仕事とは?

Vol.242 <後編>前田裕二

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まえだ・ゆうじ●1987年、東京都生まれ。2010年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBS証券株式会社に入社。2011年、UBS Securities LLCに移りニューヨーク勤務を経た後、2013年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。“夢を叶える”ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」を立ち上げる。2015年に当該事業を分社化、SHOWROOM株式会社を設立。ソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株式会社・代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。2017年6月には初の著書『人生の勝算』を出版、Amazonベストセラー1位を獲得。

前編では「SHOWROOM」設立までの経緯や、事業への思いについてうかがいました。
後編では今後の展望や、前田さんが考える「就職活動で大事なこと」についてお話しいただきます。

目標の実現には「日本一」ではまだまだ。世界に認められるサイトに

-2017年9月に米国のアプリ調査会社アップアニーが公表した動画配信サイトの収益性ランキングでは、「SHOWROOM」が日本国内で1位を獲得。今や日本でトップクラスのライブ配信サイトに成長しましたね。

日本のライブ配信サービスでトップとはいえ、市場規模5000億円といわれる中国のライブ配信サイト「YY直播(ワイワイ・ジーボー)」などと比べると、遠く及びません。僕が目指すのは「SHOWROOM」の収益を単純に伸ばすことではなく、ファンがアイドルやアーティストを直接支援できるギフティング型ライブ配信サイト仕組みを根付かせ、努力している人たちがきちんと報われる世界をつくること。そのためには「日本一」ではまだまだで、「SHOWROOM」をグローバルに認められる「世界一」のサイトにしなければと思っています。

 

-海外進出に向けて具体的な動きは?

台湾、フィリピン、タイなどアジアへの展開に向けて準備を進めているところです。国によってカルチャーが異なりますから、僕たちだけでは現地のマーケットを理解できない。いいパートナーに出会えるかどうかが重要になってくるでしょうね。

 

ただし、海外進出以前に重要なのは国内でライブ配信サイトの市場を広げていくことだと考えています。特にギフティング型ライブ配信サイトは、日本に金銭的に誰かを援助する文化が根づいてないこともあって市場が十分に育っておらず、一緒に市場を盛り立てていく仲間が必要です。良きライバルがたくさん現れてほしいですし、僕たちも負けないようサービスのクオリティーを上げていかなければと考えています。

 

自分の価値観がどこにあるかを知り、人生のコンパスを持つ

-ライブ配信サイトの運営に当たっては、配信者が歌う曲の著作権の問題や未成年の配信者へのケアなど新しいサービスならではの課題も多そうですね。

いや、もう、課題は山のようにあります。でも、絶対に頂上にたどり着けると信じていますし、これまでもそうでした。根拠のない自信なんですけど(笑)。ただ、重い扉を開くのは、意外と「根拠のない自信」なんじゃないかなとこれまでの経験から感じています。

 

-前田さんが「根拠のない自信」を持てるのはなぜでしょう?

自分で「これをやろう」と決めて、実現しなかったことが一度もないからです。僕は突出した技術や能力を持っているタイプではありません。でも、学生時代にアルバイトでやっていた塾講師の仕事では、生徒それぞれの性格に合わせて指導法を変え、受け持った子たち全員の成績を上げることができた。外資系投資銀行のニューヨーク勤務時は、アメリカ人の同僚たちがとっくに帰った20時に職場で日本株の市場をチェックする毎日を続け、ハーバード出身のエリートに負けない業績を挙げることができました。愚直に「当たり前だけど、みんながあまりやらないこと」を続け、結果がついてくる。そういう経験を重ねたことによって、困難に直面した時も、「大丈夫。絶対に乗り越えられる」と考えられるようになったのかなと思っています。

 

-「当たり前だけど、みんながあまりやらないこと」を続けるというのは、簡単に聞こえますが、実際にできる人は少ないですよね。

簡単なことなのになぜできないのかというと、そこにモチベーションが湧いていないからだと思うんです。湧かないのはなぜかというと、就職活動で応募している企業や、今やっている仕事が自分の本当にやりたいこと、大切にしたい価値観と結び付いていない可能性が高いのではないでしょうか。

