ドラッグストア編・2015年【業界トレンド】

順調だった市場も「踊り場」に。外国人取り込み、PB開発などでさらなる成長目指す

ドラッグストアは、一般用医薬品や化粧品、健康食品などを販売する店舗のこと。マツモトキヨシホールディングス、サンドラッグ、ツルハホールディングスなどが代表格だ。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS:Japan Association of Chain Drug Storesの略)によると、2014年度におけるドラッグストア業界の市場規模は6兆679億円。前年度(6兆97億円)より1.0パーセント増え、同協会の調査開始以降14年連続で過去最高を更新した。ただし、ここ数年は伸び悩みの傾向が強くなっている。一方、総店舗数は1万7953店舗で、前年度(1万7563店舗)より2.2パーセント増。売り上げの伸びは店舗数の伸びを下回っており、1店舗当たりの売上高は2年連続のマイナスだった。順調に成長してきた業界だが、経営環境は厳しくなっている。

分野別に見ると、14年における医薬品の売上高は1兆9479億円で1.1パーセント増、化粧品は1兆3260億円で0.1パーセント減、日用雑貨は1兆2914億円で1.0パーセント増、健康食品などを含む「その他」が1兆5026億円で1.7パーセント増だった。化粧品が伸び悩んでいるのに対し、食品のカテゴリーは好調を維持。今後は、介護食などの需要増も見込めるだろう。

このところ各社が力を入れているのが、訪日外国人の取り込みだ。13年、日本を訪れた外国人(訪日外客数)は初めて1000万人を突破。14年には1341万人に達し、15年も過去最高のペースとなっている。さらに、14年10月から食料品・飲料品・医薬品・化粧品などが免税対象品目に追加され、アジアなどからやってきた外国人旅行者がドラッグストアで日本製の商品をまとめ買いするケースが増えた。各社は好機を逃すまいと、免税対応店を増やすなどの策を打ち出しているところだ。一方、海外進出に力を入れるところもある。例えばウエルシアホールディングスは、16年までに中国で20店舗を出店すると発表。また、マツモトキヨシホールディングスは15年7月、タイでドラッグストアを展開すると発表した。

プライベートブランド(PB。小売業者が企画し、メーカーに生産を依頼した独自ブランドのこと)への取り組みにも注目しておきたい。PB商品は利益率を高くしやすいため、これまで多くのドラッグストアが力を入れてきたが、さらに一歩踏み込んだ動きが活発化しているのだ。例えばアインファーマシーズは、「AYURA」ブランドの化粧品を開発・販売しているアユーララボラトリーズを資生堂から買収。また、ココカラファインは九州大学と共同開発した医薬品向けの技術を、PB商品に活用していく方針だ。このように、メーカーを買収して「上流」を手がけたり、従来の枠組みを超えた商品開発に乗り出したりするケースは、今後増えていくかもしれない。

薬剤師の確保も、各社にとって重要な課題だ。06年に学校教育法が改正され、薬剤師養成の教育期間が、従来の4年から6年に延長された。それが影響し、従来は8000~1万人前後で推移していた薬剤師の合格者数は、09年度、10年度と激減(下記データ参照)。多くのドラッグストアが店舗数を増やそうとしている中、薬剤師の供給が減って人材不足が深刻化している。加えて、14年、15年の薬剤師国家試験合格率は60パーセント台前半に低迷し、内定者が薬剤師になれないケースが目についた。そこで各社は、社内で試験対策講座を開くなどの対応に追われている。

09年度、10年度の薬剤師国家試験合格者は激減

2008年度
合格者数……1万1301人
合格率……74.4パーセント
2009年度
合格者数……3787人
合格率……56.4パーセント
2010年度
合格者数……1455人
合格率……44.4パーセント
2011年度
合格者数……8641人
合格率……88.3パーセント
2012年度
合格者数……8929人
合格率……79.1パーセント
2013年度
合格者数……7312人
合格率……60.8パーセント
2014年度
合格者数……9044人
合格率……63.2パーセント

※教育制度が変わったことが影響し、09年度、10年度の合格者数は激減。また、13年度、14年度の合格率は、例年よりかなり下がった。薬剤師が確保できないと出店計画に悪影響が出るため、各社は人材確保・育成に力を注いでいる。

このニュースだけは要チェック <業界再編に引き続き注目しよう>

・ともに大手スーパー・イオングループに所属しているウエルシアホールディングスとCFSコーポレーションが経営統合。商品調達力の向上などを通じ、競争力を高めていく方針だ。ここ数年、ドラッグストアや調剤薬局業界では業界再編が活発化しており、今後も提携・合併の動きには注意が必要。(2015年9月1日)

・健康などへの効果を表示できる「機能性表示食品制度」に基づいた商品の販売がスタート。メーカーにとっては、国の審査が必要な特定保健用食品(トクホ)より参入しやすい。来店客の興味をひくことで売り上げ増が期待できる半面、販売方法のガイドライン作りが求められるなどの課題も指摘されている。(2015年6月12日)

この業界とも深いつながりが<コンビニとの争いはますます激化する傾向に>

コンビニ
食品を手がけるドラッグストアが増え、コンビニとの業態の違いは小さくなっている

eコマース
医薬品や健康食品を手がけるECサイトが、ドラッグストアの強力なライバルに

家電量販店
医薬品の販売に乗り出す家電量販店が増加。来店客や薬剤師の奪い合いが生じている

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 高津輝章氏

gyoukai_vol226_高津さん

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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