今回はメキシコの、標高約2300メートルにある首都、メキシコシティでの生活について紹介します。高地での暮らしは、日本での暮らしとどう異なるのでしょうか。駐在員の目から、その暮らしを紹介します。
高地での生活は日本と大違い
こんにちは。アガベです。今回は、高地メキシコシティでの人々の暮らしについてお話しします。
私の住む首都メキシコシティは、標高約2300メートルという高地に位置しています。こうした環境が私たちの生活に及ぼす影響には、決して無視できないものがいくつかあります。
標高のせいで、日本より数段、お酒が回りやすい
そのひとつが、お酒が非常に回りやすいこと。標高約2300メートルでの飲酒は、飛行機に乗っているときに飲むのと同じで、とても回りやすく、日本と同じ調子で飲んでいると後で大変な目に遭います。私の経験では、日本で飲む量の半分くらいの量でひどく酔ってしまったり、二日酔いになったりするのです。
毎日がまるで高地トレーニングをしているかのような環境
空気が薄いせいで頭痛にもなりやすく、脈も速くなりがちで動悸(どうき)も起こります。急激な運動をするのはもちろんのこと、1階から3階まで階段を上がるだけでも、胸が苦しくなるほど。まさに毎日が高地トレーニング状態なのですが、暮らしているうちに徐々に慣れ、最近はジョギング程度ならできるようになりました。日本でもランニングは人気ですが、こちらの人もこんな高地だというのにやはり走るのが好きなようで、近所の公園などに行けば、いつでも走っている人を目にします。週末には市民マラソンもよく開催されています。
パスタをゆでるのも一苦労
また、気圧が低いために沸点が低くなり、パスタなどをゆでるのも難しいですね。低い温度で水が沸騰してしまうので、十分な温度でゆでることができないのです。そのため、こちらの日本人は、普通のお米にもち米を混ぜて炊いている人が多いと聞きます。そうすると、低温でも多少はふっくらと炊きあがるからです。とはいえ、やはりここで生活するためには、高地での調理に威力を発揮する圧力鍋がマストアイテムといえそうです。
こうした環境のためか、現地の人でも、定期的に低地に降りて身体を休めていると聞きます。もちろん、私たちも同様。やはり低地の方が夜もよく眠れるような気がしますね。「空気がおいしい」という言葉がリアルに響くのが、ここメキシコシティなのです。
メキシコは、お祭り大好き!上下関係なしの大騒ぎ
なお、お酒に関して言うと、普段、現地の社員と飲む機会は少ないのですが、クリスマスパーティーなどの特別な機会があれば、皆で飲んで踊って大騒ぎ。皆さん、お祭りが大好きなようです。メキシコは、ビールもおいしいのですが、何かあったらやっぱりテキーラ。日本でもおなじみのショットガン(ソーダとテキーラを混ぜたグラスを勢いよくテーブルに叩きつけて泡状にしてから飲むやり方)でガンガンやりながら飲んでいます。さらにはその後、周りの人たちに頭をグルグルと回されると、もう何がなんだかわからなくなります。
こんなときは、上司も部下もあったものではなく、私の頭を回すのも、同僚や部下たち。日本では、仕事帰りに会社の人と飲みに行くと、上司から「お前はそんなんだからダメなんだよ」などとからまれたりして、結局仕事の話になってしまいがちですが、こちらでは、終業後や休日に飲むときは完全にOFFの時間。プライベートなんだから、上下関係などないという認識です。仕事の場面では上下関係がきっちりしていて、上司の指示には従うという文化なだけに、こうしてONとOFFが切り替わるのは興味深いですね。
ランチはボリュームたっぷり。遅く始まり、長時間続く
ランチの時間は、早くて14時ごろ
メキシコに来て驚いたのは、食事の時間とボリューム。まず時間について言うと、日本のように12時に昼食がスタートすることはありません。早くて14時、遅い人だと15時といった具合です。日本人としては、ランチにありつける前に、お腹が空(す)いて大変なのですが、現地の人もそれは同じようで、皆さん、ちょいちょい間食をしています。ポテトチップスなどのスナック類をデスクでボリボリと食べている姿はよく見かけますし、大人なのに棒付きのキャンディーをなめながら仕事をしている人もいます。口からキャンディーの棒を突き出している女性社員を目にしたときの衝撃は、大変なものでした。私自身は、家から持ってきたパンや固形の栄養調整食品などで空腹を紛らわしていますが…。
2時間ほどかかるボリューム
ランチは、本式なものだと2時間くらいかかります。こちらでは、昼食が一日のメインの食事となり、時間をかけてゆっくり食事をとる人が多いためです。トルティーヤなどをつまみながら飲み物を飲み、それからメインディッシュへと進むので、ボリュームもかなりのものに。だからこそ、時間がかかるのでしょう。
会食はほとんどランチ
また、日本人との会食が夕食となるのに対して、メキシコ人との会食は、ほとんどがランチに。自動車通勤の人が多いのと、夜は家族と過ごすことを重視する人が多いためかと思われます。そのため、昼食も夕食も会食という日は、明らかに食べ過ぎになり、カロリーオーバーが心配になります。最近の流れとしては、朝食をしっかり食べながら打ち合わせをする「パワーブレックファスト」も見受けられるようになりました。
次回は、メキシコの社会についてお話しします。
メキシコ名物テキーラのボトルと美しく彩色された陶器製のテキーラグラス。
メキシコシティにあるレストランの前の通り。レストラン前には、街頭パフォーマンスや物売り、物乞いなどが続々と現れる。
メキシコの都市ケレタロの街並み。世界遺産に登録されている。
構成/日笠由紀