就活生が力を込めて作成するガクチカを、企業側はどのように読んでいるのでしょう。
今回は、「ポッキー」や「アーモンド効果」等の商品でおなじみの食品メーカー江崎グリコ株式会社、新卒採用チームのリーダー、香田小百合さんにガクチカを読み込む視点と、「伝わるガクチカ」「伝わらないガクチカ」について、お話をうかがいました。(インタビュー実施日:2023年3月7日)
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ガクチカから学生の「行動」と「考え方」が見える
年間、1万通近いエントリーシートを採用グループと各部門の採用サポートメンバーで読んでいます。
エントリーシートを読み込んでいると、限られた文字数ではありますが、実際に学生さん一人ひとりにお会いしているような感覚になります。「この学生さんは、どんなことを考えて、どんなことに取り組んだのだろう」とワクワクしながら読ませていただいています。
エントリーシートをより時間をかけて読むようになったのは、現採用グループ体制になった数年前からです。
それまでも丁寧に採用活動をしてきましたが、会社自体が変化する中、求める人物像を明確にしきれていませんでした。そこで当社にとっての「優秀な人財」をあらためて定義し直し、「社会課題への強い関心」「挑戦や変革を求めるマインド」などをキーワードに、私たちが求める人物に出会うには何を見るべきかを考えていきました。そのような学生さんを見逃さないように、「応募くださった一人ひとりが何を考え、何に取り組んだかしっかり見よう」と、エントリーシートの読み込みにさらに時間をかけるようにしました。
社会課題に向き合う姿勢は、Glicoの創業当初から受け継がれているものです。必要な栄養を安価で日常的に摂れるようにと、1922年に栄養菓子「グリコ」が生まれました。「食品で社会の課題を解決したい」という思いは、Glicoの原点であり、創業から100年がたった今、そして、今後もGlico社員が共有し続ける強い思いです。
私たちの思いは変わりませんが、環境は大きく変化しています。それぞれの時代に合った健康の価値を提 供し続けるためには、変革と挑戦が欠かせません。生活者や社会の課題に寄り添い、解決に挑戦していける人財に出会うための最初の扉がエントリーシートであり、ガクチカだと考えています。
行動の裏側にある「理由」が知りたい
当社のエントリーシートには現在、2つの項目を設けています。学業・ゼミ・研究室で取り組んでいる内容やその理由、成果について書く項目と、チームで取り組んだことやその成果などを書く項目です。後者では、自身のタイプを「No1.人財タイプ」「0→1人財タイプ」「1→100人財タイプ」の3つから選んでもらいます。
No1.人財タイプでは「自他ともに認めるNo.1をとった経験」について、0→1人財タイプでは「ゼロから新しく何かを作り『出した』経験」について、1→100人財タイプでは「価値を最大化させて作り『上げた』経験」について、それぞれ書いてもらっています。どのタイプを選ぶにしても、「何をしたか」に加えて、「『何を実現したいと思って』それをしたか」を見たいと考えています。そこにその学生さんそれぞれの価値観や考え方が表れると考えています。
学ぶ姿勢に「自分」が表れる。ガクチカから伝わる「意味づけ力」も大切なポイント
学業について聞く理由は、コロナなどの影響がある中でも、皆さんが共通して力を入れられることだからです。皆さん、学校で何かの勉強をしているわけですが、ここで知りたいのは、どんな目的を持って学んでいるのか、学んだことにどんな意味や価値を見いだしているのか、という点です。例えば、「〇〇について知ることができました」」「研究でこんな発見をしました」という成果も素晴らしいのですが、それがその学生さんにとってどんな意味があるのか、社会にどのように役立つと考えているのか、まで教えていただきたいと思っています。
学びの目的といっても、授業や研究分野を選んだ最初の段階では、特に深い理由がないかもしれません。
