陸運編・2015年【業界トレンド】

輸送量減少で競争は激化。成長著しい宅配便市場と、アジアなど海外進出に注目しよう

国土交通省によると、2012年度の国内貨物輸送量は47.8億トンだった。このうち、自動車による貨物輸送量は9割以上(43.7億トン)を占めており、陸運業は国内物流の中核を担っている。代表的な国内企業としては、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便、日本通運などが挙げられる。

12年度の国内貨物輸送量は、対前年度比で2.5パーセント減。ピーク時の1991年度(69.2億トン)に比べると、3割ほど縮小した。今後も、国内の人口減少、荷物として運ばれる各種製品の小型化、生産拠点の海外移転による原材料・製品輸送の減少などが進むことから、長期的な輸送量は減少傾向が続くと予測されている。

こうした中、国内の競争環境は激化する一方。そこで各社は、有望領域に力を注ぐことで生き残りを目指している。とりわけ期待されているのが、個人向け宅配事業だ。経済産業省によれば、2013年における国内の消費者向けEC(Electronic Commerceの略。電子商取引)市場は11.2兆円。対前年比で17.4パーセント増え、08年(6.1兆円)に比べると8割以上も伸びた。今後もECの成長は続くとみられ、宅配便の需要も拡大すると期待されている。ただし、コスト競争が各社の利益率を押し下げているのは懸念材料。また、宅配事業はヤマト運輸などの業界大手による寡占化が進んでいるため、それ以外の企業にとっては厳しい状況が続きそうだ。さらに、EC事業者の中には自ら物流センターを設立するなど、「物流の内製化」に取り組む動きも起きている。宅配便市場の動きには、引き続き注目が必要だろう。

グローバルな物流網の強化も重要だ。例えば、ヤマト運輸は14年5月、全日空グループの航空貨物会社であるANA Cargoとのパートナーシップを強化した。これにより、沖縄を国際物流のハブ(複数の輸送網が接続された場所のこと。交通結節点とも呼ぶ)として活用する動きをさらに強めている。また、同じくヤマト運輸が13年9月に完成させた「羽田クロノゲート」も、物流のグローバル化を象徴するもの。これは羽田空港に隣接した大規模な物流施設で、アジアなどから届いた航空便を、素早く国内物流網へと移し替える役割を果たしている。東南アジアを中心に、拠点の開設・拡充を続ける企業も多く(ニュース記事参照)、国境を越えた物流サービスの整備は今後も焦点となるはずだ。

コスト削減と利便性の向上も、引き続き取り組むべき課題。例えば日本郵便は、EC大手であるアマゾン、住宅関連製品を手がけるナスタと協力し、大型郵便に対応するポストを開発。送り先が不在でも再配達する必要がなくなるため、配送費削減や消費者の利便性アップにつながると期待されている。また、アマゾンの米国法人で小型無人ヘリを用いた配送サービスの研究が進められるなど、新たな集配方法の模索も行われている。

陸運業界志望者が知っておきたいキーワード

3PL
3rd Party Logisticsの略。商品の売り手でも買い手でもない第三者企業が、荷主企業の物流機能をワンストップで請け負うこと。単純な配送だけでなく、在庫管理やシステム構築なども提供する。
フォワーダー
貨物利用運送事業者とも言う。ほかの運送会社の輸送手段を利用して貨物を運ぶ事業者で、荷主に代わって輸出入申告などの手続きなどを行う。
フルフィルメント
陸運企業などがEC事業者や通販事業者に対して、商品の受注、梱包(こんぽう)、決済、発送などの業務をトータルで提供するサービスのこと。ECサイト構築や、コールセンター業務などを扱う場合もある。
ドライバー不足
低賃金、長時間労働などが敬遠され、トラックドライバーが不足気味になっている。そのため、女性ドライバーの積極登用を行ったり、トラック輸送からCO2削減に役立ち、渋滞の心配もない鉄道、船舶を使った輸送に切り替える「モーダルシフト」を強めたりする動きもある。

このニュースだけは要チェック <海外拠点の新設・拡大が活発>

・佐川急便の持ち株会社であるSGホールディングスが、スリランカの物流企業であるエクスポランカ・ホールディングスに対する株式公開買い付け(TOB)を完了。買収により、インド、バングラデシュ、スリランカにおける物流網の強化を目指す。(2014年6月19日)

・日本通運の子会社であるドイツ日本通運が、ルーマニアのティミショアラ市に支店を開設。ヨーロッパの自動車メーカーは、人件費や工場の運営コスト削減のため工場を中東欧に移転させるケースが増えているが、こうしたニーズを取り込もうとした取り組み。(2014年11月1日)

この業界とも深いつながりが <空運と協力してグローバル化に対応>

空運(貨物)
海外の航空網と国内の陸運網を結び、グローバル物流のスピードアップを図る

海運
グローバルな輸送体制を築くため、海運業者と協力する機会も増えている

IT
物流システムの効率化・コスト削減を実現するため、各社はIT導入に積極的

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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