【ジェネリック医薬品業界編】プロが選ぶ隠れ優良業界

世の中には、広くは知られていない「隠れ優良業界」があります。シンクタンク・日本総合研究所の研究員に、プロの目線で優良業界を教えてもらうこの企画。今回は「ジェネリック医薬品業界」について紹介します。

「ジェネリック医薬品業界ってどんな業界?ジェネリック医薬品業界を“隠れ優良業界”に選んだ理由とは?」など、日ごろたくさんの業界・企業とかかわっているプロだからこそわかる情報が盛りだくさん。ぜひ、参考にしてみましょう。

日本総合研究所・高津輝章さんプロフィール株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 高津輝章

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。企業を「経営企画」「経営管理」「財務」の観点から支援するプロジェクトを多数手がけている。また、企業がグループ本社機能の高度化・効率化を目指す際の支援も。公認会計士。

前回の記事では、普段たくさんの企業と接している日本総研の研究員が考える優良業界の3つの条件を紹介しました。

「優良業界ってどんな業界?見つけ方・探し方のコツは?【シンクタンク研究員が解説】」前回の記事はこちら

1. 業界の規模が大きい、あるいは拡大中である
2. 他社との競争が激しくない
3. 取引先に対して有利な立場を築きやすい

今回は、これらの条件に当てはまる「ジェネリック医薬品業界」について高津さんに解説していただきます。

ジェネリック医薬品業界ってどんな業界?市場規模はどのくらい?

特許切れ医薬品と同じ成分の「後発医薬品」を手がける

ジェネリック医薬品業界イラスト

ジェネリック医薬品業界とは、新薬の特許が切れた後に、同じ有効成分を含み同じ効果を発揮するよう開発された「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」を開発・製造・販売する業界です。

医薬品は、ドラッグストアなどで処方箋なしで販売されている「一般用医薬品」と、病院や調剤薬局などで医師の診断に基づいて処方される「医療用医薬品」とに大別されます。このうち医療用医薬品は、新薬(先発医薬品)とジェネリック医薬品とに分かれます。

新薬の開発には、数百億円規模の研究開発費と、安全性試験や審査なども含めて10年以上の開発期間が必要です。ところが、医薬品成分の特許が20~25年(※)で切れた後は、新薬と同じ成分の薬をほかの企業が開発・製造することが可能なのです。こうして生まれたジェネリック医薬品は、新薬に比べて開発費が安く済むため、価格を大幅に抑えることができます。

(※)特許の存続期間は出願から20年と決まっている。しかし、医薬品の場合は安全性などを確保するための試験の実施や国の審査などにより特許権の存続期間の侵食があるため、最大で5年間の延長が認められる。

世界各国でジェネリック医薬品への切り替えが加速

世界各国では、医療費の高騰が社会問題になっています。そのため、高価な新薬から安価なジェネリック医薬品に切り替えようとする動きが加速しているのです。その結果、例えばアメリカでは、ジェネリック医薬品の割合が全医療用医薬品の9割以上(数量ベース)を占めています。

これに対し、日本ではジェネリック医薬品のシェアはさほど高くありませんでした。2011年9月時点で、ジェネリック医薬品の割合(数量ベース)は39.9%。その後は徐々に高まってきましたが、それでも2017年9月時点で65.8%(数量ベース)にとどまっています(2018年度に入り、7割程度まで上昇)。厚生労働省は、2020年までにジェネリック医薬品の割合を8割にまで高める目標を立てています。そして、ジェネリック医薬品の使用比率が低い薬局に対して調剤基本料の減算規定を設けるなどして、さらなる普及を促しています。

ジェネリック医薬品の市場は順調に拡大中

ジェネリック医薬品業界の市場規模は、年々大きくなっています。

市場調査会社の富士経済によれば、2015年におけるジェネリック医薬品の市場規模は7963億円でした。ところが、2017年には9640億円(見込み)に拡大。2021年には1兆2233億円に達すると予測しています。中でも、業界をけん引しているのが国内のトップ企業です。今後も国内企業は順調に伸びていくと言えるでしょう。

ジェネリック医薬品業界を「隠れ優良業界」として選んだ理由

ジェネリック医薬品業界が有望だと考えるポイントは、次の通りです。

1. 市場規模の拡大が期待される

アメリカやドイツ、イギリスなどと比べると、日本におけるジェネリック医薬品の割合はまだ伸びしろがあります。そのためジェネリック医薬品メーカーにとっては、国内でのシェアを伸ばす余地が残っていると言えます。また、今後の日本ではさらに高齢者が増え、医薬品の使用量もさらに増えるはずです。そのため、ジェネリック医薬品業界も成長が続くと期待されています。

