出遅れ気味の人のための就活講座 ~今から始めるベストの方法と心得~

就職活動が解禁すると説明会などが始まります。キャンパス内や街中で、堂々としたスーツ姿の同級生を見かけて、「!?」と感じている人もいるのではありませんか?早くから準備していた人は、すでに自己分析も業界・企業研究も終えて、ある程度、的を絞った活動をスタートさせている様子。それなのに自分ときたら、いったい何から手をつけたらいいのやら…。一応、自己分析もやってみたけど、これでいいのか自信がない。情報も多すぎて、何がなんだかわからない…!
そんな心の叫びを抱く、少し出遅れ気味で、もしかしたら焦っている人のために、焦ることなく、より良い就活を進めるためのいくつかの方法と心得を、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーが紹介します。

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「一つひとつ階段を上る」行動パターンは×。とにかく同時並行で行こう!

出遅れていることに気後れして、ますます就活に手がつかない、そんな焦り気味の方に今すぐしてほしいことは、まずは動いてみることです。
特にスタートダッシュが遅めの方ほど、まず自己分析をして、それから業界を絞って、その次に説明会に行って・・・と、一つひとつ段階をきちんとクリアしてからでないと次のステージに行けない、と思い込みがち。でも、就活は、よくあるRPG(ロールプレイングゲーム)の世界とは別です。第1ステージをクリアしなくても、同時並行で次のステージに行っていいのです。

企業の説明会には、合同企業説明会なども利用して、少なくとも3業界、企業数では、できれば7、8社に行ってみてください。業界が決まっていなくても大丈夫。「なんとなく興味が持てそう」というくらいの理由でいいのです。
むしろ方向が決まっていないのだとしたら、業界や職種はバラバラの方がいいくらいです。なぜなら、まだ知っている企業も業界も多くない中で、最初から絞り込んでしまうと比較ができないし、「違うかもしれない」と思ったときには、ほかの企業も説明会やエントリーは終わってしまっている可能性もあるからです。
多くの学生に接してきた経験から感じるのですが、頑張りが内定につながらない人に共通しているのは、性格でも出身校でもなく、実は情報不足やイメージ先行による志望業界の絞り込み。これこそが、内定につながらない大きな要因のひとつです。早すぎる絞り込みは、自分の可能性まで狭めてしまうことにもなりかねないのです。

説明会参加に加えてもうひとつ、同時並行で始めてほしいのが、自己分析とOB・OG訪問です。
では、それぞれの場面でぜひやってほしいことを、次から具体的にご紹介させていただきます。

説明会では、必ずノートをつける~自分の軸を見つけるメモのとり方とは?~

説明会には必ずノートを持参しましょう。スマートフォンにメモする人もいますが、お勧めはノート。第一、人の話を聞く態度として、スマートフォン片手に画面を見ながら、というのは、ビジネスマナーとしても、感じのいいものではありません。

このノート、受験勉強のためのノートではないので、聞いたことを逐一書く必要はありません。それよりも、いいなと思ったこと、自分の心に刺さる言葉、違うなと感じたことなどを、メモすることが大事です。複数社の説明会に出ていると、印象が薄れたり記憶が混乱したりしがちです。極力その場で感じたことを書き残しておくことをお勧めします。
このノートが実は後々まで役に立つのです。ノートを見返すと、自分にとって「いい」と感じたポイントや、「違う」と感じたのはどんなことか、などが見えてきます。このポイントこそ、あなたらしさを発見するヒントになります。あなたがピンとくるポイントが業界の共通点とは限りません。例えば、まったく違う業界なのに魅力を感じたのは、「お客さまの反応がダイレクトにわかる仕事が好きだからだ」、「子育て中の女性も普通に働き続けているからだ」など、あなたならではの、新たな発見がしやすくなります。自分なりの企業を見るポイント、つまり軸がわかってきたら、そこで初めて、その軸に沿って情報収集を集中させていけばいいのです。

ノートの効用はほかにもあります。書くことで各企業の印象が残るだけでなく、面接準備にも有効活用できます。面接の前などに見返してその時の印象や感じたことを具体的な言葉で伝えやすくなるのです。
社員の方が話してくださった内容だけでなく、自分が感じたことをぜひノートに残して、軸を見つけていきましょう。

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2~3年先輩の話は「宝の言葉」。絶対に聞いたほうがいい

説明会に参加するのと並行して、OB・OG訪問も行いましょう。学生の皆さんにとって、社会を知っている一番身近な大人は保護者ですが、保護者や兄弟姉妹は、知っている業界や職種、価値観が似通っていたりすでに共有していたりすることも少なくありません。むしろ参考になるのは、社会人2~3年生の先輩たち。
OB・OG訪問を選考の一環と思わず、社会人の先輩の「本当の気持ち」を聞くチャンスと考えて、志望企業でなくても話を聞ける機会があれば利用してください。先輩自身が就活中に想像していたことと就職してから感じたギャップ、それをどうやって埋めたのかなど、つい最近のことだからこそ、実感のこもった話が聞けるはずです。この、ナマの話こそ、宝物。きっと参考になるはずです。
サークルやゼミの先輩に聞くのもよいのですが、共通の知人が多いと、かえって本音が聞きにくかったり、自分の正直な気持ちや将来の夢を言いにくかったりすることも。可能ならキャリアセンターなどでOB・OGを紹介してもらい、連絡してみるのがお勧めです。

