【公務員と民間の併願はできる!】スケジュール、準備すること、併願で心がけておきたいことは?

公務員志望でも、「民間企業への就職の選択肢も…」と併願を考える学生さんもいるのでは?公務員志望者も多い中央大学・キャリアセンター松岡亜希子さんに聞いたところ、公務員と民間の併願は十分可能とのこと。今回は、地方公務員と民間企業の併願を希望する際のスケジュールの組み方や選考に向けた準備で気をつけたいポイントについて聞きました。

松岡亜希子さんプロフィール画像プロフィール 松岡 亜希子(まつおか・あきこ)中央大学 キャリアセンター キャリア支援課 副課長。国家資格キャリアコンサルタント。
2012年よりキャリアセンター勤務。多くの公務員志望の学生の就活・キャリア相談を受けている。

「公務員と民間の併願はできる!」のはなぜ?

まず初めに、公務員と民間企業の就活の併願が可能な理由について、松岡さんに聞きました。

優先順位をつけてスケジュールを組むことで、併願はできる!

「公務員と民間の併願を考えている」と相談を受けるとき、公務員の志望度が高い学生さんが多いように思います。その場合、公務員試験の時期を押さえて、それ以外の期間で民間企業の就活を進めていくことを意識して準備のスケジュールを組んでいけば、併願は十分可能です。

公務員試験を受ける場合、試験日以外にも、試験に向けた準備などに時間を割く必要があります。そのため、民間企業の就活だけで動いている学生に比べると、民間企業の選考に充てられる期間は限られており、応募する社数も少ない傾向にありますが、自分の中で優先順位をつけて進めていけるとよいでしょう。

公務員と民間の選考スケジュールの違いは?

では公務員と民間の選考は、それぞれどのようなスケジュールになっているのでしょうか?ここでは、地方公務員と民間企業の選考スケジュールを紹介します。

民間企業と地方公務員の就職活動のスケジュール

地方公務員の願書受付や試験日程はばらつきがあるため、受験を検討している行政機関地方自治体のホームページなどを通して確認してみましょう。

2023年から、就業体験のある5日以上のプログラムインターンシップ、インターンシップの要件を満たさないプログラムオープン・カンパニーキャリア教育いう名称なりました。これらの総称を本記事では「インターンシップ等のキャリア形成支援プログラム」と呼びます。 

公務員の選考スケジュール

地方公務員の試験は、3~4月から願書受付が始まり、5~6月に1次試験と合格発表、6~7月に2次試験(面接など)が行われます。最終発表が出るのは7~8月です。
なお、試験の時期が年度や地方自治体(以下、自治体)ごとに異なるため、自分が受けたいと考えている試験の日程は、自治体のホームページなどで情報収集するようにしてください。

インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムを実施している自治体も多く、大学1年生から応募できるケースも。5日以上のプログラムが大半で、実際の職場に行ったり、業務を体験したりすることで、どんな仕事をしているか知ることができます。開催時期は学校が夏休みの期間が最も多いようです。秋に実施する自治体もごくわずかありますが、民間企業と違い、冬休みの時期には開催されません。 

民間企業の選考スケジュール

一方、民間企業の選考の流れは、3月に説明会やプレエントリー、6月から面接や選考が解禁というパターンが一般的です。
ただ、上記のスケジュールを指針として発表していた経団連が2021年卒から就活スケジュールに関与しないと発表しているため、選考スケジュールを変更する企業もあるかもしれません。また、これまでも独自のスケジュールで選考を進める企業はありました。

気になる企業の採用ホームページや就活ナビサイトで、選考の日程をチェックするようにしましょう。

インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムは、民間企業の場合は学校が夏休みと春休みに入る期間に実施されるケースが多いものの、年間通して開催されています

公務員と民間の併願スケジュールを考えるときのポイントは?

公務員と民間の選考スケジュールを見てきました。併願する場合、スケジュールを考えるときにどんなポイントに気をつけるとよいでしょうか?

最新の選考スケジュールの情報収集をしよう

公務員試験も民間企業の選考も、自分が受ける年度の選考スケジュールに変更はないか、最新の情報を得るよう心がけましょう。前年度までの選考スケジュールをチェックして参考にするのもよいと思います。

インターンシップを仕事・働く環境の理解に役立てよう

公務員のインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムは主に夏休みに、民間企業は夏休みと冬休みを中心に開催されています。可能であれば、自治体と民間企業、両方のプログラムに参加して仕事・職場への理解を深められるとよいでしょう。

松岡亜希子さんインタビュー画像

公務員と民間の選考のために準備することは?

