PIPS JAPAN

団体プロフィール
設立
:2014年4月 活動内容:外国人観光客や留学生への無料観光ガイド 人数:学生約35人(男女比=3:7/学年構成=高校2年9人・3年16人・大学1年8人・大学2年2人) 活動拠点:関東(浅草、明治神宮、上野)、関西(心斎橋) 活動日数:週1~2回

日本を訪れる外国人観光客は年々、増加の一途。PIPS JAPAN(ピップス ジャパン。以下略:PIPS)は外国人観光客や留学生に対し、ガイドブックには載っていないリアルな街の姿を伝えようと、無料で観光ガイドを行っています。もともと、高校生対象の起業イベントで知り合った東西の高校生4人が発案し団体を発足。SNSを活用して仲間を増やし、2014年4月から東京、大阪で活動を開始しました。“国境を越えた相互理解の機会を自ら獲得する”ことを目標に掲げ、ガイド活動の中心は高校生、大学生メンバーはWebサイトでの情報更新やPR活動、ガイド募集の告知などで活動をサポートしています。

今回、発足メンバーの1人で団体理事兼関西支部長を務める宮本さんはじめ、関西在住メンバー4名が集合。文化・慣習の異なる外国人に、日本の文化を正しく伝える難しさややりがいなどをインタビューしてきました。

ガイド場所の選定や情報共有をもとに、東京・大阪でガイド活動

メンバーそれぞれリアルなガイド情報を集め共有

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ガイド活動の前に、必ずメンバーが集まってミーティングを行っています。内容は、主にガイドを行う場所の決定や各メンバーが集めた情報の共有。特に「あそこのたこ焼き屋さんは、店主のおじさんと会話が弾めばおまけしてくれる」といった、ガイドブックには載っていないリアルな情報を意識的に集めるようにしているそう。ミーティングの場所は、学生が運営する学生限定の無料シェアスペースやカフェなど。ただ、平日は学校やクラブ活動があり集まりにくいので、Skype(無料のテレビ電話アプリ)を活用してミーティングを行っています。

日本を深く知りたい外国人へのガイドサービス

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ガイド活動を始めるにあたって、そもそも日本を訪れる外国人の方は、何を目的に来ているのかを知るべきだと考えたそう。そこで、外国人を見つけては来日目的や行きたい場所、見たいこと知りたいことなどアンケート調査を実施。写真は大阪・心斎橋でヒアリングを行ったときのもの。「この日本人、だれ?」と不審がって見られたり、一生懸命に説明したけれど無視されることも多かったとか。この時の経験をもとに、どのように声をかければ怪しまれないかを考え、ボードに活動趣旨や目的を書いて、それを見せながらコミュニケーションをとるという方法を考えたそうです。また、現在ガイド活動を実施する際も、街頭に立ち「ガイドします」という意味の英語のボードを持ってPRすることで、ガイドを希望する外国人観光客を募っているのだそう。

外国人から見た日本の魅力を再発見

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語学留学で1カ月間、日本に滞在しているメキシコ人留学生の団体をガイドした時のこと。彼らは日本のアニメが好きで、コスプレも大好きないわゆる“オタク”。日本のアニメってすごい人気なんだ、とあらためて思うとともに、日本人としてアニメや漫画などのサブカルチャーについても知っておこうと勉強。後日、SNSで彼らにメッセージを送ると、長文での返事がきたそう。新しいことを知ることができる喜びとともに、世界中に友達を作れる楽しさも実感できるそうです。

英会話カフェでの日本語ボランティア活動

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東京・高田馬場にある英会話カフェに、毎週土曜日、PIPSの東京メンバーが日本語ボランティアとして参加。日本語を学びたいという外国人には、日常的に使える日本語のフレーズを教えたり、日本語学校の宿題のお手伝いをしているそうです。もちろん、英語でのやりとりもあります。世界のさまざまな国の方とお話しすることでその国の文化や考え方を知れたり、それぞれの国のリアルな情報を聞いたりと、語学力以外にも学べることや得られることがたくさんあるそう。

代表者インタビュー

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写真左から
宮本麟太郎(りんたろう)さん/理事・関西支部長 関西学院大学 総合政策学部 1年
水上紗央里(みずかみさおり)さん/同志社大学 グローバル地域文化学部ヨーロッパコース 1年
鈴木杏奈(あんな)さん/大阪府立箕面高校 3年
石川ミラさん/関西学院大学 国際学部 1年

Q1 活動の目的や活動するうえで大切にしていることは?

