【IoT編】企業選びのプロが教えるキラリと光るビジネス

就活する中で多くの学生が迷う「業界選び」や「企業選び」。とはいえ、「行きたい業界や企業が決まっていない」「何を軸に選んだら良いかわからない」という人もいるのではないでしょうか。

そんな人向けに、就職情報サイトとは少し視点を変えて要注目のビジネスをご紹介するのがこの企画。「なんかはやっているけど、ビジネスとしての将来性はどうなんだろう?」「業界を横串でつないでいる新しいビジネスって、実際どうなの?」…など、ちょっと気になる、でもよくわからないビジネスを、シンクタンク・日本総合研究所の研究員がプロの目線で紹介します。

今回は「IoT」についてです。IoTってそもそも何?将来性はありそう?といったことに加え、企業の探し方もお聞きしました。ぜひ、参考にしてみましょう。

吉田賢哉氏プロフィール画像株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉(よしだ・けんや)

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

IoTって何?市場規模はどのくらい?

IoTのイメージ画像

IoTとはあらゆるモノをネットにつないで活用する取り組み

IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳されます。インターネットはもともと、コンピュータ同士を接続するためにつくられたのですが、そこにさまざまな電化製品や機械を接続して、より便利に使おうとするのがIoTです。

例えば、住宅のドアやトイレにセンサーを付け、インターネットに接続すると、ドアの開閉状況やトイレの利用状況などがわかります。すると、1人暮らしのお年寄りが元気かどうか確認したり、家族の体温や脈拍がどうなっているかチェックしたりすることが可能になります。そして異常な値が出たときは、安否確認などを行うことで病気や事故などに早期対応できるわけです。

オフィスなどでも応用が可能です。各フロアにセンサーを設置することで、建物内に人がいるか、温度や湿度がどの程度かなどを遠隔確認できます。すると、人がいないフロアのエアコンや照明を自動的に切ったりするなどして、省エネが実現できるでしょう。あるいは、工場の生産ラインにセンサーを付ければ、人が常時監視していなくても、機械のトラブルや製品の生産状況をいち早く知ることができます。そうすれば、トラブルに素早く対処することができますし、機械の稼働データを分析してトラブルの原因を見つけることで抜本的な対策も立てられるはずです。

2018年の国内市場規模は6.3兆円、2023年には11.8兆円と予想

IT専門の調査会社であるIDC Japanによれば、2018年における日本国内のIoT市場は6.3兆円。これが2023年には11.8兆円まで伸びると予想しています。また世界では、2018年に6460億ドル(約70.3兆円)だった市場規模が2019年には7450億ドル(81.1兆円)に達し、2022年には1兆ドル(108.9兆円)を超えると見込まれています。

IoTの市場規模が拡大すると期待されている理由は、以下の通りです。

理由1. さまざまなモノをネット接続するだけで大きな効果が得られる

さまざまなモノをインターネットにつなぐだけで、かなりの効果が得られます。例えば家にセンサーを設置することで、「外出中に家族やペットの状況を確認する」「カギをかけ忘れていないかチェックする」「体温や脈拍など家族の健康状態を把握する」などが簡単に実現できます。さらに、遠隔地から操作できる仕組みを導入すれば、「外出先からエアコンを操作し、家に着くころには適温になっているようにする」なども可能になります。

理由2. IoTを活用した新サービスがさらに拡大しそう

IoTを使い、これまでになかったサービスを提供する事例が増えています。例えば、大手建設機械メーカーの小松製作所は、早い時期から建機稼働管理システム「KOMTRAX」を手がけています。これは、センサーを内蔵した建設機械をネットにつなぎ、稼働状況を把握する仕組み。故障が発生する前の適切なタイミングで部品を交換することで、稼働時間を長くしています。

ほかにも、橋にセンサーを付けて交通量を確認して最適なタイミングで橋の補修を行ったり、自動車にセンサーを付けて運転状況をチェックし、急発進・急ブレーキの回数が少なく安全運転をしている人の自動車保険料を引き下げたりする試みもあります。

IoTは一般家庭、介護施設、一般企業のオフィス、工場、農業用地などさまざまな場所で利用が拡大中です。この勢いは今後も止まらず、ニーズはさらに拡大すると予想されています。

