就活に限らず、企業が面接で「あなたの尊敬する人は?」と聞くことは、厚生労働省の指針「公正な採用選考」の観点から不適切とされています。その一方で、学生が自己PRの一環として「尊敬する人」を企業に伝えることについては特に問題はありません。今回は、「尊敬する人」を効果的に自己PRにつなげた先輩たちの例を紹介します。また、なぜ企業が面接などで「尊敬する人」を尋ねるのが問題なのかについても採用のプロが解説します。
自己PR・志望動機で「尊敬する人」を伝えるのは、自分を知ってもらう一つの手段
企業が「尊敬する人物」を学生に尋ねるのがなぜ不適切なのか、ということについては後述しますが、学生が自分から尊敬する人物について話したり書いたりすることについては、特にルールは設けられていません。その上、「尊敬する人物」は、自己PRの一環として、自分という人物を企業に伝えるツールにもなり得るようです。
学生が、自分から「尊敬する人」について語った場合、企業には、学生の志向や価値観が伝わります。また、その学生が、どんな人物をロールモデルとして、将来どんな社会人になりたいと考えているかも伝わるでしょう。
そう考えると、学生自身が、自分のことをより知ってもらうための手段の一つとして、面接などの場で「尊敬する人物」を話題とすることは可能。そうすることで、志望動機の説得力を高めたり、自分のキャリア志向や社会で成し遂げたいことなどを伝えたりすることもできそうです。その場合は、尊敬する人をただ伝えるだけでなく、なぜそう思っているのかということがわかる具体的なエピソードを添えることで、面接担当者に伝わりやすくなるでしょう。
先輩たちは「尊敬する人」として誰を選び、何を企業に伝えた?
家族・親族・保護者
伝えたかったこと:間違った行動をしたときは、必ず指摘し、明確な理由を説明して叱ったり教えたりしてくれた両親を目標としていること
(自動車関連業界・陸運業界内定)
伝えたかったこと:看護師をしている姉を見て、姉をロールモデルとして看護師を目指していること
(病院内定)
伝えたかったこと:父と同じ業種の企業だったため、父の働き方を身近で見ていたことが、この業界を目指すことにつながったということ
(電機業界・鉄鋼業界内定)
伝えたかったこと:今の自分の性格形成のベースをつくってくれた人であり、考え方、生き方にも大きな影響を受けたこと
(ブライダル業界内定)
伝えたかったこと:どんなときでも自分のことより周りのことを考えて行動することができる祖母のような人になりたいということ
(銀行・不動産業界内定)
恩師
伝えたかったこと:英語を学ぶことの意義を教えてくれて、私の世界を広げてくれた先生のような人を目指していること
(スーパーマーケット内定)
伝えたかったこと:監督の指導があってこそ、今の自分の責任感の強さややり抜く力が培われたということ
(芸能プロダクション内定)
先輩
伝えたかったこと:人を見る力があり、視野が広いその先輩を自分も見習いたいということ
(インターネット・SI・ソフトウェア業界内定)
伝えたかったこと:一度失敗しても頑張って結果を出したその人の姿勢から、多くを学んだこと
(銀行・生命保険業界・ホテル業界内定)
友人・知人
伝えたかったこと:常に相手のことを考え、リーダーシップを発揮しているところを見て、自分もそうなりたいと考えていること
(総合物流業界内定)
著名人
伝えたかったこと:高校の先輩であることから知った杉浦さんの存在から、いろいろな生き方があることを知り、視野が広がったこと
(教育業界内定)
その他
伝えたかったこと:常に患者さんに明るく接しているその人から、看護をする上で必要な姿勢を教えてもらったこと
(医療業界内定)
厚生労働省が「あなたの尊敬する人は?」を面接で配慮する事項に入れているワケ
では、企業が採用選考の面接やエントリーシートで応募者に「尊敬する人物」を尋ねたり、「尊敬する人物」をテーマに作文を書かせたりすることは、適切ではないとされている理由について解説します。
「尊敬する人物」だけでなく、「出生地」「家族の職業」「愛読書」「名前の由来」なども同じように、「採用選考時に配慮すべき事項」として厚生労働省や各都道府県の労働局によってリスト化されています。もちろん、日々の会話の中でそうしたことを話すことについては問題ありません。あくまでも、面接という“ジャッジ”を前提とした場に限られます。
「尊敬する人」は、本来自由であるべき「思想・信条」にかかわる事項の一つ
厚生労働省が就職の機会均等を確保する立場からまとめた「公正な採用選考をめざして」という指針によると、採用選考は公正に行われる必要があり、適性・能力とは関係がない「本人に責任のない事項」「本来、自由であるべき事項」を企業が把握しようとすることは、就職差別につながる恐れがあるとされています。
「尊敬する人物」は、本人の思想・信条にかかわることとして「本来、自由であるべき事項」の一つとして挙げられており、適性・能力とは無関係。そのため、「尊敬する人物」について企業が把握しようとすることは、適切ではないというわけです。なお、「愛読書」も本来、自由であるべき事項であり、「出生地」「家族の職業」などは、「本人に責任のない事項」として、やはり配慮すべき事項とされています。
自己PRで尊敬する人を伝えるなら、「どんなことを伝えたいのか」を意識して
自分の志向や価値観、志望動機などを企業に理解してもらう上で、効果的なアピールができそうな題材でもある「尊敬する人」。企業から聞かれることはなかったとしても、自己PRにうまくつなげられそうなときは、具体的なエピソードを添えてどんなことを伝えたいのかも意識してみると良いかもしれません。
【調査概要】
調査期間:2018年12月3日~12月5日
調査サンプル:大学1年生~大学院2年生、専門学校生、短大生の就職内定
者500人
調査協力:株式会社クロスマーケティング
文/日笠由紀
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