新卒での就職活動は、順調に内定を獲得する人もいる一方で、選考に落ち続けてなかなか先に進めない人もいます。選考に落ち続ける人の中には「大企業ばかりに応募していて、気がついたら全滅…」という人も少なくないようです。どのように視点を切り替え、今後の就職戦線を走り切ればいいのか?“採用のプロ”曽和さんに教えてもらいました。
目次
大企業志向で就活がうまくいかない人の「視点の切り替え方」
就活がうまくいかない、まだ志望の企業から内定がもらえないと悩んでいる就活生に話を聞いてみると人気企業、大企業ばかりに応募しているケースが少なくありません。今は空前の売り手市場とはいうものの、大企業に絞って言えば、そもそも志望者数自体が多いため、景況感にかかわらず、毎年、非常に競争率は高くなっています。
もし、あなたがこれまでに受けた企業が競争率の高い大企業ばかりならば、落ちた事実ばかりを嘆いて自信を失うことはありません。あなたを待っている企業は必ずあります。視点を切り替え、巻き返しを図りましょう。
立て続けに落ち、すっかり自信をなくしているならば、まずは「自信を回復する」ことが先決です。
自信を回復する手段の一つとして、大手に比べて相対的に受かりやすい中小、ベンチャーに目を向ける方法があります。内定が出れば自信につながり、就活を続ける意欲も生まれるでしょう。もちろん、いいご縁に巡り合える可能性だってあります。
でも、「どうしても大企業がいい」という場合は、次のような視点で応募先を探してみてはどうでしょう?
「大企業の穴場」であるBtoB企業に目を向けよう
特に文系の人は、知名度が高くなじみもあるBtoC企業ばかりに注目しがちですが、グローバル市場でトップシェアを持つBtoB企業は多いのです。そして、大企業でありながらもBtoC企業に比べて知名度が低いため、募集期間も長い傾向にあります。そういうところを洗い出してみるといいでしょう。
BtoB企業はものづくり系企業が大半なので、技術職の採用数は多いのですが、文系職種の採用は少数精鋭であるケースが多いのが特徴。入社できれば、大企業にもかかわらず早くから大きい仕事にかかわれる可能性もあります。
「地方の大企業」「郊外に本社がある大企業」にも要注目
「大手」という軸が譲れないならば、地方に本社がある大企業に目を向けるという手もあります。
地方にある大企業の大半は、これまでは地元大学からの志望者を囲い込めていたため、採用に困ることはありませんでした。しかし、ここ数年の売り手市場を受け、都心の大手企業がどんどん地方採用を強化しており、学生の取り合いに。そこで、母数を確保するためUターン学生を狙う動きが高まっています。地方出身者は、地元の大手企業も選択肢に入れてみては?
地方まで行かずとも、「本社が郊外」というだけで、大手でも競争率は下がります。例えば、東京都下や横浜以外の神奈川、埼玉、千葉など。電車ですぐの距離なのに「郊外」というイメージだけで志望から外している人が多いので要注目です。
大企業の中でも特に「採用数が多い企業」を調べる
大企業の中でも採用数はまちまち。数十人のところもあれば、数百人のところも。採用数が多いところを調べ、そこに当たるのは有効策です。
上場企業であれば、新聞や就職四季報などで予定採用数が公開されているはず。どうしても大企業がいいならば、採用数が多い企業に当たれば、必然的に競争率は下がり、内定獲得の可能性も高まります。
就活がうまくいかない時の挽回法―大企業の初期選考を突破するテクニック
次に、いわゆる大手企業の選考通過率を高めるための工夫もお伝えしておきましょう。
当然ながら、人気企業ほど大量の志望者が集まります。時には数十人の採用枠に、数万人の応募が集まるケースもあるほどです。必然的に、初期選考のための人手が必要になり、企業は社内の各部署から「面接の素人」を大量に動員することになります。
その「面接の素人」を攻略する方法を知っているかどうかで、初期選考通過率は大きく変わります。
皆さんは「面接は、面接官との会話のキャッチボールが大切」と言われてきたと思います。実際、面接経験が豊富な「選考のプロ」は、何度も質問を投げて応募者の返し方をチェックし、志望動機やその人の個性、強みなどを深掘りしていきます。
しかし、「面接の素人」が面接官となる初期選考においては、そのルールは通用しません。先方には話を引き出すテクニックがないので、相手の発言に対して質問することはほとんどありません。従って、学生側が質問されるのを前提に情報を小出しにしていると、自分の言いたいことを伝えられないうちに時間切れになってしまう可能性が大。少なくとも一次面接などの初期選考においては、会話のキャッチボールではなく「プレゼンテーションをする場」と捉え、情報を小出しにせず、自分自身を前面に出してアピールする方が有効です。
就活がうまくいかない原因は、そもそも「大手適性」がないからでは?
ところで、そもそもあなたはどうして「大企業がいい」のでしょうか?
もちろん、大企業には魅力的な要素がたくさんあります。しかし、大企業を志望している人が、必ずしも大企業に向いているとは限りません。人がそれぞれに持つ「個性」や「持ち味」らを考えると、実は「大手適性」がない、という人も意外に多いのです。
就活がなかなか思い通りに進まない…という人には、以下の観点で自分を見つめ直し、「自分自身の大手適性」を確認してみることをお勧めします。
<観点1>役割分担された狭く深い業務と、多様で幅広い業務、どちらが好きか
多くの大手企業は、業務が分業化されています。例えば人事であれば、採用担当、労務担当、教育担当など明確に役割分担がされています。一人当たりの担当領域が決められているので、入社後に待っているキャリアは「ある一部分のスペシャリスト」であるケースがほとんど。いろいろな業務を幅広く経験したいならば、大手ではなく、中小やベンチャーの方が向いています。
<観点2>競争が好きか
大企業は採用人数が多いですが、その分、入社後の競争も激しくなります。やりたい仕事を得るため、就きたいポジションを得るためには、入社後にも厳しい競争に勝ち続ける必要があります。競争が苦手な人は、大企業向きではないかもしれません。
もちろん、大企業の中で競争から降りてノンビリ生きていく選択肢もありますが、事業の中核ではない業務の多くは、ゆくゆくAIに取って代わられる可能性が高く、これからの時代を考えると賢い選択とは言えません。
<観点3>所属している組織への忠誠心が強いか、有名企業に属していることに何よりの喜びを感じるタイプか
多くの業務が分業化されている大企業においては、自分の働きが会社や組織にどう影響を及ぼしているのか、実感しにくいという側面があります。「自分はこの会社の成長を担っている」という実感を持って働きたいという人は、大企業でモチベーションを得るのは難しいかもしれません。
一方で、「誰もが知っている大企業に属している」こと自体に何よりのモチベーションを感じる人にとっては、大企業はうってつけだと思われます。勤務先の業績が大きく傾いたり、企業イメージが失墜したりするような出来事が起こらない限り、モチベーション高く働き続けられるでしょう。
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隠れた優良企業は、まだまだある!これからやってくるチャンスを逃さない!
大企業の採用が一巡する時期をみはからって、「大手に落ちた学生の中から、わが社に合う人を採用しよう」という意欲のある企業が、本腰を入れて動き始めます。引き続き、就職活動は活発に行われていますし、隠れた優良企業に出会える可能性は大。視点を変えたり、視野を広げたりしながら、自分に合う1社を探しに行きましょう。
取材・文/伊藤理子
撮影/刑部友康
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