就活やインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムのエントリーシート(ES)・面接などで時々登場する「あなたのキャッチコピー(キャッチフレーズ)は何ですか?」「自分を一言で表すと?」という質問。いきなり聞かれても「作り方がわからない」「そんな文才ないよ…」と、途方に暮れてしまいますよね。ネットで作り方を検索しても、ピンとくる言い回しや例文はなかなか見つからないのではないでしょうか。
でも就活のキャッチコピーに必要なのはしゃれた言い回しやひねりではありません。むしろ凝らないでシンプルに表現した方が企業に伝わりやすいのです。
この記事では、企業がキャッチコピーを尋ねる意図と、求めているものについて人事採用のプロに取材。さらにメディアで活躍中のコピーライターに、簡単に作れて自分らしさがキラリと光る、キャッチコピーの極意を教えていただきました。
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目次
テクニックにこだわると、借り物コピーしか作れない?
ちまたにあふれる「就活のキャッチコピーの作り方」。そこにはさまざまなテクニックや回答例が載っていますが、とかく凝りすぎだったり、ステレオタイプだったりして、自分にぴったり当てはまりそうなものを見つけるのはなかなか難しいものです。それも無理はありません。なぜなら、回答例集でイメージをつかむことはできても、他人のキャッチコピーは結局は他人のものだからです。文章の飾り方を学んだとしても、結局はどこかで見たようなコピーしか作れないでしょう。
言うまでもなく就活のキャッチコピーの本質は、テクニックではなくメッセージ。「自分はこんな人間です」という一番伝えたいことを、相手に伝わる言葉を選んで表現することです。では、企業は就活生のキャッチコピーに対してどんなことを求めているのでしょうか。
まずは、500人の採用担当者に、就活の面接時のキャッチコピーに関するアンケートを実施しました。
企業がキャッチコピーで重視するのは「伝える力」があるか
■就活生に「自分のキャッチコピー」を尋ねることはありますか?(n=500、単一回答)
■就活生のキャッチコピーを尋ねる中で、最も重視する点は何ですか?(n=120、単一回答)
アンケートの結果、就活生に自分のキャッチコピーを「尋ねることがある」「時々ある」と答えた企業は、合わせて全体の約4分の1。
また、キャッチコピーを聞く際に何を重視するかという質問に対しては、「伝える力があるか」が44.2%と最多。キャッチコピーを通じて、就活生のコミュニケーション力を見る担当者が多いことがわかります。次いで「自己分析ができているか」「履歴書やESの内容と矛盾がないか」となり、就活生の自己理解度を見るものでもあるようです。
さらに「面接で印象に残っている(具体的な)キャッチコピーやエピソード」を尋ねたところ、次のような回答がありました。担当者の印象に残ったコピーは、いずれもわかりやすい言葉を使いながら、それぞれに個性がありますね。
印象に残っているキャッチコピー例(フリーコメントから)
- 「演技派」
- 採用後も上下関係なくうまくコミュニケーションを図ってくれて、誰よりも早く要職に就いてくれた。(美容/50代/人事歴20年)
- 「古いのれんの新しい自分」
- 書道や華道をしているわりには、お祭り好きだったりするラテン系、というのが印象的だった。(教育/40代/人事歴12年)
- 「アイドルヲタク地下アイドル限定」
- 「学生時代にいじめを受けていたが、アイドルの追っかけで友達ができて、外に出掛けるようになった。仕事をしてアイドル追っかけの資金をためたいと思った」というエピソードが印象的でした。(建設/30代/人事担当者以外)
- 「潤滑油とブレーキの役割をする」
- 協調性を強調したいが、ブレーキという歯止め役も担うといった話だった。(スーパーマーケット/40代/人事歴5年)
- 「私の90%は野球でできています」
- 野球に打ち込んできた経験と知見に、誇りと自信がある学生だった。(陸運/50代/人事担当者以外)
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採用のプロに聞く!採用担当者の目に留まるキャッチコピーの基本は?