続いて公務員と民間の選考に向けて、具体的にどんな準備を進めるとよいのでしょうか。4つのポイントを紹介します。

1.試験勉強

公務員試験は専門の筆記試験が実施される行政機関が多いため、事前に試験勉強が必要になります。民間企業でも、選考で筆記試験を実施する企業があるので、準備をしておくとよいでしょう。

公務員試験のための準備

公務員試験の1次試験では、幅広い分野から出題される回答選択式の「教養試験」「専門試験」が課されるケースが一般的です。自治体によっては、回答記述式の「専門記述試験」や「論文試験」が課されるケースもあります。

試験勉強は、受験する1年前の学年から本格的に始める学生さんが多いものの、それ以前から進める人もいます。ただ、「教養試験」「専門試験」には憲法、民法、商法、刑法などの法律系の科目も出題されます。これらは法学部以外の学生さんは学校の授業とは別に学習する必要があるため、早くから勉強を始めておいて損はないでしょう。

民間企業の筆記試験のための準備

民間企業で実施される筆記試験では、適性検査が一般的です。適性検査は、職種の違いを超えて共通に要求される一般知的能力を測る「能力検査」と、性格やどのような仕事や組織に向いているかなどの、人となりを見る「性格検査」の2種類で構成されています。

「能力検査」は出てきた問題を正しく理解し、処理する力を見ているため、短期集中で直前に対策をしたからといって得点結果にはあまり反映されないでしょう。また、「性格検査」は日々感じていること、考えていることを正直に回答することが求められます。
そのため、適性検査のために事前に勉強するというよりも、事前に体験ツールを使って回答形式などに慣れておくとよいでしょう。

一方で、最近ではさまざまな学生さんを公務員として採用できるよう、民間企業の選考で使われている適性検査などの筆記試験を課す自治体も出てきています。自分が受ける自治体の試験内容がどんなものか、調べておきましょう。

2.情報収集

選考スケジュールでも触れましたが、公務員と民間の併願で就活を進める場合、情報収集が重要になってきます。民間企業については、企業の採用ホームページや就活・インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムのナビサイト、学校のキャリアセンターなどを活用しながら、情報収集を進めていきましょう。

特に公務員の情報収集の際には、以下の点に気をつけておきましょう。

公務員のインターンシップ・採用情報を調べるとき

民間企業の場合、企業の採用ホームページやナビサイトを検索すると、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムや選考スケジュールを調べることができます。一方で公務員の場合、プログラムの受け入れ、採用情報について電話で問い合わせる必要のある自治体もあります。

公務員のインターンシップに応募するとき

公務員のインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムに応募する際は、個人ではなく、所属している学校のキャリアセンター(就職課)が応募書類などを取りまとめて、各自治体に申し込みをする場合が多いです。

自治体の提出期限の前に、学校内での提出期限が設けられている場合もあるので、キャリアセンターが発信している情報をチェックするようにしましょう。キャリアセンターからの情報がない場合は、自分から「この自治体のプログラムに申し込みたい」という旨を相談してみましょう。

3.自己分析

「自己分析」とは、自分の特徴を理解するために、これまでの経験や考え方を振り返り、整理する作業のこと。公務員志望でも、民間企業の選考を受ける場合でも、重要になってきます。

公務員試験のための自己分析のポイント

公務員試験では、合格基準が試験項目ごとに数値化されています。業務を遂行する上で必要な基礎学力が求められるため、筆記試験のウエートが大きいですが、最近では、面接での人物評価の結果も重視されてきています。「なぜ公務員なのか」「なぜその行政機関なのか」「どんな政策を実現したいのか」などを明確にして試験に臨みましょう。

また、公務員試験の面接でも「学生の時に何に力を入れ、どんな課題を乗り越えてきたか」
というような“ガクチカ”を聞かれます。「自分はどんな特性の人物で、公務上それがどう生きるのか」など、自己PRでどのようなことを伝えるかについても、言語化できておくとよいでしょう。

