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掲載日:2013年2月25日

Vol.162 携帯電話メーカー編

アップルなどに押されて日本メーカーの存在感は低下。独自の強みを生かした海外展開が巻き返しのカギ

世界のスマートフォン市場では、アップルとサムスン電子が「2強」。これらに比べると、日本企業の存在感は非常に小さい。しかし、高齢者向け端末の世界市場投入などによって巻き返しを図ろうとする動きが表れている。

リサーチ・コンサルティング企業のMM総研によれば、2012年4〜9月における携帯電話端末の国内総出荷数は、前年同期比1.0パーセント増の2049万台。うち、スマートフォンは1422万台で、前年同期比で41.6パーセントの大幅増となった。総出荷台数に占めるスマートフォンの割合は約7割にも達しており、今後も増える見込み。携帯電話市場の主役は、従来型の携帯電話からスマートフォンに、完全に交代を果たしたと言えるだろう。

国内市場に限れば、日本メーカーもそれなりの売り上げを確保している。12年4〜9月の国内シェア1位はアップル(シェア22.3パーセント)だったが、2位に富士通(17.7パーセント)、3位にシャープ(12.4パーセント)、4位にソニーモバイルコミュニケーションズ(9.9パーセント)と日本メーカーが続いた。だが、グローバルな視点で見ると、日本メーカーの存在感は小さい。アメリカの市場調査会社であるIDCによれば、12年における携帯電話の世界出荷台数トップ5は、サムスン電子(韓国)、ノキア(フィンランド)、アップル(米国)、中興通訊(中国)、LGエレクトロニクス(韓国)。日本の各メーカーは、3パーセント程度以下のシェアしか得られていない。

日本メーカーが苦境に陥っているのは、スマートフォンの開発競争に出遅れたからだ。これまで日本では、メーカーが通信事業者から要望を受け、1年程度かけて日本のユーザー向けに高度に作り込んだ端末を開発。それを通信事業者が大量に買い取る、いわば「護送船団方式」とでも呼ぶべきやり方をとってきた。だが、この1、2年で、スマートフォンへのシフトが急速に進行するとともに、携帯電話端末市場がグローバルを前提とした競争環境に変化した。こうした動きに、「護送船団方式」に慣れ、同時に、経営資源を従来型携帯電話とスマートフォンに分散していた日本メーカーはついて行けず、海外市場で通用する商品を育てられなかった。

一方、日本企業にとって強力なライバルであるアップルやサムスン電子は、スマートフォンに経営資源を集中。さらに、グローバル展開を前提として端末を開発している。そのため、両社の生産数は日本メーカーの数倍〜十数倍に上り、コスト競争力や開発力の面で優位に立っている。また、通信事業者が国外メーカーの端末を積極的に採用し始めたことも、日本メーカーが苦境に陥る原因のひとつだ。

こうした中、日本メーカーも巻き返しを目指している。例えば富士通は、「らくらくスマートフォン」などを武器に、海外市場に本格進出すると発表(下記ニュース記事参照)。現在、年800万台の販売台数を、14年までに1000万台まで伸ばす目標だ。また、ソニーは11年10月、エリクソン(スウェーデン)が保有していたソニー・エリクソン株を取得。自社の100パーセント子会社とした(現ソニーモバイルコミュニケーションズ)。そして、スマートフォンと、ソニー製のタブレット・テレビ・パソコンなどをネットワーク経由で連携させることで、サービスの強化を目指している。このように、海外勢にない強みで差別化を図ることが、グローバル市場におけるシェア拡大のカギを握るだろう。

今後は、通信事業者との関係見直しが進みそう。要望された仕様に合わせて端末を開発するのではなく、端末メーカーとしての独自性を打ち出す取り組みが盛んになるだろう。また、中長期的な事業再編が起こる可能性も大きい。10年6月にはNECの携帯電話部門とカシオ日立モバイルコミュニケーションズが経営統合し、「NECカシオモバイルコミュニケーションズ」が創立。同年10月には富士通と東芝の携帯電話事業が統合されて「富士通東芝モバイルコミュニケーションズ(現富士通モバイルコミュニケーションズ)」が誕生した。iPhoneなどの海外勢に押されたままの状況が続くようなら、さらなる再編劇も十分にあり得るだろう。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

携帯電話業界のトピックスを整理しよう

タブレット端末の販売増 MM総研によれば、12年4〜9月における国内タブレット端末の出荷台数は、前年同期比で82.1パーセント増の193万台。今後も拡大が予測されており、富士通、NECカシオモバイルコミュニケーションズなどが力を入れている。
半導体開発・販売会社の設立 12年8月、富士通、NTTドコモ、NEC、富士通セミコンダクターの4社が、携帯電話向け半導体の開発・販売を手がける新会社を設立すると発表。半導体メーカーのクアルコム社に対抗するため、日本メーカーが連携を果たした。
iPhoneの優勢が続く ソフトバンクモバイルがiPhoneの販売を始めたのは、08年7月。11年10月にはau(KDDI)からも販売されるようになった。端末が魅力的なだけでなく、料金面でも優遇措置がとられているため、国内メーカーのスマートフォンは苦戦を強いられている。

【このニュースだけは要チェック!】

海外進出は各社にとって大きな課題

・富士通が、13年中に海外のスマートフォン市場に参入すると発表。高齢者や初心者でも扱いやすい「らくらくスマートフォン」など、使いやすさや高性能に強みのある商品を押し立て、同社としては初めての海外本格進出に乗り出す。(2012年12月28日)

・シャープ製の人気スマートフォン「SH-09D」が、発売後1カ月で販売中止に追い込まれた。スマートフォンの爆発的普及でクアルコム製の半導体チップが品薄となる中、サムスン電子などの大手が優先的に供給を受け、シェアの小さな日本メーカーがあおりを食らったのが原因だろうと言われている。(2012年8月1日)

この業界の指南役
日本総合研究所 副主任研究員 山浦康史氏
日本総合研究所 副主任研究員 山浦康史氏
慶應義塾大学大学院工学系研究科修士課程修了。通信・メディア・テクノロジー分野を中心としたさまざまな業界における経営戦略・計画策定、事業性評価、新規事業展開支援、R&D戦略策定支援などのコンサルティングに従事している。
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取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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