Webサイトのどこから見るか? 自分の目=本心、に聞いてみる

説明会やOB・OG訪問で業界・企業研究をすると同時に、働くうえで自分が重視するのは何なのかを知ることも重要です。
仕事内容、社風、給与、勤務地、休暇など、自分にとって、妥協できない、譲れないと思うもの(MUST)は何ですか。また、どうしても欲しいもの、得たいもの(WANT)は何ですか。いろんな角度から、自分が一番大事にしたい部分がわかってくると、第1志望、第2志望も決めやすく、就職してからも「こんなはずじゃなかった」と思うことが少なくて済みますし、納得感が違います。

重視することが何なのか、自分でもわからないという人は、就職情報サイトや企業の新卒採用サイトを閲覧する際に、最初にどこから読み始めるか、いつも必ず目で追うのはどういった項目か、を意識してみてはどうでしょう。就職情報サイトなどで同じフォーマットに整理された企業情報の各項目のうち、あなたは、どこを最初に読みますか? 仕事内容、社長メッセージ、研修制度、給与、福利厚生、先輩の声、社員定着率…。常に気にして読んでしまう箇所こそ、あなたにとって大事な部分が隠れているのです。そこに、自分自身が気づくことが大切です。

人生を変える(かもしれない)「プラス2分」で、過去の引き出しをあける

自己分析に1カ月、2カ月かけてやる人もいますが、今から走り出すのなら、スピードも大事。ただし「プラス2分」を意識して、いつもより深く考えてほしいのです。

具体的に説明しますね。私が、就活生の相談にのるとき、自己分析として、よくお勧めするワークがあります。それは、自分の好きなこと、楽しかったこと、やりがいに感じたことを付箋に書きだしてグルーピングしてみることです。そして、グループごとに見出しを付けてみます。このワークでは、最初はどんどん書き出せると思いますが、5分ほどたつと、大抵の人は、「だいたい、出た」といって、手が止まってしまいます。でも、ここからが勝負。そこであきらめずに、もう2分粘ってみることが大事なのです。ここで粘ることで、自分の深いところが見えてきます。「何」が楽しくて、「どういうとき」なら頑張れたのか、のびのびできたのはどんな環境か。やりがいや喜びを感じたのはどんなことか。高校では、中学では…と振り返り考え続ける2分が、忘れていた過去の引き出しを開けてくれます。自分をあらためて見直すきっかけになったり、素の自分をアピールするポイントになることもあります。人生を変える2分にもなり得るのです。

内定が出るのが早くても遅くても、入社はみんな4月1日

自分のやりたいことや、就職先選びで大事にしたいこと、志望業界・志望職種の方向性をある程度絞り込むのは、4月末までを目安としたいところです。スタートは出遅れ気味だったとしても、このときまでに自分の軸となるものが見つかっていれば、そのあとの採用選考に向けて深掘りでき、面接への準備もしやすくなるので大丈夫。
たとえ面接で思わしくない結果になっても、ノートがあります。自分の軸と企業の求めていることにずれがあったのか、提出した書類で自分のやりたいことや強みをきちんと伝えきれていたのか、ノートを見て振り返ればいいのです。ずれを発見したら、その時点で自分の軸自体を見直したり、広げたりすればOK。軸がないまま手当たり次第に面接を受け、結果だけを見て落ち込むのは、得策ではありません。
また何も大事にしたいことを持たないままなんとなく内々定をもらっても、就職してから「ここで本当によかったのか」と悩むことになりかねません。今は焦らず、自分の軸を探すための説明会参加や自己分析を並行して行いましょう。それがきっと将来に活きてきます。

早くから志望業界を明確にしたり企業を絞り込んで就活準備をしてきた人の中には、早々に内々定を取る人も出てくるでしょう。けれど、どんなに早く内々定をとっても入社するのは来年の4月1日。
さらに言えば、どれだけたくさん内定(内々定)をもらっても、入社できるのは1社です。
周りを見て、むやみに焦ったり落ち込むより、「自分の納得のいく就職が、来年の4月1日に間に合えばいい」というくらいの気持ちを心のどこかに携えて、自分で動いてしっかり悩んで、これからの就職活動で自分自身と向き合ってみてください。納得感を持って自分で決めることが、就職後の活躍にもきっとつながるはずです。

取材・文/中城邦子 撮影/刑部友康


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