民間企業の選考のための自己分析のポイント

民間企業の採用選考では、エントリシートや面接で“ガクチカ”や自己PR、志望動機がよく聞かれます。そのため、自己分析を通じて公務員試験と同様、選考までに自分の特性を理解して、企業に伝えられるとよいでしょう。また、説明会などで「求める人物像」を説明する企業もあるので、それを踏まえて自分の特性が企業の求めるものと合致しているか選考前に確認してみるのもよいでしょう

自己分析の進め方、“ガクチカ”を考えるときのポイントについて詳しく知りたい人はこちら

4.応募する行政機関・民間企業の検討

「公務員になりたい」といっても、「全体にかかわる政策を考えたい」か「住民に寄り添って仕事をしたい」かは、人によってさまざまです。どの行政機関に応募するか、併願する民間企業はどこにするかを検討するために、自分はどんな仕事をしていきたいのか、を考えてみてください。

公務員の志望先

公務員の仕事内容は、自治体の管轄範囲によって変わってきます。自分が国・都道府県など広域にかかわる仕事をしたいのか、住民サービスに近い仕事をしたいのか、これまでの自分自身の経験やインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムを体験して感じたことなど振り返って、考えておくとよいでしょう。

民間企業の志望先

併願する民間企業を検討する際は、「公務員としてやりたいこと近い仕事ができる民間企業はどこか」という観点で見ていくとよいでしょう。例えば「住民の教育環境をより良くしたい」という思いのある人であれば、教育業界でそういう取り組みをしている企業はないか、というように探してみてください。

公務員試験と併願で就活を進めていくため、選考を受ける企業数は民間企業のみを受ける人に比べて少なくなってしまうケースが多いですが、選考を受けると決めた企業については、企業研究をするなど、選考までに企業理解を深めておけるとよいでしょう。

企業研究の方法について詳しく知りたい人はこちら

また、公務員試験の合格発表の後、合格が出なくて民間企業の就活をする場合には、キャリアセンターに求人票が届いていないか確認してみましょう。ナビサイトなどを見ると、企業の選考が終わっているように見える時期でも、学校宛てに求人がきているケースもあります。

松岡亜希子さんインタビュー画像

先輩たちが公務員試験の準備で気をつけたこと、公務員と民間、併願してよかったことは?

公務員を志望する学生が多いといわれる中央大学。松岡さんに、先輩たちは公務員試験の準備でどんなことを心がけていたか、民間企業と併願してどうだったと感じていたかを聞きました。

公務員試験の準備で心がけたこと

試験勉強は、予備校に通ったり学内で開催されている講座を活用したりして、基礎から学び、その後過去問を繰り返し解いたという声を聞きました。
中央大学では、公務員試験用の参考書や過去問の貸し出しや、キャリアセンターで面接指導などを実施しています。ご自身の通う学校でも、公務員試験対策向けのイベントやサービスがあるか確認してみるのもよいでしょう。

また、公務員を志す友人を多くつくることで、長期にわたる試験勉強のモチベーションを保ったという先輩もいました。

公務員と民間、併願してよかった?

試験科目も多く、勉強時間の確保や説明会・試験日などの情報収集も大変です。しかし、「併願してよかった」と語る先輩の声も聞きます。

例えば、民間企業で働くさまざまな業種の社会人の話を聞いてたくさんの価値観に触れたり、選考に臨んだことが、「自分がどんな仕事をしたいか」という考えを深めたり、自分の得意なこと、足りていない部分を認識する機会になったという先輩がいました。また、「自分に向いている進路は何か」を真剣に考えることができたという声もありました。

自分の中で優先順位をつけて、就活を進めよう

最後に、松岡さんに公務員と民間企業を併願で進める学生さんに向けて、アドバイスを頂きました。

「民間企業の採用情報が解禁になると、各企業の説明会がスタートします。民間企業メインに就活している友人や同級生を見て『説明会や選考で忙しそう』と不安や焦りを抱きがちです。けれど、それに惑わされて、公務員試験の準備がおざなりになっては本末転倒です。『自分は試験に影響が出ないように、企業の数を絞って一社一社丁寧に受けよう』と、軸がぶれないように進め方を決めておきましょう」(松岡さん)

取材・文/田中瑠子
撮影/平山諭


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記事作成日:2019年11月29日 記事更新日:2024年2月2日

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