企業が「採用を見送る理由」を面接準備に生かすには?【実際の理由をもとにアドバイス】

面接に落ち続けているけれど、理由がわからない…と悩む学生は少なくありません。企業から直接フィードバックを得るのは難しいですが、一般的に企業が採用を見送る理由にはどんなものが多いのかわかれば、参考にできそうです。

就職支援サービス「リクナビ就職エージェント」経由の面接では、学生が希望し、かつ企業の協力を得られれば、面接の結果にかかわらず、その理由のフィードバックをもらうことができます。そこで今回は、キャリアアドバイザーに採用を見送る理由で多いものは何か、それをどう生かせばいいのか、解説してもらいました。その理由を基に、自身の面接を見直した先輩の事例も紹介します。

プロフィール中谷美穂(なかたに・みほ)
リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。航空会社勤務から2016年4月に株式会社リクルートキャリア(株式会社リクルート)に転職し、以来主に理系学生の就職支援を担当。学生一人ひとりの強みを引き出し、納得度の高い就職ができるようサポートしている。

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企業が採用を見送る、よくある3つの理由とは?

企業からのフィードバックを整理すると、採用を見送る理由としては大きく3つあります。面接に落ち続けている…という人は、心当たりがないか、ぜひ振り返ってみてください。

「なぜ当社なのか?」が伝わってこない

「業界や職種への意欲は伝わったけれど、当社である理由がわからなかった」という理由はよく耳にします。志望動機が同業他社にも使い回しできるような内容だったり、入社後にその企業で何をしたいのかがイメージできていなかったりするケースが多いようです。

これはひとえに、企業研究の浅さが原因。応募企業の業務内容、企業理念、事業展望、求める人材像などを理解し、自分の強み、やりたいこと、将来像などと照らし合わせて、自分と企業の接点を見つけることが大切。それが「この企業ならではの志望理由」になります。

関連記事:プロが教える!志望動機の書き方【例文あり】

コミュニケーションに不安を感じた

コミュニケーション能力を理由に挙げる企業も非常に多いです。具体的には、

  • ボソボソ話す、無言が多いなどスムーズな会話ができない
  • 簡潔に要点をまとめて伝えられていない、質問に対する回答がずれている

などが多く聞かれます。

これらは練習することでぐんと改善します。志望動機や自己PRなど想定される質問に対して、実際に声に出して回答してみましょう。鏡の前で自分の顔を見ながら練習したり、動画を撮って見返したりすると、自分の癖がわかり改善ポイントがつかめます。そして、何度も繰り返すことで回答に慣れ、スムーズに話せるようにもなります。

質問に対する回答のずれは、緊張のあまり相手の質問が正しく理解できていないことが主な理由。これも練習を重ねれば緊張が薄れるため、改善できる可能性があります。または、私のようなキャリアアドバイザーや、先輩・友人などを相手に模擬面接を行い、回答がずれている箇所があれば指摘してもらうのも方法です。

関連記事:面接で落ちる理由がわかりません。【面接中の無意識に出る癖(仕草や話し方)が与える印象とは?】就活なんでも相談室 Vol.12

オンライン面接(Web面接)での配慮が足りない

コロナ禍でオンラインによる選考が急増したことで、オンライン面接(Web面接)に関するマナーを指摘する声も目立っています。

例えば、背景に趣味のポスターが貼ってある、干しっ放しの洗濯物が映ってしまっている…などは実際にあったフィードバックです。自宅だから気が抜けてしまうのか、髪型や服装が乱れていたりするケースも少なくないようです。自宅とはいえ、面接の際には「採用選考の場である」という意識を持ち、対面での面接と同じように気を引き締めて臨むことが大切。また、背景に余計なものが映らないよう気を配ることで、会話そのものにも集中してもらえるように心がけましょう。

また、学生がつい、パソコンに搭載されているカメラではなく画面に映る採用担当者ばかりを見てしまうため、「下ばかり見ている(ように感じられる)学生が非常に多い」との指摘があります。もちろん、これだけで落ちることはありませんが、目線を合わせないことは、自信なさげに見えてしまいます。やりとりする際には、意識してカメラ位置に目線を向け、笑顔でハキハキ話すようにしましょう。

関連記事:【オンライン面接(Web面接)とは?】対面との違い、面接にあたっての準備、練習方法を解説!

落ちた理由を生かして内定につなげた先輩の事例紹介

企業からの落ちた理由を受け止め、やりとりや回答内容、立ち居振る舞いなどを振り返り改善した結果、満足のいく就活ができた先輩の事例を紹介します。似たような経験がある人もきっと多いはず。先輩の「落ちた理由の生かし方」をぜひ参考にしてみてください。

【事例1】「なぜこの業界なのか」が伝わらない

理系の大学院で生物学を専攻しているAさん。真面目で成績も良く、コミュニケーション能力もありますが、食品メーカーの研究開発職という、ごく限られた募集に絞って活動していたことから不採用が続いていました。
採用を見送った理由として多かったのは、「なぜ食品業界なのか、なぜ当社なのかが伝わってこない」というもの。Aさんに詳しく話を聞いてみると、就活の軸が明確ではなく、「今まで生物学を学んできたから」という理由だけで応募していたことが判明しました。