日本人の英語のスピーキング力は、TOEFL(R)テストの結果にも表れているように世界でも下位ポジション。どうすれば力が身につくのか海外の方に聞くと、“とにかく話すこと”だと言われます。ならば、日本にいながら外国人と会話できる機会を増やそう、と。外国人観光客は、ガイドブックには載っていない情報を得ることができる。外国人、活動メンバー双方にメリットのある活動だということを大切にしています。(宮本さん)

自分たちも大阪を、東京を旅しているような気分で楽しむことを大事にしています。日本に住む私たちが日本を学び、知ることで新しい発見ができるし、日本人としての考え方を外国人に理解してもらうこともできると思います。(鈴木さん)

Q2 団体に入ったきっかけは?

人と話すことが好きで、5歳から英語を習っていたこともあり英会話も好きでした。もっと外国人の方と話したいと思いましたが、高校生では限界があります。やりたい気持ちはあるのにできないもどかしさを友人と話していたら、その友人がSNSでPIPSの活動を知り、絶対やりたい!と、友人と一緒に入りました。(水上さん)

PIPSの創設メンバーの宮本くんと同じ高校で、私が中学生向けのサマースクール(英語と日本語を使ったさまざまな活動や講習)を主催する団体『トライアングルサマースクール』で活動していることを知り、PIPSでも活動しないかと誘ってもらいました。私自身、中学2年からイギリスやカナダなどのサマーキャンプに参加経験がありましたが、海外の方から日本について聞かれても、何を答えていいかわからないことも…。日本についてもっと知りたいと思っていたし、活動内容にもひかれ参加することにしました。(石川さん)

Q3 活動を通じて何を学んだ? どんなことを得ている?

尊敬できる仲間に出会え、自分にもできることがある、と良い刺激を受けています。ガイドをする前に下調べのために実際に街を歩いたりするのですが、何度も行ったことのある場所なのに、案外、知らないことも多いんです。そんな、ささいな発見も楽しいです。(水上さん)

外国人と話すことで違う文化に触れられるし、実のある異文化交流になっていると思います。活動への認知が高まるにつれ、別の団体とのかかわりも増えました。個人的には、PIPS JAPSANの活動内容に興味を持ってくださった高校の校長先生との会話が増えたこともうれしかったです。(鈴木さん)

Q4 ズバリ、PIPS JAPANに入って良かった?

はい! 高校生が主体となり、ゼロからスタートし、実際に活動するまで作り上げたこと自体、すごいことだと思っています。知識も経験もノウハウもないですが、みんなでアイデアや知恵を絞り、形にすることのプロセスは本当に面白いです。(鈴木さん)

Q5 逆に大変だった・つらかったことは?

3月までは高校生だったので勉強もクラブ活動も忙しく、中には生徒会活動をしているメンバーも。ミーティングの時間設定も大変で、ガイド活動自体への参加も調整するのに苦労します。大学受験の勉強のため活動自体を休むメンバーもいましたし…。高校生だからこそ、活動時間が自由にならないことのもどかしさを実感しました。(宮本さん)

外国人にガイドするという単純な活動を、多くの人に知ってもらい活用してもらうにはどうすればいいか。活動内容のPR方法に、最も悩みます。SNSやWebサイトなどで情報発信を行っていますが、拡散してもらうための工夫や見せ方など考えなければならないことは多いです。(石川さん)

《社会人との出会い・つながり》

大学生の団体との接点やかかわりはありますが、社会人との出会いはありません。ガイドする外国人の方は学生・社会人問わないので、外国人のビジネスパーソンや起業家とお話しすることはあります。(水上さん)

PIPSでの活動を始めたころ、スポンサーや協賛金を集めようと動いたこともありましたが、やはり高校生が主体の団体ということもあり、金銭がからむと信用という点では難しく断念しました。今はスポンサーや協賛に頼らず、ガイド場所への交通費など自己負担でまかなえる範囲で活動しています。(宮本さん)

《これから団体・サークル選びをする皆さんへ》
大学の4年間は遊んで過ごすこともできますが、僕は大学に入学する前から4年間でやりたいことを明確に持ち、それを必ず達成したいと思っています。自分で決めて自分で行動できるからこそ、やりたいことに向かって進むべきだと思うんです。何もやらないより挑戦した方がいい。まず、自分の気持ちに向き合い、何をしたいかをつかむことから始めるべきだと思います。(宮本さん)

私の場合、イラストレーターなどのパソコンソフトが使えるので、それが今の活動でも生かせています。写真を撮ることも大好きで、SNSやWebサイトでの活動写真は私が撮影したものが多いんですよ。どんな活動をするにも、自分の得意なことが生かせる部分が必ずあるはず。自分の武器を持っておくことも、活動を始めるうえで大切なことだと思います。(石川さん)

取材・文/森下裕美子 撮影/井原完祐

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