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海外駐在員ライフ

Vol.336 【南アフリカ共和国編】第4の故郷となった南アフリカ共和国

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Reported by 南アフリカ★太郎
南アフリカ共和国のヨハネスブルクにある日系メーカーの現地法人に勤務。プライベートでは、日本人サークルのリーダーとして、日本人コミュニティーでの活動にも精を出している。

満員電車に揺られる東京よりも快適なヨハネスブルク

南アフリカの生活もだいぶ長くなり、永住権取得者を抜かせば在留邦人の中でも一番長い部類に入ってきた。中学・高校時代をイギリスで過ごした帰国子女ということもあり、もともと、海外駐在について抵抗は少なかった。しかも、東京にいた時は、満員電車で通学、通勤しなければならず、この世のものとは思えないストレスに押しつぶされそうになっていたので、今のヨハネスブルクでの車通勤が本当に快適に感じる。今では、「日本に帰る」とは言わずに、「日本に行ってくる」という表現をすることが多くなってきた。

 

ただし、ヨハネスブルクについては、インターネットを検索してもなかなかいい情報が見つからず、駐在の話が出た時は、ビビってしまったというのが正直なところだった。東京の満員電車に嫌気がさしていたので、そのおかげで「エイヤ!」と勢いがついてこちらに来られたのかもしれない。

 

これまでの私の話を聞いた皆さんは、ヨハネスブルクの生活には、危険や冒険、不便が満ちているように思えたかもしれない。しかし、一度慣れてしまうと、そうした数々の問題点にも少し愛着がわいてきてしまうのが不思議だ。もちろん、停電や断水などは困るが、「店が早く閉まる」といった多少の不便は、不必要な買い物が減り、経済的にも健康上でもメリットがあったりする。逆に日本にいる時の方が、「店が多過ぎる」「人が多過ぎる」「行き先に向かうのに、どこで何線に乗り換えたりしたらいいのかわからない」と不便さを感じてしまうようになってきている。

 

こうしてみると、私にとって、生まれ育った「東京」、中高時代を過ごした「イギリス」、社会人として仕事を始めた兵庫県の「尼崎」に次ぐ第4の故郷は、間違いなくここ南アフリカ共和国のヨハネスブルクと断言できる。

 

そういえば、食事についてあまり話していなかったので、軽く触れておこう。ヨハネスブルクであれば、イタリアンやフランス料理などの洋食はもちろん、中華料理、インド料理、タイ料理、日本料理など、さまざまな料理が食べられる。種類や品数は限られているものの、和食材も購入可能だ。納豆や豆腐は、韓国食材店でも入手できるが、売り切れてしまっていることもしばしば。しょうゆにいたっては、普通のスーパーでも購入できるので、日本食を作ることも可能だ。

 

とはいえ、南アフリカの特産といえば、なんといっても牛肉だ。牛ステーキ、それもフィレステーキは300グラムくらいのボリュームで普通に出てくる。量が多い割に日本の肉と比べて脂質が少ないので、軽く食べられてしまう。肉のうまみが素晴らしくクセになるので、ついつい同じ店に通ってしまうほどだ。タレでも焼いてくれるが、塩と胡椒で焼いてもらってマスタードだけつけて食べるのが私のお気に入りだ。ステーキ肉は普通のスーパーでも600グラム程度から熟成された肉が購入可能で、フライパンで弱火から中火でじっくり焼くと、とてもおいしい。現地の人々は、総じて「ブライ」と呼ばれるバーベキュー料理をこよなく愛しているので、彼らとバーベキューを囲んで語らう時間も楽しい。

 

薄切りの牛肉や豚肉も、冷凍であれば韓国食材店で入手が可能だ。生の薄切り肉は、「しゃぶしゃぶ用」「すき焼き用」などと事前に注文すれば、地元の肉屋さんで手に入れることもできる上、卵もフリーレンジ(放し飼い)のものであれば生で食べられるので、自宅ですき焼きを楽しむこともできる。

