理系学部卒と院卒ではどちらが就職に有利?学部卒・院卒の違いやそれぞれの就活ポイントを解説

理系学部生の中には、就職するか大学院に進学するか迷っている人もいるでしょう。この記事では、学部卒と院卒での就活の違いやメリット・デメリットなどについて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーにうかがいました。

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理系学部卒と院卒での就活の違いとは?

理系の学部卒と、院卒での就活にはどのような違いがあるのか、詳しく解説します。

就活の流れやスケジュールの違い

株式会社リクルートの研究機関・就職みらい研究所が発表した「【2025年卒】理系の学科系統別活動状況」(※1)内の、「就職志望者のうち、6月12日時点に進路が確定している割合」を見ると、大学学部生が71.8%であるのに対し、大学院生は90.7%でした。

就活を開始した時期は、大学学部生、大学院生とも、卒業・修了前年次に当たる大学3年、大学院1年の6月の割合が最も高いという結果となっています。就活の流れや就活スケジュールは、学部生と大学院生で大きな違いはありません。

ただ、同月に就活を開始した人の割合を見ると、学部生が22.6%であるのに対し、大学院生は29.5%に上っています。

大学院生は研究活動が忙しく、学部生に比べると就活に割ける時間に限りがあるため、早めに就活準備を始める人が少なくないと考えられます。

また、そうした背景によって大学院生の方が早めに内定を獲得し、進路を確定させる人が多いという結果にもなっているようです。

大学院生の中には、結果的には進学したものの、学部生時代に就活を経験した人も少なくありません。同級生から就活の苦労話を聞いたり、アドバイスを得たりしているケースもあるようです。

こうしたことから、早めにインターンシップに参加したり、早期選考を行っている企業に応募したりと、自主的に就活を早める人がいる、と考えられます。

※1【2025年卒】理系の学科系統別活動状況(株式会社リクルート・就職みらい研究所)

応募できる企業の違い

応募できる企業にも、学部生と大学院生で大きな差はありません。ただ、より高い専門性が求められる一部の研究開発職などでは、大学院卒であることを条件とするところもあります。

また、研究開発職の採用においては、「○○の研究経験」など求める条件を細かく設定しているケースもあります。中には学部生ではまだ経験できないような研究内容もあり、大学院卒に限定してはいないものの結果的に学部生が応募しづらい求人もあるようです。

評価されるポイントの違い

学部生の場合、評価されるのは専攻で培った専門性に加え、研究活動以外の経験から得た素養や強みです。企業は、例えばアルバイト、サークル、部活動などの経験を通じて培った特性がどのようなポテンシャルとなりうるか、つまり仕事でどのように生かせるかを重視しています。

一方の大学院生の評価ポイントは、高い専門性とスキル。能力を生かしながら即戦力として活躍できるかどうかが見られています。そのため、選考の際は研究内容を細かく見られるほか、研究への向き合い方や姿勢などが自社に合うかどうかを確認されるケースも多いようです。

理系学部卒で就職するメリット

まずは理系の学部卒で就職するメリットを挙げてみましょう。

エントリー先が豊富

学部生の時点では、大学院生と比較するとそこまで専門的な研究に従事していません。だからこそ、異なる業種や多様な職種に柔軟に対応しやすい・定着しやすいというポテンシャルがあります。

学部・院卒に関わらず、専門職以外の、例えば営業職など広く採用している企業も多い中で、この柔軟性が「さまざまな職種を視野に入れて就職活動を行いたい」というモチベーションにつながることも。その結果エントリー先の選択肢を増やせるのであれば、これは学部生で就活をするメリットの一つと言えるでしょう。

ポテンシャルをアピールできる

企業は、大学院生にはより深い専門性を、学部生にはポテンシャルの高さを求める傾向にあります。

そのため、一定の専門性に加えて自身の将来性も評価してもらいたい人は、学部生のうちに就活を行った方が良さそうです。

早く社会に出てキャリアを積める

多くの場合、大学院生よりも2年早く社会に出ることができ、その分実務経験を積むことができます。将来像が明確にある人、ビジネスパーソンとして早く成長したい人は、大学院に進むよりも学部卒で就職した方が目標をかなえやすいでしょう。

なお、学部生の中には、「研究室に入り専門分野の研究を始めてみたものの、自分には合わない」と気づく人もいます。

学部卒で就職することで、早期に新たな選択肢を得られ、自分の可能性を広げられるのもメリットと言えるでしょう。

理系学部卒で就職するデメリット

一方で、理系の学部卒で就職するデメリットもあります。

研究職など一部の募集は院卒のみのケースがある

前述の通り、一部の研究開発職などでは、大学院卒であることを条件とするところがあります。

院卒を条件にしていなくても、高い専門性が求められる職種の採用選考では、大学院生の応募者が有利となり、学部生にとっては狭き門になってしまうかもしれません。

大学院生に比べると学校推薦が少ない

理系の就活では、自分で企業にエントリーする以外に、学校推薦で応募するという道もあります。

学校推薦の場合、まずは大学内での選考が行われ、一定レベル以上の専門性やスキルを持った人が推薦を受けることになりますが、学部生を対象とするケースは多くありません。専攻分野や大学によっては大学院生のみを対象としており、そうした状況をふまえると難易度が高いと言えるでしょう。

