新聞編

ネットメディアに押されて苦境に。電子版の収益化と、双方向型情報発信への対応が急務

社団法人日本新聞協会が公表した2012年の新聞発行部数は4778万部。5年前(5203万部)に比べて8パーセント以上減少した。また、11年度の新聞社総売上高は1兆9529億円で、こちらも5年前(2兆3323億円)に比べて16パーセント以上減っている。特に落ち込みが激しかったのが新聞広告費。電通の「2012年(平成24年)日本の広告費」によれば、12年の新聞広告費は6242億円で、07年(9462億円)より34パーセント減った。

 

紙媒体としての新聞は、かつてない苦境に直面している。原因の一つは、拡大するインターネットメディアに押されていることだ。特に、スマートフォンなどの通信端末が多機能化したことで、インターネットを介して情報取得する割合が高まっている。博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所の「メディア定点調査(東京)・2013」によると、携帯電話(スマートフォン含む)からのインターネット接続時間は、08年の17.7分から13年は50.6分と急増。一方、新聞への接触時間は、08年の28.5分から13年は27.1分と頭打ちの状況だ。また、「BLOGOS」や「ハフィントン・ポスト」など、幅広い情報発信者を集めた新たな形のニュースメディアも登場し、新聞の読者層との競合が発生している。

 

こうした中、既存の新聞各社もネットへの対応を強化している。口火を切ったのは産経新聞。08年12月、紙媒体と同じ内容が読める『産経新聞iPhone版』の無料提供を開始。12年には300万ダウンロードを達成し、紙の購読部数を超えた。また、有料化にいち早く舵を切ったのは日本経済新聞社。10年3月にスタートした『日本経済新聞電子版』は、13年5月に有料会員数が30万人を超えた。これは、米ニューヨーク・タイムズ(113万人)、米ウォール・ストリート・ジャーナル(90万人)、英フィナンシャル・タイムズが(33万人)に次ぐ規模とされる。さらに、11年5月に創刊された『朝日新聞デジタル』も、13年3月に有料会員数が10万人を突破。他社でも、ネットでの有料化を模索しているとみられる。

 

従来型の新聞では、印刷体制や販売網の整備に相応の投資が必要だった。ところが、インターネットメディアの拡大により参入への障壁が低くなったことで、外国企業の参入をもたらし始めている。09年12月、ニュースサイト『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』が開設されて大きな話題を呼んだ。また、スマートフォンや、キンドル等の電子書籍リーダーを活用すれば、国内にいながらにして海外の新聞をリアルタイムで購読できることも追い風となっている。発行総数から見れば影響は限定的であるものの、競争環境の変化として認識しておく必要があるだろう。

 

現在、新聞業界の課題は大きく2つある。1つ目は、ますます多様化するメディアへの対応だ。13年4月、公職選挙法が改正され、インターネットによる選挙運動が可能となった。このように「双方向型の情報発信」が進む社会の中で、新聞社として提供する情報の内容が問われている。2つ目は、新たなビジネスモデルの構築、特にネット対応を中心とした収益化だ。新聞各社は、全国に広がる取材網や、良質なコンテンツを製作するための人材の維持費を、新聞の売り上げと広告収入でまかなってきた。インターネット関連ビジネスがそれに対応するだけの収益を生み出すことができなければ、コンテンツの質の低下を招く事態にもなりかねない。このジレンマを抜け出すことができるか、新聞各社のかじ取りは重大な局面を迎えているといえよう。

 

押さえておこう <大手新聞社のデジタルコンテンツにかかわる取り組み>

日本経済新聞
電子版を10年3月に創刊。無料・有料を合わせた登録会員数は150万人を超えている(13年7月現在)。スマートフォンやタブレット端末への対応が充実。
朝日新聞
電子版「朝日新聞デジタル」の有料会員数が10万人突破。紙の新聞のイメージをそのまま読める「紙面ビューアー」機能などのサービス向上で読者数増加を目指す。
産経新聞
新聞紙面電子化の先駆け。『産経新聞iPhone版』は無料で提供しているため、広告収入だけに頼らない持続的な収益化がカギとなっている。
読売新聞
月額157円と、他社より価格を安価に設定。ほとんどの紙面記事の閲覧、過去記事検索が利用できるなどの差別化を図っている。
毎日新聞・スポーツニッポン
毎日新聞・スポーツニッポンの紙面を読める新媒体「TAP-i(タップアイ)」を共同創刊。記事だけでなく、紙面に掲載しきれない写真・動画も提供する。

要チェックニュース! <テレビ業界を巻き込んだ業界再編の動きは日本でもあり得る>

・アメリカの大手新聞社トリビューンが、米ローカルテレビ局19社を買収すると発表。新聞広告費が減少する中、テレビ局を傘下に収めることで広告収入の拡大を目指したものとみられる。日本でも、テレビ局を巻き込んだ業界再編の動きは、十分に考えられるところだ。(2013年7月1日)

 

・日本新聞協会が主催したシンポジウムで、新聞に対する軽減税率(本来の税率より低い税率のこと)の適用が議題に上った。14年4月、15年10月に消費税増税が予定されているが、新聞業界は、食料品などと同様に新聞の消費税率も低く据え置くべきだと主張している。(2013年6月21日)

つながりの深い業界 <スマートフォン向け半導体の需要が急速に拡大中>

広告
広告収入が収益を左右。今後は紙面だけでない、広告の多様化が必要

ポータルサイト・SNS
紙面のインターネット対応が進んでいるため、連携が加速しそう

携帯電話キャリア
携帯電話キャリアが運営するニュース提供サービスに協力する機会が増加

 

この業界の指南役

日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

 

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