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Vol.5 キャリアの「決断」、どう決めましたか? 認定NPO法人Teach For Japan

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まつだゆうすけ●1983年生まれ。2006年日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として都内の中高一貫校に勤務。千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、08年ハーバード教育大学院(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、外資系コンサルティング会社 にて人材戦略に従事し、10年7月に退職。NPO法人 Teach For Japan の創設代表者として現在に至る。11年にはグローバルシェイパーズ(世界経済フォーラムが選ぶ起業家精神を持つ若手リーダー)に選出。著書に『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」』(ダイヤモンド社)がある。
【認定NPO法人 Teach For Japan】 日本における教育格差の是正を目指し、「教育現場の改革」と「教育システムの変革」に取り組む。1990年に米国で大学生によって設立された教育NPO「Teach For America」の日本版として2010年に設立。子どもたちの学習環境の向上と若者のリーダーシップの育成を目的に、教員免許の有無にかかわらず独自に採用・育成した人材を最低2年間学校の教師として派遣するプログラムを実施・運営している。

教員の仕事を辞め、教育NPOを立ち上げるまでの経緯は?

教員になったのは、中学時代、いじめられっ子だった私に真剣に向かい合ってくれた恩師の影響です。大学卒業後は中高一貫校の体育教師になり、充実した毎日を過ごしていました。自分の思いや情熱、時間を注ぎ込むほど子どもたちとの信頼関係が築かれ、授業が実のあるものとなり、子どもたちが一つひとつ新しいものを学んでいく。その一つひとつの学びが子どもたちの人生の土台になっていることを実感でき、自分にとって教員ほどやりがいのある仕事はこの世にないと思いましたし、今でも思います。

 

一方で、教育現場のあり方に疑問も抱きました。ある時、同僚の先生のクラスが学級崩壊を起こしたんですね。授業を見学させてもらうと、先生は黒板の方ばかり見て授業をしていて、子どもたちはまったく授業を聞いていない。さらにショックを受けたのは、その先生が学級崩壊を子どもたちのせいだけにする発言を職員室でして、周囲の先生方も同調していたことでした。彼らも決して教育に対する熱意を持っていないわけではなく、さまざまな事情もあるのでしょう。ただ、授業がうまくいかないのは子どもたちのせいではないはず。もっと教員が成長し続け、子どもたちによりしっかりと向かい合える仕組みを作らなければという思いが強くなっていきました。

 

でも、教員をやっているだけでは教育の仕組みはなかなか変えられない。そこで、最初は自分で学校を作ろうと、退職してハーバード教育大学院に行ったのですが、留学中に出合ったのが「Teach For Ameria(以下TFA)」でした。TFAは米国の一流大学の卒業生を、教員免許の有無にかかわらず、教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを実施している教育NPO。教育現場に優秀な人材を送り込んでいるだけでなく、プログラムの卒業生たちの多くがビジネスや政治の世界で活躍してそれぞれの分野で教育問題の課題解決に尽力しています。この仕組みなら、僕が学校単位でやろうとしていたことを、社会全体を巻き込みながら実現できる。そう考えて、帰国後、2年ほどの準備期間を経て「Teach For Japan(以下TFJ)」を設立しました。

 

日本は新卒採用がまだ主流で米国のNPOを支えている寄付文化もありません。また、米国とは異なり、教員免許がなければ教壇に立てません(現在、TFJでは各分野の優れた知識や経験を持っている社会人について都道府県教育委員会の検定により教員免許を授与する「特別免許状制度」を活用している)。TFAの仕組みを日本で実現するには難題がたくさんありましたし、現在もあります。教員時代に比べて収入も休日も現段階では減っていて、教員を辞める決断をしたことによるリスクは小さくはありませんでした。しかし、後悔は何ひとつありません。一歩踏み出したからこそ見えた世界観、ネットワークがあり、自分ができることの幅が広がったと感じています。何かをやりたいという志があるけれど、リスクを取る不安もあるという時、私は志とリスクを天秤にかけ、少しでも志の方に天秤が振れたなら、新しい世界に踏み出すと決めています。物事を慎重に考えるのも大事ですが、考えれば考えるほど、やらない理由ばかりが大きくなるものです。深く考え過ぎないというのが私の困ったところなのですが、それは強みでもあるように思います。

 

やりたいことを見つけるには、どうすればいいのでしょうか?

私はたまたま中学時代に原体験があり、その後もさまざまな出会いを重ねて「教師になりたい」「教育こそが自分のやりたいことなんだ」という思いを強くしてきましたが、学生時代に自分のやりたいことがわからないのは当然のこと。やりたいことがないのはいけないことではありません。「やりたいことを見つけなければ」と強迫観念にとらわれて苦しんでいる若い人たちも多いので、まずはそれをお伝えしたいですね。

ただ、やりたいことがあるのは楽しいです。私はやりたいことをやっていますが、もう毎日が楽しくて、楽しくて(笑)。自分の価値観を押しつけるつもりはないのですが、仕事というのは人生の半分くらいの時間を占めますが、やはりやりたいことと仕事が重なっているのは喜ばしいことですよね。だから、やりたいことを見つける努力はぜひしてみてほしいです。

 

その方法は人それぞれですが、机に向かってノートに自分の考えを書き出すだけでは答えは見つからならないと私は思うんです。やりたいことを見つけるには、やはり行動すること。例えば、環境の仕事に興味を持ったら、関連の団体でボランティアをしてみる。そうすれば具体的にどんな仕事をしているのかが知れて、やりがいや、自分に向いているかどうかもわかったりします。それで「自分のやりたいこととは違うな」と感じたら、別の分野をのぞいてみればいいんですよ。そのほかにも他学部の学生と交流したり、講演会に行ってみたり、やりたいことを見つけるためにできることはたくさんあります。いろいろなことにチャレンジして、やりたいことを見つけていってほしいですね。応援しています。

 

松田さんから学生の皆さんへ

私がいつも大切にしているのは、自分がそれまで付き合ったことのない人と話したり、関心のなかったコミュニティにあえて参加してみることです。学生時代に価値観を同じくする友人たちに出会い、語り合うのは楽しいもの。でも、それだけでは人間として成長しない気がするんです。価値観の異なる人と一緒にいると、必ず違和感を感じるはず。最初は居心地が良くないと思いますが、自分とはまったく違う考えを知ることで視野が広がりますし、新たな楽しみを知ることにもつながります。居心地のいい環境に甘んじず、出会いを広げていってくださいね。

 

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取材・文/泉彩子 撮影/刑部友康

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