次世代据え置き型ゲーム機が相次ぎ登場。新たな収益源「有料ネットサービス」に注目を
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の『2013CESAゲーム白書』によると、2012年の国内外を合わせた家庭用ゲームハード総出荷額は8090億円(国内1756億円、海外6334億円)。11年(9265億円)より13パーセント減った。また、ピーク時の07年(2兆878億円)と比べると6割以上縮小したことになる。原因の一つとして挙げられるのが、スマートフォンの普及。SNSなどで提供され、手軽に楽しめる「ソーシャルゲーム」が流行したことで、多くのライト層ユーザーがゲーム専用機から離れてしまった。また、スマートフォンに時間とお金を奪われたことで、消費者がゲームに支出する金額も少なくなっているとみられる。
一方、明るい話題もある。13年11月、「PlayStation 4」(ソニー・コンピュータエンタテインメント)と、「Xbox One」(マイクロソフト)が相次いで発売された(ともに、日本での発売は14年に入ってから)。12年11月に発売されていた「Wii U」(任天堂)を含めると、これで大手3社の次世代据え置き型ゲーム機が出そろったことになる。このうち、PlayStation 4は欧州で大ヒット中。当初、14年3月期中の販売台数を500万台と見込んでいたが、同年2月時点で早くも530万台を突破した。期待ほど伸びなかった前世代機の「PlayStation 3」に比べると、好調な滑り出しを切ったと言える。一方、Wii UとXbox Oneは今のところ苦戦しているが、大ヒットゲームの出現などで販売台数が上向く可能性もあるだろう。
ゲーム機メーカーにとって収益の柱は、ゲーム機と、自社開発ゲームソフトの販売収入である。そして、これらに加えて新たな収益源となりつつあるのが、有料のネットサービスだ。ソニー・コンピュータエンタテインメントは、会員制ネットサービス「PlayStation Plus」を提供。マイクロソフトも、同種のサービス「Xbox Live」を提供している。ともに料金は年額50~60ドル程度で、ゲーム機メーカーにとって安定した収益をもたらしており、各社はこの分野の売り上げをさらに伸ばそうとしている。
有料ネットサービスや自社ゲームソフトの利用拡大を目指すには、ハードの販売台数を増やすことが不可欠だ。特に、1つのゲームを複数のゲーム機向けに開発する「マルチプラットフォーム化」が進行している今、ユーザーにとっていくつもゲーム機を持つ必要性は薄くなっている。例えば据え置き型ゲーム機なら、「PlayStation 4かXbox Oneのどちらかを持っていればいい」ということになりがちなのだ。そこで各社は、有力タイトルの投入、本体価格の値下げ、新たな遊び方の提案(下記参照)などによってゲーム機の魅力を高めようとしている。据え置き型ゲーム機と携帯型ゲーム機の連携も、焦点の一つ。ソニー・コンピュータエンタテインメントは、据え置き型のPlayStation 4と、携帯型のPS Vitaを販売。任天堂は据え置き型のWii Uと、携帯型のニンテンドー3DSなどを販売している。それぞれを連携させることで、魅力的な遊び方の提案が可能だ。
インディーズのクリエイターを支援する動きにも注目しておきたい。14年9月に幕張で開催される「東京ゲームショウ2014」では、ソニー・コンピュータエンタテインメントの支援によってインディーズゲームコーナーの出展料が無料になった。これにより、個人、あるいは小規模な独立系ゲーム開発会社が出展しやすい環境が整ったと言える。また、インディーズクリエイターを表彰するコンテストが開かれるなど、業界全体で支援しようとする機運が盛り上がっている。
押さえておこう <家庭用ゲーム機は新たな遊び方を提案している>
一般ユーザーがゲームで遊んでいる様子を動画配信サイトに流し、人気を呼ぶケースが増加。次世代型ゲーム機では、こうしたプレイ動画(ゲーム実況)を簡単に録画・配信できる仕組みを用意しているものもある。
ソニーが、PlayStation 4向けのゲーム用ゴーグル「プロジェクト・モーフィアス」を発表。広い視野でゲーム映像を楽しめたり、頭の動きに応じて画面が切り替わったりするなど、テレビよりもゲームに没頭しやすい環境が得られるという。
モーションセンサーやカメラを内蔵したゲームコントローラーを使ったゲームは、すでに一般化している。今後はさらに、ユーザーの表情を読み取ってゲーム中に反映したり、心拍数を確認して健康チェックに役立てたりする応用も進みそうだ。
このニュースだけは要チェック <大手3社以外が参入する動きもある>
・ラスベガスで開かれた見本市「CES 2014」で、新型ゲーム機「Steam Machine」が発表された。パソコン向けゲーム配信サービス「Steam」を提供する米バルブ・コーポレーションが開発した基本ソフト「SteamOS」が搭載。パソコン用ゲームをリビングルームのテレビで楽しめるようにするのがコンセプトだ。(2014年1月7日)
・ロサンゼルスで開かれた見本市「E3」で、大手PCメーカーのデルが、据え置き型ゲーム機「Alienware Alpha」を発表。基本ソフトはウインドウズ、ゲームはダウンロード購入して遊ぶスタイルで、ゲーム向けPCと家庭用ゲーム機の中間的な位置づけと言える。(2014年6月13日)
この業界とも深いつながりが <スマートフォンとの争いはますます熾烈に>
携帯電話メーカー
スマートフォン向けゲームとのユーザーの奪い合いは、今後、さらに激化しそう
電子機器
モーションセンサーなどの進化が、ゲームの新たな楽しみ方を生むケースもある
デジタル家電
ゲーム機を使って映像を見たり、家電製品の操作を行ったりする試みが活発に
この業界の指南役
日本総合研究所 副主任研究員 粟田 輝氏
慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。
取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか