医薬品卸編

薬価引き下げが業績に大きな影響。調剤薬局向け施策の強化とIT化による業務効率化が加速

医薬品卸が手がけているのは、病院などで使われたり、病院や調剤薬局などで処方箋に基づき供給されたりしている「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどで販売される「一般用医薬品」に大別できる。実は医療用医薬品の割合が圧倒的に大きく、総販売額の約96パーセントを占める。

 

経済産業省の「商業動態統計調査」によれば、過去5年間における医薬品・化粧品卸売業の市場規模は25兆4140億円(2010年)→26兆860億円(11年)→24兆4200億円(12年)→25兆300億円(13年)→24兆3900億円(14年)と推移。1年ごとに市場が増減を繰り返しているのは、2年に1回行われる「薬価改定」の影響が大きい。国は高齢化によってふくれあがる医療費を抑制するため、繰り返し薬価引き下げを行っているのだ。医薬品卸業界にとって薬価変更の影響は大きく、各社は動向を注視している。

 

この業界では1990年代以降、業界再編が進んだ。社団法人日本医薬品卸業連合会によると、1992年に351社あった医薬品卸は、2002年に175社、12年に92社と激減。その結果、大手はメディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスの「4メガ」に集約された。今後も、大手を中心とした買収・提携の可能性は小さくない。また、アルフレッサホールディングスが14年12月、食品スーパー大手であるヤオコーの調剤薬局事業を買収すると発表。15年12月には、医薬品メーカーであるエーザイの医薬品製造子会社を買収すると発表した。このように、「川上」(開発・製造)や「川下」(調剤・小売)に進出するケースもあり得るだろう。

 

医薬品卸の営業先は、薬局や病院・診療所だ。社団法人日本医薬品卸売業連合会によれば、1992年度当時、薬局に供給されていた医療用医薬品は全体の5.2パーセントに過ぎず、大半は病院・診療所に供給されていた。しかし、薬局向け販売額の割合は年々拡大し、2013年度には53.7パーセントを占めている。背景には、政府が「医薬分業」(キーワード参照)の方針を掲げ、医療機関以外での薬の処方を奨励したこと。そして、医療モール(キーワード参照)や小規模なクリニックが増え、これに伴って周辺の調剤薬局も増加したことなどが影響している。そこで各社は、調剤薬局に医薬品情報を提供する人材を強化したり、地域に密着した卸会社を買収したりして、調剤薬局とのつながりを強化する動きを強めているところだ。

 

政府の方針や経営環境の変化にいち早く対応することは、業界にとって重要な課題。そこで各社は、IT化などによって業務のスピードアップを目指している。例えば、膨大な販売データから顧客ニーズを分析し、タイムリーな営業提案につなげるなどが代表的な取り組みだ。また、医薬品の情報をITで管理し、安全性の向上や、物流の省力化・効率化を実現するなどの取り組みも進行中。これらを加速するため、大型の物流センターを新設する動きも活発化している(下記ニュース参照)。

 

ジェネリック医薬品(キーワード参照)の普及にも注目しておきたい。現時点で、ジェネリック医薬品の数量ベースのシェアは50パーセント強。しかし、政府は医療費抑制のため、早い段階で80パーセントにまで引き上げることを目標に掲げている。こうした動きへの対応も、各社にとって重要な課題だ。

 

医薬品卸業界志望者が知っておきたいキーワード

医薬分業

医療機関の処方箋に基づき、外部の薬局が薬を出す考え方。医師と薬剤師が協力しながら診療や調剤を行う環境を整えたり、医師が利益追求のため必要以上の薬を処方するのを防いだりすることが目的。

医療モール

いくつかの診療所、薬局が集まった施設のこと。複数の診療科が一つの場所にあるため、患者側にとって利便性が高い。また、認知度や集客力を高めやすいため、診療側にとってもメリットがある。

ジェネリック医薬品

後発医薬品、ゾロ薬とも呼ばれる。特許期間が終了した医薬品を、他社が製造・販売するもの。研究開発費があまりかからないため一般の医薬品より安く、医療費抑制を目指す国によって普及が進められている。

薬価改定

診療行為に使える医薬品の範囲と、使った医薬品の医療保険における支払い価格を定めた「薬価基準」を調整すること。一般的に、新たに開発・発売された医薬品ほど価格が高く設定される。

トレーサビリティ

traceability。直訳すると「追跡できる」という意味。医薬品の流通・販売までの流れをさかのぼって確かめられることを指す。医薬品に不備があったり誤配送などが起きたりした場合に備え、トレーサビリティの仕組みを整備する動きが活発化している。

このニュースだけは要チェック <IT化を進めた物流センターの整備は各社にとっての課題>

・東邦ホールディングスが、広島に物流センターを建設すると発表。医薬品のロット番号や使用期限などを管理することで、医薬品物流の安全・安心を実現することに加え、仕分け作業を自動化するなど業務のスピードアップや効率化を図る。(2015年9月4日)

 

・アルフレッサホールディングスが建設を進めていた大阪物流センターが完成。高機能な庫内管理システムやトレーサビリティ機能を備えており、医薬品の安全・安心を守るだけでなく、効率的な物流も実現するとしている。(2015年8月18日)

この業界とも深いつながりが<医薬品メーカーとは切っても切れない関係>

IT(情報システム系)
ITを活用し、物流センターでの医薬品管理などを進めるケースが増加

専門商社
医薬品卸は専門商社の一種。他業界の専門商社と似た施策を医薬品卸が行う場合も

医薬品メーカー
商品の仕入れ先として深い関係。医薬品メーカーを買収した医薬品卸もある

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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