IoTを「キラリと光るビジネスモデル」として選んだ理由

IoTが有望だと考えるポイントは、主に次の3つです。

1. 市場規模がすでにかなり大きく、さらに拡大する見込み

すでに述べた通り、IoTの市場規模は現時点で6.3兆円もあります。これは広告業界(2018年時点で6.5兆円。電通「日本の広告費」より)やドラッグストア業界(2018年時点で7.3兆円。日本チェーンドラッグストア協会調べ)と似たような規模です。そして2023年には11.8兆円と急成長が見込まれています。

2. さまざまな分野で新たな商品・サービスの開発や、既存の商品・サービスの高付加価値化をもたらす

「運転者が安全運転をしているかどうか確認し、それに応じて保険料の金額が変わる自動車保険」などのように、IoTの普及によって従来では考えられなかった商品・サービスが、今後多数登場するものと見込まれます。また、既存の商品・サービスの価値向上も期待されます。結果、多くの企業でIoTに関連した取組みが進むと想定されます。

3. 良いアイデアや高い技術があればベンチャー企業にもチャンスが

IoTの歴史はまだまだ浅く、どの分野でも支配的な企業は現れていません。アイデアと、それを実現できる技術力があれば、どの企業にも急成長のチャンスがあります。また、IT系の企業ではない一般企業でも、IoT活用を主導できる可能性もあるでしょう。

IoTでは、どんな仕事がある?

IoTに携わる仕事には、下記のようなものがあります。

ソフトウェア開発者

IoTを制御するソフトウェアを設計します。プログラミングを行うだけでなく、通信方法などを研究・開発する仕事もあります。さらに、IoTによって集められたデータを分析するため、AIやビッグデータの知識が必要になるケースもあるでしょう。

ハードウェア開発者

IoTには欠かせないセンサーの機械部分を開発します。また、「携帯電話などを使って食材の確認・管理ができる冷蔵庫」「外出先から操作できるDVDレコーダー」「インターネットにつながっている機器を声で操作できるスマートスピーカー」などのいわゆる「インターネット家電」の開発者も含まれます。

事業企画

何にセンサーを付け、どんなデータをとればどんなサービスが生まれるか考える仕事です。コンサルティング会社などで働き、一般企業に対してIoT関連の提案をすることもできますし、一般企業の事業企画部門などで自社のIoT事業を推進することもできます。

すでに触れたように、今後は一般家庭、工場、オフィスなど幅広い分野でIoTの利用が広がります。そのため、いろいろな企業でIoTにかかわる機会が増えるでしょう。開発者などは理系出身者の方が比較的向いていると言えますが、事業企画などの分野では、文系出身者にもチャンスがありそうです。

IoTのホットトピックス

IoTの関連分野では、このような動きが表れています。

家庭向けIoTサービスがさらに広まる

2019年3月、大手通信会社のKDDIが家庭向けIoTブランド「au HOME」の新製品発表会を開きました。同社では、「玄関ドアにセンサーを設置して家族の帰宅・外出を知る」「外出先から家電を操作する」「睡眠時の心拍数や呼吸数などを計測して睡眠時間や眠りの深さなどを知る」などのIoTサービスを提供しています。
こうしたサービスを手がける企業はほかにもあり、今後も新規参入が増えていきそうです。

地方自治体と大学がIoTの無料講座を開催

名古屋市がIoTの専門知識を持つ人材を育てるため、名古屋工業大学や企業から講師を招いて無料講座を開催。製造現場にIoTを導入するために必要なシステム構築やセキュリティ対策に関する知識・技術を学びます。また、京都橘大学は2021年に、IoT技術やAIなどについて学べる「情報理工学部情報理工学科」を新設する予定です。IoT人材を育てる動きは、今後も加速すると予想されています。

IoT関連企業の探し方

最後に、IoT関連の企業をどうやって探したらいいのかご紹介します。

就職情報サイトを使う場合

リクナビなどの就職情報サイトを使って企業を探す場合は、業界から絞って探すのは難しいため、下記のように、IoTに関するキーワードをフリーワード欄に入れて探すと良いでしょう。

  • IoT
  • センサー/センシング
  • インダストリー4.0(製造業界の場合)
    ※「インダストリー4.0」とは、ドイツ政府が進めている国家プロジェクトです。第4次産業革命とも呼ばれ、IoTなどの先端技術を使って製造業の生産を高める取り組みを指します。
  • 故障予知(製造業界の場合)
  • 見守り(介護業界の場合)

取材・文/白谷輝英
撮影/平山 諭


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