理系院卒で就職するメリット

次に、理系の大学院卒で就職するメリットを紹介します。

専門性を生かせる仕事に就きやすい

大学院では、より高度な研究に取り組むことから、高度で希少な専門性が身につきます。企業も、大学院生の高いスキルレベルに期待していることから、専門性を生かせる仕事に就くチャンスが多いのが特徴です。

研究開発職など専門職の中には「大学院卒」を採用条件に入れている企業もあります。

学校推薦を受けやすい

高い専門性が評価され、学校推薦を受けやすいのもメリットと言えます。学部生に比べると知識や研究成果において評価されやすく、学内選考でも有利になりやすい傾向にあります。

学部卒に比べると初任給が高い

院卒で就職すると、学部卒での就職に比べて初任給が高くなる傾向にあります。

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、令和4年の大学院卒の初任給は、平均で26万7900円。学部卒の初任給は平均22万8500円となっており、4万円近い差があります。

大学院で2年間研究に従事していることから、「大学院卒は専門的な能力や知識、スキルをすでに身につけている」との判断の下、学部卒と大学院卒で給与テーブルを変えている企業は少なくありません。

その結果、初任給の時点から給与に差がつくケースが多いようです。

理系院卒で就職するデメリット

院卒で就職する場合も、デメリットがあります。

学部卒生よりも即戦力として期待される

大学院生は高い専門性が評価されますが、その分入社後は即戦力としての活躍が期待されています。そのため、院卒の社員は学部卒の社員と比較されがちであり、「早く成果を出さなければ」と焦ってしまう人も少なくないようです。

就活でのスケジュール管理が大変

専攻によって程度の差はありますが、大学院では基本的に研究漬けの日々を送ることになります。就活の時期には、実験や研究と就活を同時に進めなければならず、スケジュール管理に苦労する人が多い印象です。

実験が佳境のときに大事な面接が入り、どちらかをあきらめなければならず苦悩するケースもあるようです。

就活の際に視野が狭くなりがち

大学院生は研究などを通じて専門性を磨くだけに、就活でも専攻を生かすことばかり考える人が大半です。そのため、中には極端に視野が狭まってしまい、就活が難航する人も見受けられます。

大学院に進み修士を取ったとしても、人気の研究開発職に皆が就けるわけではありません。研究開発職の倍率はい高いため、視野を広げ、将来につながりうるほかの可能性も検討しながら就活に臨む必要があります。

理系学部卒で就職するか、大学院に進学するか…悩んだときの考え方

就活時期が近くなると、このまま卒業して就職した方がいいのか、それとも大学院に進んで修士を取って就職した方がいいのか、迷う人が増えます。

その場合は、「今の専門分野を学び続けるモチベーションはあるか」「2年間研究漬けの日々を送る自信があるか」を自分に問うてみることをお勧めしています。

学部生の中には、大学4年次に研究室に入って初めて「この分野は自分には合わないかもしれない」と気づく人が少なからずいます。「これまで丸3年間、この分野で専門性を磨いてきたのだから、今後も学び続けないともったいない」と考え、進学を検討する人もいますが、ストレスがたまり途中で挫折してしまっては意味がありません。

大学院進学を検討する際には、さらに2年間研究に専念する意欲が自分にあるかどうかを冷静に考えてみましょう。

進学の理由が「学部生時代に就職活動がうまくいかなかったから、2年後にもう一度挑戦しよう」というものではなく、「しっかりとした目的や興味を持っているか」が大切です。

理系の大学院に進むと、研究活動に費やす時間が増えることが多く、専門分野や研究の進捗(しんちょく)状況によっては、研究室で長時間過ごすこともあります。

これからの2年間、研究にしっかりと向き合うための意欲や体力が自分に備わっているか、あらためて見つめ直してみましょう。

また、アルバイトをしている人は、研究活動が忙しくなることで継続が難しくなる場合もあります。そうした面からも、経済的な準備は十分か併せて検討してみるとよいでしょう。

理系学部生が就活を行う際のポイント

理系の学部生が就活を行う際は、以下のポイントを踏まえて行動するといいでしょう。

「専門性+ポテンシャル」をアピール

企業が学部生に期待しているのは、専門性とポテンシャルを兼ね備えていることです。勉強を通して身につけた経験やスキル、専門性に加え、勉強以外の場面での経験(例えばアルバイトで培った協調性やコミュニケーション力など)を洗い出すことも重要となります。

