【オーストラリア編】情報収集力や交渉力…実力が試される海外駐在

Reported by 豪太
オーストラリアのシドニーにある日系企業の現地法人に勤務。現地での楽しみは、3000円前後(2015年12月時点)とリーズナブルな値段でコースを回ることができるゴルフ。暇さえあれば練習場に行くほどゴルフライフをエンジョイしている。

法律や労働組合の縛りが厳しくて解雇がしにくい

こんにちは。豪太です。今回は、オーストラリア駐在の苦労やメリットについてお話しします。

こちらで外国人のマネジメントをする上で苦労しているのが、部下からの要求が、「休みを取らせてほしい」「時間外労働には特別な手当を出してほしい」「これは私の仕事ではないからやりたくない」と容赦がないこと。確かに、どれも社員の権利として認められているものですが、要求の仕方を見ていると、少し遠慮がちになる日本人と少々、感覚が違うように思います。前々回にお話しした「上司に気をつかう部下像」と矛盾するように思われるかもしれませんが、どちらも私の率直な印象なのです。だからこそ、こちらでは日本の感覚をいったん捨てて、心して業務に当たらなければなりません。例えば、時間外の業務が発生しそうなときは、先回りしてこちらから「時間外手当出すからね」とオファーしておくのです。「こうやったら働きやすいだろう」と思われる策を先手先手で講じておくのが、本来のマネジメントのあり方だと思っています。

なお、「これは私の仕事ではないからやりたくない」と拒否したり、期待しているレベルでのパフォーマンスを発揮してくれない社員は、解雇して、代わりに能力の高い社員を採用した方が業務効率が上がるはずなのですが、こういった場合も、そう簡単には解雇できません。海外は解雇が普通な転職社会であり、意外に思われる方もおられると思います。私ももっと簡単なのかと勘違いしておりました。

どうやらこちらでは、労働法の縛りが厳しく、労働組合の力が強いようです。解雇するには、その社員の業績や生産性が、採用時に提示された水準に及んでいなかったことを数字などで証明できるようにしておかなければなりません。赴任して知った現実です。

一方、自分自身の立場は、いやでもパフォーマンスを要求されていることを痛感します。実力がはっきりと試されているからです。日本にいれば、自己完結する仕事は少なく、何か失敗があっても「この人だけのせいではない」と許されがちな部分もあるのですが、海外では自己完結する種類の業務が多く、何か失敗すると、すべて駐在員の責任となることが多いように思います。例えば、対人関係が上手でないと、得られる情報量が明らかに減るし、取引相手に言うことを聞いてもらえなくなったら、ビジネスは成り立たなくなるわけです。そうなると、本社としては、その駐在員を異動させるしかなくなります。冷酷なようですが、企業としてビジネスをしている以上、仕方のないことなのかもしれません。

自社の経営陣と接触する機会が増える

このポジションで得していると思うのは、自社の経営幹部と直接話ができることです。経営幹部がオーストラリアに出張してくるたびに、私がアテンド(対応)するわけですが、数日間、一緒に行動することで、一社員と企業幹部以上の親しさが生まれます。そうすると、業務上の案件を経営陣に報告するような際も、「お、お前か。元気か?」と覚えていてくれて、話の通りが良くなりますし、私が日本の本社に出張した際も、エレベーターなどに乗り合わせれば、「おう。これから飲みに行くか?」と誘ってくれて、ごちそうしてくれたりします。他社の駐在員の中には、幹部の出張時のアテンドで能力を認められ、本社の経営企画部メンバーや秘書に抜擢(ばってき)された人もいますから、海外駐在には、そうしたチャンスもあるのだと感じます。

そしてこれはあまり大きな声で言えることではないのですが、どんなに偉い人でも、直(じか)に接することで、身近に感じることができることも、良い経験となっています。普通であれば緊張の極みに陥る経営陣との接触が、相手も人間であると再認識できるチャンスとなりますから(笑)。

海外駐在はいろいろな企業や役所との関係を作るチャンスでもあります。国内にいますと業界の外に出るチャンスはなかなかないのですが、海外だと日系・外資を問わず他業界の方といろいろな機会にご一緒するチャンスが多く、大変な刺激になります。役所との関係においては、大使館や当地の役所の方と接する機会もあり、国内ではなかなかお会いすることのない公務員の方との人間関係を築けるチャンスが多いのではないかと思います。私自身もできるだけ外の世界を見るように心がけています。

次回は、英語の勉強法や海外駐在への心構えなどについてお話しします。

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シドニーのビーチで「Nippers」というライフセービングのスクールに参加する子どもたち。夏になると沿岸部の子どものアクティビティとして週末に開催されている。砂浜に刺さっている棒は、ビーチフラッグのためのもの。

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週末には、シドニーのあちらこちらでフリーマーケットが開かれる。ここは「パディントン・マーケット」。シドニーのローカルマーケットの中では規模が大きくて有名。

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海辺のレストランでは、高層ビル群に沈む夕日を眺めながらグラスを傾ける楽しみも。 

構成/日笠由紀

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