でも、たまたま選んだことが、「やってみたらこんな考えにたどり着いた」「学んだことでこんな変化があった」と思いがけない出会いにつながることも少なくありません。自分の選択した行動にどんな意味を見いだすかという「意味づけ力」もまた、読み手に学生さんの個性が伝わる大切なポイントだと思っています。
主語があいまいな「ガクチカ」は伝わりにくい。「なぜ」も一緒に伝える
例えば、昨今は「SDGsが大事だと思ったので」「サステナブルな社会のために」といった、社会課題についての内容を目にすることも増えました。それ自体は良いことですが、主語が誰なのかわからない文章も少なくありません。「社会で、この問題が重視されているから」「ゼミで、この分野を研究しているから」といった文章だと、どうしてもご本人の思いが伝わりにくいです。
「子どもの時、地域で〇〇な経験をして育ったので、SDGsの“住み続けられる街づくり”を勉強したいと思った」など、これまでにしてきた選択の背景には、それぞれの経験や考えが必ず反映されているはずです。
“あなた”にとって、なぜSDGsが大事なのか。私たちが最も知りたい点はそこです。
過去を振り返って、なぜ自分はこれをしたいと思ったのか、自分に対して「なぜ」を問いかけてみると、企業選びにもつながる思わぬ気づきがあるかもしれません。
歴史とブランド力、豊富なリソースを使って活躍してほしい
Glicoの若手社員は目的意識を持っている人が多く、仕事の意義や理由をしっかり言語化しています。若手社員から問われることで、先輩社員も、やっていることの本質や意義をあらためて考える機会が増えているようです。「新入社員、とても優秀だし頑張っているよ」と配属先から声をもらうことも多く、会社全体にとって、新入社員が良い刺激になっていることをうれしく実感しています。
背景として、Glicoで実施している職種別採用の影響は大きいと思います。就活の段階で自分が本当にやりたいことや将来なりたい姿を考えて、職種を選ぶことは簡単ではありません。ですがその過程を経て生まれた「自分のキャリアを自分でつくっていく」という意識の高さが、入社後も継続していると感じます。
当社では、どの仕事をするに当たっても、「お客さまのためになっているのか」が常に問われます。お客さまにとっての価値を提供できていれば購入し続けていただけることを、100年の歴史の中で学んできたからです。
その一方で、変化の激しい業界において、今まで売れていたものが売れなくなる、今までのやり方では通用しないことが日々生じています。この危機感を学生さんにも共有し、だからこそ挑戦しがいがある、と思っていただけたらうれしいです。
当社には、創業時からつくり上げてきたブランド力と、多くの商品を生み出してきたマーケティング・商品開発のノウハウがあり、長期視点での研究や人財に対する投資も積極的に行っています。
これらのリソースや環境を生かして、食品事業を通じた社会課題解決がしたい、と考えている方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
(取材を終えて)編集長からひと言
日ごろ、多くの就活生、学校のキャリアセンターの方、企業の方とお話しする中で、就活生に「ガクチカ」が誤解されていると感じる場面が多々あります。
採用に熱心な企業ほど、ガクチカに、決して派手さやウケを求めてはいません。本当に丁寧に「ガクチカ」やエントリーシートを読み込み、自社の思いや考え方に共感し、協働してもらえそうな、「意気投合」できそうな学生さんを探しているのです。
ガクチカは、応募してくれた就活生一人ひとりへの理解を深める足がかりとなるもの。読み込み方は企業によって違いがありますが、どの企業も異口同音に「自分らしさを伝えることの重要性」を挙げます。派手なエピソードより、自分自身を伝えるエピソードが大切なんです。
今回は江崎グリコ社にご協力いただき、新卒採用担当者の目線でガクチカを読み込むときの視点を、かなりつっこんでうかがいました。その内容は、江崎グリコ社はもちろんのこと、それ以外でも多くの企業で通用するポイントです。ガクチカを作成するときの参考にしてみてください。(就職ジャーナル編集長 中田充則)
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