その中から応募企業ごとに「特に生かせると思うスキル」を抽出し、ポテンシャルとして伝えられるよう整理しましょう。

そうした自身の総合的なポテンシャルを、応募企業が求めている条件と接続させてアピールすれば、入社後の活躍ぶりをイメージしてもらいやすくなります。

また、ロジカルシンキングや目標達成意欲、PDCA (※2)を回す力など、理系ならではのスキルもアピール材料に。どのようなシーンでスキルを培ったのか、エピソードを交えつつ具体的にアピールするといいでしょう。

※2 PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったもので、これらを繰り返すことによって継続的に改善していく手法のことを指す。

スケジューリングに注意

理系の場合、多くの人は大学4年生の4月から研究室に入ります。この時期にちょうど就活も始まるため、研究と就活の両立に苦労し、スケジューリングに悩む人が多いようです。

焦るような状況に陥らないためには、研究室に入った時点で、年間のスケジュールイメージを確認しておくと就活との調整がしやすくなります。

担当教授とコミュニケーションを取り、「○○業界の△△職に就きたいので、○月ごろは忙しくなる可能性があります」など就活についての意向を伝えておくことも重要です。

強みをベースに視野を広げて活動を

専門性を生かせる職種にこだわり過ぎず、それ以外の業界や企業、職種にも視野を広げましょう。

例えば、研究開発職は理系の就職人気が高く、応募が集中する傾向にありますが、募集人数は大手企業であっても数名程度であり、非常に狭き門です。

一方で、理系ならではのロジカルシンキングや目標達成意欲などを生かせる業界・職種は多く、視野を広げればその分チャンスも拡大します。

自己分析で自身の強みや持ち味を洗い出し、それを軸に、専攻を直接生かす分野以外で第2志望群、第3志望群を作っておくといいでしょう。

理系大学院生が就活を行う際のポイント

理系の大学院生が就活を行う際は、以下のポイントを押さえるとスムーズに就活を進めやすくなるでしょう。

高いスキルと専門性をアピール

前述のように、大学院生は就活で、高い専門性とスキルを備えているか、そして研究へのスタンスなどが見られています。

自身の専門分野と、研究実績や成果について、エピソードを交えながら具体的にアピールしましょう。

研究室の先輩に、就活で何をアピールしたのか、どのような情報が求められているのかなどを質問し、アドバイスを得ておくと、ES(エントリーシート)作成や面接のときに役に立ちます。

研究との両立を工夫しよう

大学院生は学部生以上に、研究との両立が課題になります。早めに就活準備を進めておくのはもちろん、研究室の教授と就活のイメージを共有したり、就活に対する考え方を聞いておいたりするといいでしょう。いざというときに協力してもらえる可能性もあります。

研究スケジュールをあらかじめ把握し、比較的忙しくない時期にまとめてESを作成したり、業界・企業研究やOB・OG訪問に充てたりするなど、効率的に動けるよう工夫することも大切です。

専門外の分野に視野を広げることも大切

大学院で専門性を身につけたからといって、必ずしも希望の業界・職種に就けるわけではありません。専門分野の研究開発職のみにこだわった結果、なかなか内定先が決まらず就活が長期化してしまう人は決して少なくありません。

学部生と同様、自己分析で自身の強みや持ち味を洗い出し、それを軸に専攻以外で第2志望群、第3志望群を考えておきましょう。「就職でかなえたいことは何か?」をあらためて考え、専門外の業界や職種でも実現できないかどうか考えてみるといいでしょう。

就職エージェントを活用するのも一つの方法

理系の学生は、学業と就活の両立に不安を抱く人が少なくありません。学部生・大学院生とも、実験や研究などが忙しく、就活のスケジューリングに悩む人が多いようです。

専任のアドバイザーがマンツーマンで就活をサポートする就職エージェントであれば、忙しい理系学部生・大学院生でも就活の進め方を工夫するためのアドバイスが受けられるでしょう。

リクナビ就職エージェントでは、理系の専攻ごとに特化したアドバイザーが、就活全般をフォローしています。高い専門知識が生かせる業界や職種はもちろん、自身の強みや持ち味が生かせる別の選択肢を共に考え、アドバイスしているので、無理なく視野を広げることもできるでしょう。

専攻ごとの先輩たちの就職事例も多数保有しているので、さまざまな視点からの就活アドバイスが可能です。納得のいく就活が進められるかどうか不安に感じている方は、ぜひリクナビ就職エージェントの活用を検討してみてください。


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プロフィール 久野夏帆子(くの・かほこ)都市銀行で法人営業を経験、採用にも携わる中で人のキャリアに関心を持ち2016年、株式会社リクルート(旧リクルートキャリア)に入社。入社後から現在までリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーに従事。「学生が自信を持って少しでも前向きな就職活動に向き合えるように」という想いで伴走している。

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