スーパー編・2017年【業界トレンド】

各社はアジアへの進出、PB商品の拡充などで生き残りを図る。業界再編の動きにも注目

スーパーは、幅広い商品を扱う総合スーパー(GMS/General Merchandise Store)と、食品などの分野に特化した専門スーパーに大別される。この業界では、イオングループとセブン&アイ・ホールディングスが「2強」と言われる。イオングループは、傘下に総合スーパーのイオンリテールや食品スーパーのマックスバリュなどがあり、セブン&アイ・ホールディングスは、傘下に総合スーパーのイトーヨーカ堂や食品スーパーのヨークマートなどを抱える。また、中国地方のイズミ、関西地方のイズミヤなど、特定の地域で存在感を発揮する企業も存在する。

日本チェーンストア協会の「チェーンストア販売概況」によると、1997年における同協会会員企業の総販売額は16兆8636億円。しかし、その後は長期低落傾向が続き、2010年には12兆3556億円にまで落ち込んだ。13年以降は景気回復などが追い風となり、3年連続で総販売額は伸びたが、16年は前年(13兆1683億円)より1パーセント減の13兆426億円と、再び減少に転じている。

スーパーの主な販売品目は、「食料品」、「衣料品」、「住関品」(日用雑貨品・医薬品・化粧品・家具・家電製品などが含まれる)などに大別できる。「チェーンストア販売概況」によれば、16年の「食料品」販売額は8兆5077億円(総販売額の65パーセント)、「衣料品」は1兆1117億円(同9パーセント)、「住関品」は2兆6202億円(同20パーセント)だった。06年は、「食料品」が総販売額の60パーセント、「衣料品」が13パーセント、「住関品」が20パーセントという比率だったため、衣料品の落ち込みが目立つ。背景にあるのは、ユニクロやしまむらといった衣料品専門チェーンの拡大だ。

日本では今後、人口減少が予測される。また、衣料品専門チェーンだけでなく、コンビニやドラッグストアといったほかの小売業や、amazonをはじめとするネット通販サイトなど新たなライバルとの競争も激しさを増すだろう。こうした状況の中、国内各社は勝ち残りのための手を打っている。

まずは、中間所得層の拡大が進む中国やASEANへの海外展開だ。例えばイオングループは、中国とASEANにおいて14年度に4店舗、15年度には8店舗の新規出店を果たし、今後もこのエリアへの出店を進める予定。ほかのスーパーがアジア進出を加速する可能性も、十分に考えられるだろう。また、「オムニチャネル」(下記キーワード参照)に注力することで勝ち残りを目指すところもある。セブン&アイ・ホールディングスは、17年度から始まる3カ年計画の中で、「新・オムニチャネル戦略」を打ち出した。これは、スーパーやコンビニの実店舗とネット通販サイト「オムニ7」を連携させ、それぞれの購買情報を一元管理することで、顧客一人ひとりの好みに合った販促を実施するなどの狙いがある。

PB(プライベートブランド。小売業者が企画し、メーカーに生産を依頼した独自ブランドのこと)商品の強化による利益拡大も、継続的に取り組まれている課題だ。例えばイオングループは、PB「トップバリュ」を顧客のライフスタイルに合わせて刷新。高品質な「トップバリュセレクト」、安心品質を手ごろな価格で提供する「トップバリュ」、低価格帯の「トップバリュベストプライス」の3ブランドを用意して、多様化する顧客ニーズに対応する方針を掲げた。また、前述のアジア進出に合わせ、「トップバリュ」の東南アジア向け商品にも注力している。一方、西友ではPBブランド「みなさまのお墨付き」のリニューアルに力を入れており、16年から17年にかけ、100品目の品質向上・価格引き下げを進めている(下記ニュース参照)。

経営の効率化や購買力(バイイングパワー。大量に商品を仕入れる企業は、メーカーなどに対して『たくさん買うから、商品の単価を安くして欲しい』と交渉を持ちかけることがある。このように、大量仕入れを前提として交渉を有利に運ぶ力を『購買力』と呼ぶことがある)の強化を目指し、M&Aによる規模の拡大や、業務提携を行う企業もある。16年9月には、ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスが経営統合し、新会社「ユニー・ファミリーマートホールディングス」が発足した。今後は、ファミリーマートの流通網と経営資源を活用しながら、事業の改革を目指す。同年10月には、セブン&アイ・ホールディングスと、阪急百貨店、阪神百貨店、食品スーパーのイズミヤを展開するエイチ・ツー・オーリテイリングが、関西エリア強化を目指した資本業務提携を発表した。今後も、業界再編の動きには注目したい。

スーパー業界志望者が知っておきたいキーワード

オムニチャネル
実店舗などの「リアルチャネル」や、ネット通販サイトやモバイル機器向けアプリなどの「インターネットチャネル」など、あらゆる流通チャネルを統合すること。セブン&アイ・ホールディングスの取り組みに象徴されるように、購買情報を一元管理して相乗効果を目指すケースが増えている。

ドミナント戦略
特定地域で店舗を集中的に出店すること。商品配送や広告宣伝費などの効率を高めることで、地域内でのシェアを拡大するのが狙いだ。山梨のスーパー公正屋をはじめとする地方のGMSでは、ドミナント戦略を強化するところが目に付く。

新業態スーパー
新たな顧客層を開拓するため、新業態の開発に取り組むスーパーもある。16年には、ライフコーポレーションが有機食品や地域の農産物を充実させた新業態スーパー「ビオラル」を、イオンリテールがデパ地下のように惣菜を中心とした品ぞろえの新業態スーパー「DELACO(デラコ)」をオープンした。

このニュースだけは要チェック <PB商品の拡充で消費者にアピール>

・西友が2016~17年にかけ、PB「みなさまのお墨付き」において100品目のリニューアル商品を投入すると発表。品質を向上させながら、価格の引き下げを実現しているという。消費者の反応に合わせ、商品を短いサイクルで改善することで売り上げ拡大を目指している。(2016年5月19日)

・イオングループのPB「トップバリュ」より、卵・乳・小麦・落花生・そば・えび・かにが使われていないホワイトソースやカレールー、ミックス粉、パスタなどが発売された。家族の中に食物アレルギーを持つ人々が、安心して食べられることがコンセプト。特定のターゲットに向けたPB商品は、今後も広がる可能性がある。(2016年11月15日)

この業界とも深いつながりが <オムニチャネル戦略などを通じ、IT系企業と協力>

IT(情報システム系)
ネット販売サイトやオムニチャネル強化などの分野で協力するケースが増えそう

総合商社
大手スーパーの中には、資本面で総合商社と提携関係にあるところもある

アパレル
大手衣料品専門チェーンに押され、スーパーの衣料品部門の売り上げは減少

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門成長戦略グループ コンサルタント
堀内くるみ氏

horiuchi_sama

ケンブリッジ大学大学院化学工学科修士課程修了。企業のビジョン作り、経営戦略・事業戦略策定支援、マーケティング戦略策定支援などのコンサルティングを中心に活動。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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