2. 仕入れ先に対する交渉力が高い

ジェネリック医薬品の販売数が増えてきたため、各メーカーが仕入れる医薬品原料の量も増えています。中でもジェネリック大手は大量の原料を仕入れるため、仕入れ先に対して交渉力が強く、有利な立場です。また、経営規模が大きいほど大規模な生産設備を導入しやすいため、製造コストを安く抑えることができ、他社より有利だといえます。

3. 開発力に優れたメーカーがある

販売額の大きかった新薬の特許が切れると、その後釜を狙って多くの企業がジェネリック医薬品を開発しようとします。そのため、無条件に競争が緩やかであるとはいえません。ただし、「飲みやすい形状の薬を開発するなど、技術力が高い」「特許切れのタイミングに合わせてジェネリック医薬品を開発できる、しっかりした生産体制がある」など、他社に対して何らかの差別化要素がある企業は、ジェネリック医薬品メーカー他社との競争に打ち勝つチャンスが大きいといえます。

一般的には、たくさんの医薬品を販売しているメーカーほど開発力・生産力が高いと言えます。特に、他社との共同開発ではなく、自社だけで開発した医薬品が多いほど、開発力・生産力に優れていると見なせるでしょう。

ジェネリック医薬品業界には、どんな仕事がある?

ジェネリック医薬品業界には、下記のような仕事があります。

開発

新薬の開発には10年以上の期間と、数百億円規模の研究開発費がかかるのはすでに述べた通りです。一方、ジェネリック医薬品は開発から承認・発売まで3~4年程度、1億円程度の研究開発費で済むと言われます。ただし、新薬が特許切れを迎える時期に合わせて開発することが必要になるなど、新薬とは異なる難しさもあります。また、世界的に成長が期待されている「バイオシミラー(バイオ医薬品の後発薬)」は、開発の難易度が高い分野です。

信頼性保証

医薬品には、高い安全性が求められます。そのため、どのジェネリック医薬品メーカーも、さまざまな試験を繰り返して副作用の有無・効き目の確かさなどを確かめます。当然、そうした仕事を受け持つ「信頼性保証」部門は、重要な役割を担っています。

営業

以前のジェネリック医薬品メーカーは、外部の販売代理店などに営業を任せることが多かったものです。ところが近年では、市場規模の拡大に伴って社員の人数も増加傾向にあり、薬剤師や医師などに医薬品の情報を提供するMR(Medical Representativeの略。医薬情報担当者)を増やす企業が増えています。

ジェネリック医薬品業界の最近のTopics

ジェネリック医薬品業界では、このような動きが現れています。

M&Aによって上位寡占が進む

経営規模が大きくなるほど、「規模の経済」によって製造・仕入れコストを抑えることができます。そこで上位メーカーを中心に、M&A(他社の買収や合併)を目指す動きが盛んです。

国内市場の停滞に備えて海外進出を目指す

国内市場はもうしばらく拡大が見込まれますが、ジェネリック医薬品のシェアがある程度まで拡大すると、その後は頭打ちになる危険性もあるでしょう。そこで今のうちから、海外でのM&Aや新拠点の開設などを行って海外市場を開拓しようとする動きもあります。特に、世界最大の医薬品市場であるアメリカと、これから成長が見込まれるアジアは、各社にとって焦点となっています。

バイオシミラーに取り組む企業も

細胞培養や遺伝子組み換えといったバイオ技術を活用した「バイオ医薬品」は、副作用が比較的小さいと言われます。そのため、市場は世界的に伸びていて、バイオシミラーのニーズも拡大中です。

前述したようにバイオシミラーの開発は難易度が高く、開発費もジェネリック医薬品に比べるとずっと高額になりますが、この分野で確固たる技術力を築くことができれば、他社との競争に巻き込まれずに利益を上げることができるでしょう。

ジェネリック医薬品メーカーの探し方

最後に、ジェネリック医薬品メーカーをどうやって探したらいいのかご紹介します。

就職情報サイトを使う場合

リクナビなどの就職情報サイトを使って企業を探す場合は、フリーワード欄に「ジェネリック」や「ジェネリック医薬品」などと入れてみるといいでしょう。

また業界から探す場合は、メーカーの中でも「医薬品」業界に属していることが多いので、見てみるのもオススメです。

インターネットで検索する場合

就職情報サイト同様に「ジェネリック 会社」「ジェネリック医薬品 メーカー」などと検索して各企業のホームページを見るのはもちろんですが、業界団体のホームページを見てみると、会社の一覧を見ることができるでしょう。「ジェネリック医薬品 業界団体」と検索してみると良いと思います。

 

取材・文/白谷輝英
撮影/平山 諭

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