始めると発表した(ニュース参照)。同様に、世界的な玩具メーカーであるレゴ(デンマーク)も、アジア市場などで教育玩具の売り上げを伸ばしているところだ。国内各社にとって、グローバル企業との競争は今後も避けて通れない課題である。

おもちゃ業界志望者が知っておきたいキーワード

キャラクターマーチャンダイジング
テレビ番組などのコンテンツと連動し、キャラクター・ストーリーとおもちゃの開発を同時に進める手法。玩具メーカーの商品設計者が、キャラクターの版権を持つ企業の担当者と企画段階から打ち合わせを行うことで、コンテンツの世界観に忠実な商品を適切なタイミングで供給することが可能になる。

定番商品
毎年発売されるおもちゃの多くは、比較的短い期間でその役目を終える。しかし、人気を集めた商品の中には、改良を繰り返して長く店頭に並んだり、関連商品が数多く開発されたりする「定番商品」となるものもある。玩具メーカーにとって定番商品は、毎年一定の売り上げを稼ぎ出す優等生で、事業の安定化に一役買っている。

ハイターゲットトイ
子どもではなく、大人をターゲットにしたおもちゃを指す。ハイテクを使った商品や、往年のアニメ・特撮番組のキャラクターをモチーフにした商品などが該当。一般のおもちゃより高価な商品も多く、ヒットすれば企業に多くの利益をもたらす。

IP
Intellectual Propertyの略。知的財産権と訳される。おもちゃ業界では、キャラクターなどの著作権などを指すことが多い。価値の高いIPを創出すれば、おもちゃの売り上げ拡大や、版権による収益アップにつながる。

このニュースだけは要チェック <グローバル市場での動きに注目しよう>

・日本の特撮ドラマ『スーパー戦隊シリーズ』を英語版にした映画『パワーレンジャー』が、全米で公開された。今後は、世界各国で公開が予定されている。玩具メーカーにとっては、映画やテレビを通じて自身が保有するIPを発信し、商品の販売増加につなげることが重要になる。(2017年3月24日)

・グローバル玩具メーカーのマテルが、中国の電子商取引大手であるアリババと提携し、共同で玩具・知育コンテンツを開発すると発表した。中国をはじめとするアジア市場は、人口増や経済発展を背景に今後伸びると期待されており、国内外の企業が進出を目指している。(2017年2月14日)

この業界とも深いつながりが <テレビ・映画業界と協力する機会が増えそう>

映画
映画に登場するキャラクターを製品化し、世界各国でおもちゃを拡販する

テレビ
アニメや特撮ドラマなどのキャラクターをモチーフにしたおもちゃを開発

電子部品メーカー
ロボット型おもちゃなどの「ハイテク系トレンドトイ」には電子部品が不可欠

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門未来デザイン・ラボ コンサルタント
橘田尚明氏

橘田尚明

東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了。中長期経営計画策定支援、新規
事業テーマ構築支援、未来洞察などのコンサルティングを中心に活動。米国公認会
計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。