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掲載日:2012年11月12日

Vol.151 デジタル家電編

液晶テレビが失速。「ネット融合」など付加価値アップと、業務提携などを通じたスケールメリット追求が回復への鍵

スマートフォン・携帯電話内蔵のカメラに押されがちだったデジタルカメラだが、ネットとの融合で再び存在感を発揮。プリンターにデータを直接送信してプリント、テレビに送信してスライドショー再生など、無線LANを活用した新製品が相次いで人気を博している。

ここでは、液晶・プラズマテレビなどの薄型テレビ、DVD・ブルーレイ・ハードディスクレコーダー、デジタルカメラ、携帯オーディオプレイヤーなど、ハイテク技術が使われている家庭用電化製品について解説する。

2010年のデジタル家電市場は活況だった。特に好調だったのが、国内で地上デジタル放送(地デジ)への切り替えと、「エコポイント制度」という強力な追い風を得た薄型テレビ。これに引っ張られ、DVD・ブルーレイ・ハードディスクレコーダーも販売台数を伸ばしていた。ところがこうした傾向は、エコポイント制度が終了し、地デジ切り替え需要も一段落した11年に入って一変。社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、10年の薄型テレビ国内出荷台数は2519万台。しかし、11年には1983万台に急減してしまった。そして12年になると、落ち込みの幅はさらに深刻化。1月から9月までの販売台数は、対前年同期に比べて71.5パーセント減の469万台だった。販売増が期待されていたロンドン五輪直前の「夏商戦」期も、5月が対前年比74.6パーセント減、6月が80.3パーセント減、7月が84.7パーセント減という危機的な水準にとどまっている。

急激に冷え込んだ国内市場に対し、薄型テレビの世界市場は緩やかに成長中だ。ところが、サムスン電子やLGエレクトロニクスといった韓国企業にシェアを削られ、日本メーカーは苦戦を強いられているのが現状。さらに、競争の激化による単価の急落も、各社に追い打ちを掛けている。ライバルは韓国メーカーだけではない。パソコンやタブレット端末、アップル社の「Apple TV」やグーグル社の「Nexus Q」のようにネットワーク経由で配信された映像を見るタイプの新製品も、テレビにとって強力な競合となりつつあるのだ。その結果、パナソニック、ソニー、シャープというデジタル家電中心の大手電機メーカーは業績が悪化。経営戦略の見直しや、一層のコストダウンなどを迫られている。

これに対し、デジタルカメラの分野は堅調だ。社団法人カメラ映像機器工業会の「2012年カメラ等品目別出荷見通し」によれば、12年のデジタルカメラ出荷台数は、対前年比1.6パーセント増の1億1730万台と予測。特に、「ミラーレス一眼カメラ」(被写体をのぞき見る「光学ファインダー」を排し、液晶ディスプレイなどで被写体を確認するカメラのこと)などレンズ交換式のカメラは、17.6パーセントという高い伸びが予想されている。また、無線LAN機器も成長が続いている分野の一つだ。

今後のデジタル家電業界では、価格競争に陥りやすい汎用品で勝負するのではなく、付加価値性の高い製品を提案することが、いっそう求められるだろう。例えば、デジタルカメラの分野では、無線LANを通じて写真をスマートフォンやテレビに送信してスライドショーを楽しんだり、プリンターと無線接続して直接印刷できたりする機種が人気。このような「ネットとの融合」は、模索すべき方向性の一つと言える。一方、スケールメリットを目指して合併・業務提携を行う動きにも注目だ。11年8月、官民出資の統合ファンドである「産業革新機構」が旗振り役となって、ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業が統合されることで基本合意。ジャパンディスプレイという合弁会社が成立し、12年4月に事業を開始した。このような「日本連合」結成や、外国企業と手を組む動きにも注目が必要だ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

デジタル家電業界志望者が知っておきたいキーワードとは

セットトップボックス STBと略されることもある。ケーブルテレビ放送や衛星放送、IP放送などを受信し、接続したテレビで見られるようにする装置。映画やスポーツ番組、YouTubeなどの映像が見られるアップル社の「Apple TV」は、セットトップボックスの一例。
IEEE802.11ac規格 無線LANの次世代規格。1Gbps(1秒間に1ギガビットのデータをやりとりすること)を超える通信速度を実現する。現在主流である「IEEE 802.11n」の後継となる規格で、現行の数倍のスピードが出るとされている。
スマートテレビ インターネットを閲覧できるだけでなく、ネットサービスと完全融合してアプリなどを追加できる仕組みのテレビ。Android OSを組み込んだ「Google TV」などが代表格で、他のメーカーも続々と開発を進めていると言われる。

【このニュースだけは要チェック!】

シャープを巡る報道に注視が必要

・Google初の家電製品と言われるメディアプレイヤー「Nexus Q」が、機能追加などを理由に発売延期された。こうした新製品は、従来型HDDレコーダーなどの強力なライバルとなり得る。日本企業にも、新たな魅力を持つ機器の開発が急がれる。(2012年7月31日)

・シャープが、半導体大手のインテルと資本提携に向けた交渉を進めていると報道された。シャープは12年3月、台湾の鴻海グループと業務提携を進めると発表していたが、同社の株価急落などが影響して先行きは不透明な状況。今後の動きに注視が必要だ。(2012年9月20日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 粟田 輝氏
日本総合研究所 研究員 粟田 輝氏
慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。
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取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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