では、企業の意図することを酌み、採用担当者に響くキャッチコピーを書くためには、どんなことに注意したらいいのでしょうか。20年以上の採用経験を持ち、数多くの就活生のキャッチコピーに触れてきた曽和利光さんに、企業の人事が求めるコピーの基本を聞いてみました。
「企業が就活生にキャッチコピーを聞くのは、まず自己分析がどのくらいできているかどうかを見るため。そして面接では、その人をより深く知るための取っかかりの質問につながるものです。就活生は“私のキャッチコピーは〇〇です。なぜなら…”と、具体的事例をしっかり説明できるよう準備をしておくべきですね」と曽和さん。担当者の興味を引き、自己アピールにつながる質問を引き出すことができれば、キャッチコピーとしては成功だと言います。
「ですから表現自体は本当にシンプルでいいわけですが、そこを勘違いすると間違いを犯しがちです」と曽和さんは指摘。採用担当者の立場から、キャッチコピーを作るときに注意してほしい4項目を挙げてくれました。
キャッチコピーを作るときに注意したい4つのポイント
【1】大喜利や謎掛けはコピーに必要ない!
就活のキャッチコピーに感動や驚きは不要。ウケ狙いをしたり、人を考え込ませるような難解な表現を使うのは良くありません。制作会社や出版社で文章力を格別に要求されるような企業・業界は別として、通常の企業が期待しているのは表現のうまさではなく、誰にでもわかりやすく伝わるコピーです。
【2】語るべきは「理想」ではなく、「今の自分」
時々「〇〇でいたい」「〇〇を願う」といった夢や理想を表現する就活生がいますが、それはキャッチコピーとしてふさわしくありません。企業が知りたいのは、その人が実際に行動してきたことと、それによって作られた現時点のパーソナリティ、能力だからです。ありたい姿や理想の自分ではなく、「今」の自分についてを盛り込むようにしましょう。
【3】言葉選びは9割の人に通じるものを
コミュニケーションをする相手の知識量は、常に自分と同じとは限りません。キャッチコピーは多くの人が知っている言葉で構成しましょう。例えば「ウマ」ならみんなが共通のイメージを持ちやすいですが、「イリオモテヤマネコ」では、山猫マニアでもないと意図が伝わらないかもしれません。説明を聞かなければわからない表現は避けましょう。
【4】修飾語+名詞が簡単だが、ありがちに注意
一番作りやすく、読んでわかりやすいのは「△△△な〇〇〇」という形。大切なのは内容なので、言語表現的に拙く見えても気にする必要はありません。ただ、例えば「私はダンスが踊れるゾウです」といった逆イメージの組み合わせで訴えるのは、結構「あるある」なパターン。マイナスにはなりませんが「またか」と思われるリスクもあるので、こうした意外性の組み合わせの場合は、よほど説得力のある「なぜならば~」の部分を練っておいた方がいいでしょう。
コピーライターが伝授!就活でキラリと光るキャッチコピーを書くコツは?
就活の面接やESで聞かれるキャッチコピーは、企業により深く自分を知ってもらう際のフックとして働くものです。シンプルでも強く面接担当者の心に響くコピーを書く秘訣(ひけつ)はあるのでしょうか。さまざまな企業や商品の広告宣伝やネーミング、そのコピーライティングやブランディングなどで幅広く活躍中のコピーライター・後藤国弘さんに、アドバイスを伺いました。
本業の傍ら、大学で表現学部の学生にコピーライティングを教えている後藤さん。「最初の授業で学生に自分のキャッチコピーを考えてもらいますが、彼らは『何を言うか』より先に『どう言うか』にとらわれがち。つい、言葉を飾ろうとするんです。そこで、大事なのは飾ることではなく、伝えたいことを的確に伝えることからだと教えています」。自分のキャッチコピーを書くということは、何より重要な「伝えたい自分」を伝えることが目的です。でも一体どうしたら見つけられるのでしょうか?そして見つけたものをどう言葉に紡げば、相手に伝わるコピーになるのでしょうか?後藤さんにヒントを教えていただきました。
相手に伝わるキャッチコピーを作るための4つのヒント
【1】「弱み」も魅力かもしれない。自分を見る視点を増やそう