大切にしているポイントをひもとき視野を広げる

そこで、Aさんが大切にしているポイントをひもといたところ、食品そのものではなく「食を支えるような仕事に就きたい」という思いが強いことが判明。その思いを軸に志望動機を練り直したほか、食品メーカーだけでなく、製造機器などの精密機械や半導体など、間接的に食を支える業界にも視野を広げました。
また、「自身の視野が広がり活動範囲も広がる」という理由で英語の勉強に力を入れていることもわかり、「海外にも事業展開している企業」も条件に加えることになりました。

これらの結果、面接通過率がぐんと上がり、海外展開をしている半導体関連メーカーの研究開発職から内定を獲得。「納得感の強い就活ができた」との喜びの声が聞かれました。

【事例2】営業を志望する理由が伝わらない

いつも元気いっぱいな体育会系のBさん。「体育会経験を生かすならば営業職!営業だったらどんな業界でもいい!」といろいろな企業の営業職に応募しては玉砕していました。

そのはつらつとした元気さはどの企業からも高く評価されるのですが、採用を見送った理由を詳しく聞いてみると、「営業を志望する理由が具体的ではなく伝わらず、表面的に感じる」などの理由で落ちていることがわかりました。

「どんな」営業がいいのか自分の思いを掘り下げ、言語化できるように

そこで、「なぜ営業なのか」を深掘りすることに。営業といっても、新規開拓もあれば提案営業、ルート営業などさまざまな形態があり、有形商品を売るのか、サービスなど無形のものを売るのか、法人相手か個人相手かでも異なります。どんな営業がしたいのか具体的に掘り下げていったところ、学生時代に行っていたレンタカー店のアルバイトで、「お客さまに使い方や注意点などをわかりやすく教えることにやりがいを覚えていた」ことが判明。そこから、顧客の課題やニーズ、思いに寄り添うことができる提案営業やルート営業に絞り、「顧客に寄り添う」を軸に志望動機をブラッシュアップしていきました。

自身の思いが言語化でき、営業という仕事への理解も深まったことで面接もスムーズに進むようになり、精密機器メーカーのルート営業職に入社を決めました。

【事例3】威圧的でとがっている

自分なりに戦略を立て、準備を重ねてから面接に臨んでいるのに、なぜか落ち続けていたCさん。企業に採用を見送った理由を聞くと、「威圧的でとがっている」「協調性がなく、自分ばかり目立とうとする印象」というフィードバックがありました。しかし、普段のCさんは穏やかで人当たりも良く、落ちた理由とは真逆の印象。驚いて本人に詳しく聞いてみました。

思い込みで自分を武装するのは逆効果、「持ち味」を生かす大切さに気づく

すると、Cさんは「面接では自分を強く前面に押し出さないと通過しない」と思い込んでいたとのこと。ほかの学生よりも少しでも目立とうと、わざととがった発言をしていたそうです。

Cさんには、自身の思い込みによるそれらの行動が、結果的に逆効果になっていたこと、そして変に飾ろうとせず、自分の持ち味を生かすことの大切さを伝え、模擬面接を重ねて軌道修正。現在まだ就活中ですが、肩の力を抜き自分らしさを出すことで、通過率も上がっています。

自分で「落ちる理由」をつかむ方法はある?

これまでに、実際に対面でアドバイスしてきた学生の事例を紹介しましたが、キャリアアドバイザーに相談しなくても、落ちる理由を自分でつかむ方法はあります。

例えば、「リクナビ就職エージェント」経由ではない場合、自分の人となりを知っている社会人に相談してみましょう。どんな質問に対してどう答えたのかなどを聞いてもらい、一緒に面接を振りかえることで、的を射た指摘がもらえそうです。

その上で、指摘をもらった部分について、どうすれば改善できるか考えてみましょう。例えば、「回答に具体性がない」という指摘であれば、回答内容をより深く掘り下げてみる、エピソードを交えて聞き手がイメージしやすくするなど、どうすれば具体的に語れるのかを検討してみるといいでしょう。

面接での課題を認識してやりとりをブラッシュアップしていこう

企業の「採用を見送った理由」を知って落ち込んだり、自分を責めてしまったりする人が見受けられますが、落ちる理由は次の面接に生かせる有益な情報です。「面接における自分の課題は何か、認識することができた」と前向きに捉え、次の面接に生かしてほしいですね。

面接準備を行い、実践し、課題をつかんで改善する…という計画(Plan)、実行(Do)、振り返る(See)のPDSサイクルを回すことで、面接の精度は上がり、内定もぐんと近づきます。リクナビ就職エージェントでは、採用を見送った理由のフィードバックだけでなく、このPDSを回すサポートも行っていますので、ぜひ活用してほしいと思います。

理由がわからない場合も、面接を受けたら、その内容を振り返ることを習慣づけるといいでしょう。答えにくいと感じた質問にどう返したのか、より自分をアピールするにはどう答えれば良かったのかなどを振り返ることで、面接でのやりとりをブラッシュアップすることができますよ。

取材・文・編集/伊藤理子


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