 

また、ケープタウンはワインの名産地として有名だ。かのナポレオンも愛した南アフリカ共和国のワインは、とにかく飲みやすいのが特徴だが、気をつけないと、ついつい飲み過ぎてしまう。

 

ヨハネスブルクは経済力があるからなのか、高地にもかかわらず、国産や輸入ものの生牡蠣(がき)が食べられる。日本人からすると少し不思議かもしれないが、南アフリカ人にとって牡蠣は夏場の食べ物らしく、暑い中、冷やした牡蠣をつるっと食べるのが通らしい。養殖の牡蠣もあるので、一年中いつでも食べられる。また、日本ではピザにくっついてくるタバスコが、生牡蠣に必ず付いてくるのも面白い。南アフリカ共和国では、ピザにタバスコという概念がまだ市民権を得られていないようで、生牡蠣以外ではタバスコの出番はまだない。こうしたことを目にすると、「タバスコはピザやスパゲティにかけるもの」という日本の“常識”など、マーケティングとそれにかかわる人々の努力の上に成り立っているだけのものだとつくづく感じる。

 

“日本”というブランドは通用しない

このように、南アフリカ共和国に来て強く感じるのは、日本での常識が通じないことだ。これまでアジアの国々に駐在してきた人に話を聞くと、アジアの常識も通じないらしい。海外では、相手が「外国人だから少し変わっているはず」と認識した上で付き合ってくれるため、こちらもそのように尊重されることに慣れている。だからこそ、そうした配慮を一切してくれない南アフリカ共和国では戸惑うのだ。“日本”というブランドが使えない世界で働くということがどれくらい難しいか、今までどれだけそのブランドに胡坐(あぐら)をかいてきたかを感じることができるのが、南アフリカ共和国という市場なのだろう。「日本製」と「高品質」がすぐには結び付かない市場なのだ。だからこそ、今まで「当たり前」と思い込んでいたことを疑うことができる。視野を広げるにはもってこいのフィールドだ。

 

また、相手が理解をしていないということは、あらためて日本について語る機会が増えるので、日本の良さも悪さも自分の頭で考えることができる。これも貴重な体験かもしれない。加えて、異邦人として海外で過ごすことは我慢の連続だ。一方で、日本人の代表として恥ずかしくない行動を取ることも求められる。周囲に日本人が少ないので、自然と自分で決断を下さなければならない範疇(はんちゅう)も増えてくるだろう。特に、日本人駐在員が比較的少ない当地では、自ら考えなければならないことが増えて、大いに鍛えられるだろう。

 

そして最後に。南アフリカ共和国に駐在する一番のメリットは、自らを変えざるを得なくなることではないだろうか? 人は生きている限り、環境の変化や自らの変化に対応しなければならない。今まで経験したことのないスポーツを試すときには、その前にストレッチや準備体操をして筋肉や関節をほぐしておく必要があるように、人生の変化に対応するには、自らを変える練習も大事だと思う。そういう意味でも、南アフリカ共和国は、自分の常識をアップデートしながら、社会人、国際人として生活を送ることのできる貴重な場所だと感じている。

 

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サファリパークの中には、利用客が宿泊できるロッジがパーク内に設けられているところも。ごくごく近い距離で施設内の動物と触れ合うことができる。

 

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ヨハネスブルクの日本食レストラン。すしとてんぷらを同時に味わうこともできる。

 

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日本人駐在員同士で集まり、カラオケで盛り上がることも。現地にいる日本人があまり多くないこともあり、日本人コミュニティ―の結びつきは固い。

 

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ヨハネスブルクのジャズバー。閉店時間の早いヨハネスブルクでも、ジャズクラブやバーなら夜通しプログラムが組まれており、ナイトライフを存分に楽しむことができる。

 

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ヨハネスブルクから約800キロメートルの距離にある都市ダーバン。ヨハネスブルクに次いで人口が多く、外港としても重要な機能を果たしている。

 

構成/日笠由紀

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