【油空圧業界編】プロが選ぶ隠れ優良業界

世の中には、広くは知られていない「隠れ優良業界」があります。シンクタンク・日本総合研究所の研究員に、プロの目線で優良業界を教えてもらうこの企画。今回は「油空圧業界」について紹介します。

「油空圧業界ってどんな業界?油空圧業界を選んだ理由とは?」など、日ごろたくさんの業界・企業とかかわっているプロだからこそわかる情報が盛りだくさん。ぜひ、参考にしてみましょう。

日本総合研究所・吉田賢哉氏日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

前回の記事では、吉田さんが考える優良業界の3つの条件を紹介しました。

「優良業界ってどんな業界?見つけ方・探し方のコツは?【シンクタンク研究員が解説】」前回の記事はこちら

1. 業界の規模が大きい、あるいは拡大中である
2. 他社との競争が激しくない
3. 取引先に対して有利な立場を築きやすい

今回は、これらの条件に当てはまる「油空圧業界」について吉田さんに解説していただきます。

油空圧業界ってどんな業界?市場規模はどのくらい?

工作機械や建機などに使われる「油空圧機器」を製造

油空圧業界では、油や空気(圧縮空気)を活用して動作する機器を作っています。

油圧機器とは、液体(主に鉱物油)を動力の伝達媒体とした駆動系(エンジンの出力を伝達する部品装置)のこと。小型のポンプで大きな力を発揮することができる、出力や速度の制御が容易である、また遠隔操作が可能である、などの特徴があります。
これらの特徴を生かして、例えば、土砂などを掘る際に使われる「ショベルカー(油圧ショベル)」にはいくつかの油圧機器が組み込まれ、旋回・走行したりショベルを動かしたりする、操作の動力に使用されています。

一方、空圧機器は、空気を動力の伝達媒体としたもの。衛生管理が重要とされる商品の製造など、油圧が使えない場合に空圧が用いられることがあります。食品の製造ラインなどでは、食品に悪影響を与えるリスクが小さい空圧機器が製造機械の中で幅広く使われています。

油空圧業界は難易度の高い技術と高品質で重要な役割を担っている

油空圧メーカーの作る製品は、単に「加工する」だけで作れる「部品」ではなく、加工した部品を組み合わせた「ユニット」と呼ぶべき製品です。

素材を、削る、切る、磨く、といった加工について取り組むことができる日本企業は、数多く存在しますが、単に加工しただけの部品ではなく、「油空圧機器」として製品化するものであり、複合的な技術が必要になります。そのような技術を持つ企業は多くはありません。

また、さまざまな機械を動かす重要な部品(ユニット)であるため、品質の要求水準も高くなります。そういった技術的な難しさや、長年の技術の蓄積によって高品質を保つ、といったことが、簡単に参入することを難しくしている一つの理由です。

油空圧機器は、工作機械や建設機械、工場の生産ラインなどに組み込まれて使われているため、決して目立つ存在ではありません。しかし、業界内の各企業は、重要な役割を果たす機器をしっかりと供給しています。

油空圧業界の市場規模は、オリンピック・パラリンピック需要で拡大傾向

業界団体「一般社団法人 日本フルードパワー工業会」によれば、油空圧機器の出荷高(暦年)は下記のように推移しています。

2012年……6340億円
2013年……6197億円
2014年……6723億円
2015年……6715億円
2016年……6752億円
2017年……8181億円

市場は6000~7000億円程度で比較的安定して推移してきました。しかし、2017年には、オリンピック・パラリンピックにおける建設関連の油圧機器の需要拡大、また人手不足の傾向によって生産ラインの自動化ニーズが高まり、空圧機器の需要拡大に伴って8000億円を超える市場規模となりました。

打ち合わせをする社会人

油空圧業界を「隠れ優良業界」として選んだ理由

油空圧業界が有望だと考えるポイントは、下記の通りです。

1. 規模の拡大、新しいことに挑戦をし続けている

まず1つ目の優良業界の条件である「業界の規模が大きい、あるいは拡大中である」についてお話しします。

日本だけでなく、海外での需要も伸びている

現在、経済成長が続くアジアなどでは、人件費が徐々に高くなっています。そのため、工作機械や建設機械の導入や、生産ラインの自動化を進める動きが活発化しているのです。こうした機械や生産設備には油空圧機器がたくさん使われており、需要は右肩上がりに伸びています。

新規事業にも積極的に取り組んでいる

油空圧メーカーの中には、技術力を生かして新たな事業の拡大のための投資を積極的に行っている企業が少なくありません。例えば、油をろ過するフィルターの状況をセンサーで感知し、状況を遠隔管理することで、機器が故障する直前にパーツを交換して稼働率を高める「故障予知」などの取り組みが盛んになっています。

2. 世界的に活躍する日本企業を支えている

次に2つ目の条件「他社との競争が激しくない」と3つ目の条件「取引先に対して有利な立場を築きやすい」については、一緒にお話しします。

ほかには代えられない技術を持っている

工作機械や建設機械の分野では、世界的に大きなシェアを獲得している日本企業があります。そのため、こうした企業に油空圧機器を納めている油空圧業界も、有利な立場を占めていると言えます。

油空圧業界では、企業によって独自の開発を進めていることも多いため、他社には代えられない技術を持っている、かつ他社との競争優位性が高い企業も少なくありません。また、効果的に動力を伝えるという観点では、ほかの技術的なアプローチに比べ、油圧機器は非常に優れていますし、衛生面などに配慮した動力源では、空圧に代わる技術的なアプローチはなかなかないと言えます。

高品質で信頼性の高い製品の提供

工作機械や建設機械、自動ラインなどが故障を起こすと、現場の生産性に大きな悪影響を及ぼします。その点、日本の油空圧機器は世界的に高品質だと信頼されていて、日本企業以外に販売する際にも強い追い風となっています。

油空圧業界には、どんな仕事がある?

油空圧業界には、下記のような仕事があります。

研究開発、製造

油空圧機器の研究や開発、製造を行う社員は、機械系はもちろん、電気、化学、土木系出身者もたくさん活躍しています。最近では、情報処理系のニーズも高まっており、企業によっては、情報処理系出身者が活躍している場合もあります。

工場管理

最近はアジアをはじめとした海外工場の管理を任されるケースが増え、現地スタッフの指導や現地取引先企業などともかかわることが多いようです。

営業

グローバル企業が増えているため、海外で活躍できる可能性が高まってきました。日本で海外企業とやりとりをする場合、海外に駐在して現地企業とやりとりをする場合など、かかわる企業も多様であると言えます。

油空圧業界の最近のTopics

油空圧業界では、このような動きが表れています。

グローバル化

工作機械や建設機械の業界では、世界規模でビジネスが行われています。そのため、そうした業界に機器を納める油空圧業界も、グローバル化が進んでいます。また、海外工場を建設・運営する企業も多く、ダイバーシティへの対応もより求められるでしょう。

インテリジェント化

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用して故障予知を行うケースが増えています。このような「インテリジェント化」によって機器の付加価値を高める試みは、さらに進んでいくと予測されます。

 

取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭

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