証券編

株式市況の回復とともに各社の業績は好転。店舗網強化と、手数料収入からの脱却が焦点に

証券会社は、株式や債券(国債や社債など)の売買、投資信託(投資家から集めた資金を専門家が運用する金融商品)の販売などを手がける企業。独立系の野村ホールディングスや大和証券グループ本社、メガバンク系の三菱UFJ証券ホールディングス、みずほ証券、SMBC日興証券などが大手とされる。近年では、SBI証券、楽天証券、松井証券などのネット系証券会社が、株式売買手数料の安さを武器に株式売買額を拡大中だ。

 

リーマン・ショック(2008年)、東日本大震災(11年)の影響で、証券市場は低迷。株式の売買手数料などが落ち込み、証券各社の業績も停滞が続いていた。ところが、いわゆる「アベノミクス相場」(キーワード参照)や、少額投資非課税制度(キーワード参照)導入により、13年以降は個人投資家の動きが活発化。証券各社の業績も好調に転じた。例えば、野村ホールディングスの14年3月期の純利益は、対前期比で約2倍の2135億円。大和証券グループ本社も、過去最高益となる1694億円を挙げている。15年3月期は相場がやや落ち着いたことと、個人投資家を中心に取引規模が縮小したことなどから、収益の伸びは小休止。しかし、15年に入って株式市場は再び活況を呈しており、各社の業績にも拡大への期待が膨らんでいる。

 

こうした中、各社は店舗網を強化することで個人投資家との接点を増やし、収益増に結びつけようとしている。例えば大和証券は、これまで店舗を設置していなかった郊外にも小規模営業所を開設する方針。また、SMBC日興証券は、同じグループに属する三井住友銀行の支店に隣接した店舗を増やし、銀行の顧客に資産運用などに関するサービスを提供して取り込みを図っている。バブル崩壊後、証券各社はコスト削減を目指して店舗数を絞り込む道を歩んできたが、株高や、資産運用への関心の高まりなどを背景に、積極策に切り替える企業が増えているのだ。

 

実店舗を持たず、固定費を抑えて低コストを実現してきたネット系証券会社も、同様の動きを進めている。特に、最大手のSBI証券は、グループ傘下の投資相談窓口「SBIマネープラザ」を全国に展開。家計に関する相談に幅広く答えながら、資産運用への関心を高めてもらうのが狙いだ。また、来店者を増やすことで、保険や住宅ローンなどグループ会社が扱う商品の取引増にもつながると期待されている。

 

従来の証券会社にとって、収益の柱は株式売買手数料だった。しかし、取引が発生するごとに手数料を受け取る「販売手数料型ビジネス」は、市況に左右されやすい。また、値下げ競争に巻き込まれる危険性も大だ。そこで、特に大手証券会社にとっては、投資信託の管理手数料である「信託報酬」のように、預かり資産に対して報酬を受け取る「管理報酬型ビジネス」への転換が急務だ。中でも各社が注力しているのが、「ラップ口座」(キーワード参照)という運用形態。残高に対して手数料を受け取れるため、収益の安定化につながる。

 

公正で透明性の高い事業を行うための仕組みづくりも欠かせない。14年12月、新規株式公開(キーワード参照)直後の企業が、黒字予想から一転して赤字転落予想を公開し、株価が急落した。このケースでは、証券会社などの責任に言及する声も上がっている。証券業界を志望するなら、各社のコンプライアンス(法律や社会的規範、企業倫理を守りつつ企業を運営すること)に対する取り組みについて調べてみるといいだろう。

 

証券業界志望者が知っておきたいキーワード

アベノミクス相場
2012年末に第二次安倍政権が発足し、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」によって景気浮揚を目指した結果、株式市況が大きく上昇に転じたことを指す。
少額投資非課税制度
NISA(ニーサ。Nippon Individual Savings Accountの略)と呼ばれることもある。株式の値上がり益や配当金に対する税金が、5年間、年に100万円まで非課税となる仕組みで、2014年1月にスタートした。個人投資家を株式市場に呼び込む効果があるとされている。
ラップ口座
顧客が証券会社などに対し、投資から財産管理までのサービスを一任する運用形態のこと。「ラップ(=wrap)」とは包むという意味の言葉で、すべてを包括したサービスということから、この名前が使われている。取引回数・額ではなく、顧客から預かっている資産の残高に応じて手数料を受け取るため、証券会社にとっては収益の安定化につながる。
新規株式公開
IPO(Initial Public Offering)などとも呼ばれる。未上場の企業が、株式を証券市場で一般の投資家に向けて売り出すことを指す。手がけた証券会社には、その取引規模に応じた報酬がもたらされる。

このニュースだけは要チェック <株価の推移には気を配っておこう>

・日経平均株価が、15年ぶりに終値で2万円を上回った。第二次安倍政権発足直前に8000~9000円台で推移していた日経平均株価は、13年末に1万6000円台、14年末には1万7000円台に回復。今回、2万円台を付けたことで、証券各社の業績にも好影響を与えそうだ。(2015年4月22日)

 

・大和証券グループが、2015年度に全社員の給与水準を引き上げると発表。14年度に21万円から23万円に引き上げられていた初任給は、16年度には24万円になるという。野村證券も若手社員を中心に給与を引き上げることを発表しており、好業績を受けた賃上げが相次いでいる。(2015年3月30日)

この業界とも深いつながりが <銀行や生保など金融グループ同士の結びつきがさらに強化>

メガバンク
グループ内のメガバンクと協力し、多方面から顧客に提案するケースが増加

生保・損保
証券会社が保険を手がける一方、生保が投資信託を扱うなど、競合が激化

マンションディベロッパー
不動産会社が手がけるREIT(不動産投資信託)分野は証券業界と密接に関係

 

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 高津輝章氏

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一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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