「自分の何を伝えるか?と考えるとき、普通はポジティブな『強み』を探すものですが、人は自分を客観視するのが苦手です。学生の多くも得意ではありません。そんなときは逆にネガティブな部分、『弱み』にも目を向けてみましょう。すると、自分では弱みだと思っていても、他人には魅力的に映る部分が見つかるかもしれません。
例えば、僕のように自分の髪の毛をネタにして笑うおじさん(笑)は、それを気にして悩んでいる人よりも、一緒にいて楽しいかもしれない。学生には『僕のような明るいハゲと、気にして悩んでいる人と、どちらのおじさんと飲みに行きたいか』と尋ねます(笑)。もちろん、気にして悩んでいる人の気持ちも想いながらですよ。
何が言いたいのかというと、僕が企業の立場だったら、自分の弱みを笑って伝えられる学生は、他人の弱みも理解でき、受け止める度量があるのではと感じて、好感が持てます。こんなふうに、時には俯瞰(ふかん)して自分を見るイメージで視点の持ち方を増やすと、弱点を持ち味に変えてしまうことも可能です。あらためて人に伝えたい『いいところ』が見つかるかもしれません」(後藤さん)
【2】周りのものとの関係性から自分を表現してみよう
「就活のキャッチコピーにも自己分析は大事ですが、自分の中へ中へと入りすぎると煮詰まってしまいます。そんなときは立ち位置を引いて、『社会の中の自分』という視点を持ってみるのはどうでしょうか。
そして実際にキャッチコピーにするときも、例えば家族の中の自分や、暮らす街の何かを愛している自分、映画好きな自分と映画との関係性、ラーメンを愛する自分を表現するものなど、広げてみるのもいいと思います。」(後藤さん)
【3】人間性を100%は伝えられない。好きな自分を抜き出そう
就活のキャッチコピーは、自分の人間性を余すところなく表現するものではなく、「一番自分らしい自分」の部分を切り取り、企業に「この人と話してみたい」と思わせるきっかけになるものです。「短いキャッチで人間性を100%表現することは不可能なので、それは良い意味であきらめてください。ただし、多面的な自分の中からなぜその部分を切り取ったのか、なぜこの企業の面接で伝えようと思ったのかを、明確にしておくことは大事です」(後藤さん)
【4】みんなに伝わる普遍的な言葉で、本質に迫ろう
伝えたい自分を言葉に置き換えるときは、美しい修飾語や流行の言い回しを並べた「コピー風のコピー」に酔わないこと。また、ハワイに行ったことがないのに「ハワイの太陽のような…」とするなど、本人の体験や実感の枠を無理して超えた表現は軽く見えるので要注意だと後藤さんは話します。
「以前に、某シングルモルトウイスキーのコピーに『何も足さない。何も引かない。』という名作がありました。大麦麦芽だけを使い、一つの蒸留所で時間をかけて熟成させたという本質を、いつまでも古くならない言葉で見事に表現したものです。良いコピーとは、誰にでも伝わる=共感できる言葉で、ものの本質に迫ること。時間がたっても変わることなく、長く通用するものです。もちろん就活生にプロのレベルは求めませんが、就活のキャッチコピーでも自分の本質=価値に迫る言葉を探すという点では同じだと思います」(後藤さん)
しっくりくるキャッチコピーは社会人になっても役に立つ
「コピーを書く作業は、人に何かを伝えることの基本になるものです」と後藤さん。たとえ仕事が内勤であったとしても、人とコミュニケーションをせずにできる仕事は存在しません。「これから社会に出る学生は、言葉の的確な使い方を一生考えていくことになります。その入り口が、就活のキャッチコピーを考えることですね」(後藤さん)。
キャッチコピーとは、いわば「自分を一言で表す」こと。ここで自分にぴったりのコピーができれば、就活後の人生の出会いにも必ず役に立つはずです。生涯、自己紹介にも使えるでしょう。ちょっと大げさかな(笑)。ぜひ「この学生ともっと話してみたい、一緒に働いてみたい」と相手に思わせるキャッチコピーを見つけてください。
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【調査概要】
調査期間:2019年5月9日~5月10日
調査サンプル:過去5年以内に新卒採用の選考に携わったことがある担当者500人
調査協力:楽天インサイト株式会社
文/鈴木恵美子
撮影/刑部友康
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