 

僕は仕事が好きです。仕事のためなら、高く険しい山に登り切る自信があります。登る途中で転んでひざを擦りむき、血が出ても、また起き上がって登り続けるでしょう。ただし、それは僕の仕事が自分の価値観と一致しているからです。価値観というのは「誰かの役に立ちたい」「家族と過ごす時間が一番大事だから、定時で帰れる仕事がしたい」「有名になりたい」など人それぞれですが、僕の周りで幸せに毎日を過ごしている人たちは、自分の価値観がどこにあるかを知っていて、人生のコンパスを持っているように思います。コンパスのないまま「人気企業だから」「お給料がいいから」「楽しそうだから」となんとなく仕事を選ぶと、壁にぶつかってすぐに挫折してしまったり、頑張っても幸せになれないということが、起こり得ます。就職活動が始まって周囲の勢いにのまれたり、仕事で目先の業務に追われたりしていると、「就職活動の勝算」や「ビジネスの勝算」ばかりに目が向きがちですが、それよりも「人生の勝算」を考えることこそが大事だと思います。

 

学生へのメッセージ

自分の本当にやりたいこと、価値観を知るというのは簡単なことではなく、僕も学生時代は最初から突き詰めて考えられていたわけではありません。でも、就職活動を始めるに当たって、徹底的に自分に向かい合い、自分が人生で何を大事にしていきたいのかを考えました。その時に書いた「自己分析ノート」は30冊以上。積み上げたら、30センチくらいありました。また、自分が「すごいな」と思う先輩たち数十人の話を聞き、彼らが何をモチベーションに仕事をしているのかも探りました。先輩たちの考えに対して自分がどう感じるかを対比させることで僕自身の価値観が見えてくると考えたからです。方法はなんでもいいのですが、皆さんもぜひ一生懸命考えて、できれば、学生時代のうちに自分のコンパスを見つけてもらいたいです。コンパスを持っているかどうかで、社会に出てからの充実度はかなり変わってくると思いますよ。

 

前田さんにとって仕事とは?

−その1 代替不可能な仕事をして、自分の生きた証しを世に残したい

−その2 努力した人たちがきちんと報われる世界をつくりたい

−その3 自分の本当にやりたいこと、価値観と結び付いていることが大事

 

INFORMATION

前田さんの著書『人生の勝算』(幻冬舎/1400円+税)。「SHOWROOM」の事業やエンタテインメント業界における動画配信サービスの可能性、事業を成長させるための本質的な考え方などビジネスに役立つ内容だけでなく、前田さんが「SHOWROOM」を立ち上げるまでのプロセスや人生観も丁寧につづられている。就職活動の基本的な考え方やノウハウも書かれており、「就活ガイド」としても読める。

 

編集後記

20代にして日本国内で業界トップクラスの収益性を誇る企業のトップを務める前田さん。これからの時代を一緒につくっていく人たちを応援したいという気持ちが人一倍強いのでしょう。取材では学生さんへの言葉をたくさん頂き、本文では紹介しきれなかった内容もあります。その一つが、目標に向かう際に仮説を持つことの大切さです。「小学生時代、貧乏だったので、少しでもお金を稼ぎたいと路上で弾き語りをしていました。最初はオリジナル曲を歌ったのですが、誰も立ち止まりませんでした。でも、道行く人たちの年齢層を見て『懐メロを歌った方がいいかな』『リクエストを受ければ、何度も聴きにくる人が増えるかな』と仮説を立てて実行してみると、ギターケースに多い時で10万円のお金が集まるようになったんです。“弾き語りで稼いだ”というだけでも小学生には十分な体験でしたが、その後の僕にとって財産となったのは、仮説を持って行動することで目標を実現するまでのプロセスを言葉で整理でき、成功体験をルール化できたこと。物事を漠然とやって成功しても、ルール化ができていないと再現性がありません。頑張っているのに成果が出にくいという人は仮説を立ててから行動することを意識してみてください」。(編集担当I)

取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康

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