自分の北極星はなんだろう?気づいていなかった自分の魅力に気づく方法

働いてみない限り仕事なんてわかりません

第1回でも触れましたが、多くの企業は、これからの人口減少社会の中でも企業規模を維持していきたい、事業を拡大していきたいと思っています。きちんと新入社員を確保するために、どの企業もエース級を並べてリクルーティングしています。企業も、必死、です。だから、企業説明会の第一印象だけで「ここにする」と簡単に決めてほしくはないし、1次面接、2次面接の結果に、振り回され過ぎないでほしいのです。

もちろん、ある程度、志望業界は持っていた方が、勉強の仕方、情報収集の仕方、面接での答え方など応用が利きます。でも企業名だけにひかれて絞り込み過ぎるのは考えものです。人気企業なら何でもOKというわけではないのです。働いてみない限り、仕事なんてわかりません。実際、人気企業ランキングの上位の会社に入社した人でも、ほんの数年で辞めて、第二新卒で就活をする人たちを、私はたくさん見てきました。

自分らしさという北極星を目印に進めばいいのです

ではどうしたらいいか。何を基準に考えたらいいかと言えば、私は自分らしさを基準に、とアドバイスします。
面接でも、自分らしさを出せばいいのです。

企業も3次面接ぐらいまでやって、皆さんと会社が合うか合わないかを(企業側が)見てくれているのですから、受かるところは受かるし、落ちるところは落ちる。たとえ落ちたとしても、自分らしさを出してそれを認めてもらえない、愛してもらえないところなら、落ちて本望です。下手に自分を取り繕って面接を通ったとしても、入社して以降の毎日は取り繕いきれるものではありません。疲れ果ててしまいます。これからの就活でも、企業説明会、面接、そして内定とそれぞれの段階で迷うことはたくさんあると思います。満天の星ほどある企業や進路の中で、どうしたらいいか迷ったら、“自分らしさ”という北極星を探してみてください。北極星は、春夏秋冬が巡っても、その位置は変わりません。どんなときも、自分の根っこになっているもの、そういうものが、必ずあるのです。

いきなり北極星、なんて言われても 何が自分らしさなのか見つからない、どうやって自分らしさを出したらいいかわからないという人もいるでしょう。
一番簡単な方法は、自分の短所を思い出してみることです。自分の長所はわからなくても、皆さん自分の短所はわかっているはず。そして、その短所は裏返せば長所になっていることが多いのです。ビビリ屋さんは用意周到だったりします。そそっかしい人はフットワークが良かったり、口下手な人は、その分、話を聞くのがうまかったりする。
短所から考えたら、自分の良さがきっと見つかります。

短所を克服しようとした姿にこそあなたらしさが詰まっています

そして、短所は自覚しているからこそ、乗り越えようと努力する。そこに、実は人間性が出ます。短所を克服した、克服しようと努力したことは、決してありきたりではない、あなたらしさを語るエピソードや自己アピールにもなるのです。

以前こんなことがありました。
京都の大学で講師をしていた時のことです。ゼミの学生が、「私は、人付き合いもうまくないし、これといった特技も取り柄もないから、面接もうまくいきっこないんです」と言ったのです。確かに、リーダーシップを発揮してゼミを引っ張るタイプではありませんでした。どちらかというと人見知りです。でも私は知っていました。
彼女がゼミのお花見委員になったとき、ゼミ生全員で一緒に花見ができるように手配してくれていたのです。京都でも有数の、人気の花見スポットで、非常にいい陣取りでした。どうやってあんないい場所を取ったのか尋ねると、3日前に会場へ下見に行き11時だとまだその日の場所取りが始まっていないことを確認し、次の日13時に行ったらいっぱいだったので、当日は12時前に行って座れるところを確保したというのです。しかも座る場所を探すにあたっては、近くにトイレがあったり、間にベンチがあったりするとみんなで落ち着いて座っていられない、と考え、どの木の下がいいかあらかじめ目星をつけた。さらに全員(20人)が座れるよう、木の根の凸凹をよけながら広げるのに必要なビニールシートの大きさと組み合わせを考えて、最小枚数で全員が座れるシートを用意していたそうです。
単なるゼミのお花見でも、ここまで工夫をする。考えて、準備をする。誰から言われたわけでなくても、これだけの動きができる。それこそ、彼女のアピールすべきポイントだとアドバイスしました。
彼女は、地元で人気の自然食の通販会社に入社し、今も元気に働いています。NPO法人を作ったわけでもないし、ボランティアリーダーをしたわけでもありません。しかし、面接担当者たちは、この彼女らしさを買ってくれたのです。

短所を自覚したり、克服しようとした姿にこそあなたらしさが詰まっています。欠点からさかのぼると、かえって自分らしさに行きつく可能性があるのです。
かたくなにならず、肩に力を入れ過ぎないで、自分らしさを出してみてください。

考えてみてください。好きなことや夢の多くは、たまたまの出会いから生まれていませんか。たまたま教師に褒められたことがきっかけで書くことが好きになった。たまたま文化祭で受けた拍手がうれしくて本気でバンドの練習をしたなどきっと思い当たることがあるのではないでしょうか。自分らしさを大切にし、たまたまの出会いを前向きに受け止められる人は、いろんな花が人生に咲いていきます。

海老原嗣生(えびはら・つぐお)●1964年生まれ 上智大学経済学部卒業後、リコーを経てリクルートエージェントにて新規事業企画や人事制度設計などに携わる。リクルートワークス研究所「Works」編集長などを歴任。現在はリクルートエージェントのフェローとして活躍。主な著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣』『「若者はかわいそう」論のウソ』『就職、絶望期』『日本人はどのように仕事をしてきたか』『就職に強い大学・学部』など。

INFORMATION

最新刊は『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』(星海社新書・4/21発行)。5月には『経済ってこうなってるんだ教室』(飯田泰之氏との共著・プレジデント社)刊行予定。
『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』『経済ってこうなってるんだ教室』

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