マレーシアにある日系メーカーの現地法人に勤務。現地での楽しみは、マレーシア国内ならびに周辺のアジア諸国への旅行やゴルフ、ダイビングなど。
若いうちからプロジェクトをまるごと統括
こんにちは。りんです。今回は、海外駐在で得たものについてお話しします。
海外駐在をすることになったのは、会社が社内公募していたアジアでのリーダー職に応募したからです。マレーシアのクアラルンプールに駐在するというイメージは、実のところあまりなかったのですが、駐在してみると、英語が通じるという点でとても良かったと思っています。タイのバンコクも候補地の一つでしたが、タイよりもマレーシアの方が、タクシーの運転手でも英語を理解してくれて、やりやすいような印象があります。
マレーシア駐在が決まってからは、英語力をつけるために、2カ月間、週4回の頻度で50分のオンライン英会話レッスンを受けていました。マンツーマンのレッスンだったので、それなりの成果が上がったと思っています。こちらに来てからは、実践を通じてどんどん英語に慣れていき、日常の仕事における英語のコミュニケーションは、赴任後半年から1年で問題なくできるようになりました。
マレーシアに来てから変わったこととしては、日本にいた時よりもさらにクリエイティブな仕事に時間を割けるようになったことが挙げられます。それは、前述したように、マレーシアでは、業務上の役割分担が非常にしっかりしていて、単純作業はローカル社員がやってくれるので、日本にいた時のようにルーティンワークに時間を取られることが少なくなったから。その分、もっと生産性の高い仕事に時間が使えるようになりました。
加えて、プロジェクトリーダーを任されることで、プロジェクト全体を責任を持って動かす立場になり、メンバーのマネジメントや予算管理など、プロジェクトをまるごと統括する経験ができたことも、ラッキーだったと思っています。日本にいる同期で、こういう仕事が経験できている人は、まずいないと思います。
外から日本を客観視できるようになる
今後、日系企業もグローバルにビジネスを展開していく必要がますます高まると思います。そんな中でグローバルな視点に立って仕事をするためには、直接その国に赴いて、その国の商習慣を学び取ることが重要になるのではないでしょうか。インターネットが普及したおかげで、日本にいながらにして海外の情報を得ることは、たやすくできるようになりましたが、それだけでは、実体験に基づいたビジネス感覚と、その地の商習慣、仕事の仕方、ビジネスの考え方が身につくことはありません。こればかりは、現地で実践してみないと身につけることはできないと考えています。
加えて、マレーシア駐在を経験して、あらためて、自国である日本や、自分自身のことを深く知り、考えるきっかけになったと思っています。例えば、こちらに来たばかりのころ、私の初任給を振り込み忘れた担当者が、「じゃあ休み明けに振り込みますね」と、まったく悪びれずに振り込みを長期休暇の後に延ばした時などは、大変戸惑ったものでしたが、今はそうしたことでいちいちイライラすることもなくなりました。逆に、日本のコンビニの店員が、こちらは全然待たされたつもりはないのにもかかわらず、「長らくお待たせいたしました」と丁重に詫(わ)びる姿に違和感をおぼえるほどです。こうして、「日本では当たり前のことが、海外ではそうではない」ことに気づかされる場面が何度もあり、日本の良いところや良くないところが、前よりもよく見えるようになりました。
また、日本人だからこそ、日系企業と現地企業との橋渡しを任せてもらえることが多く、そうした経験を通じて、日本の企業文化というものを再認識することもできました。
「“日本人”である自分をどのようにアピールするか」「日本人として自分が担う役割は何か」を考える機会が増えたことで、「日本人の名に恥じない行動をしよう」といった自尊心も芽生えました。このように、日本の外に出て、外から日本を客観視できるようになったときに、グローバルで働くことの意味が見えてくるのではないかと考えています。
海外で仕事をすることに興味がある大学生・大学院生の皆さんには、時間がある学生時代のうちに、長期の休みなどを利用して、どんどん海外に出てみてほしいと思います。テレビでは、よく海外を取り上げた番組を放送していますが、実際に自分で現地に足を運び、空気の澄み具合や街並みなどを肌で感じてみないことには、本当の意味での海外経験にはならないと思います。私自身、学生時代に米国でサマースクールに参加したり、自分たち以外の日本人がいない欧米人だらけのクルーズ船に乗ってダイビングを楽しんだりしたことが、私の中の“国際感覚”の原点となったものです。ぜひチャレンジしてみてください。
首都クアラルンプールの南方約25キロメートルに位置するプトラジャヤの夜景。プトラジャヤは、マレーシアの行政新首都として開発中の連邦直轄領だ。
クアラルンプール郊外のホテル。年間を通じて最高気温が30度を超えるので、一年中、屋外プールで泳ぐことができる。
マレーシアとシンガポールのニョニャ(海峡中国人)やプラナカン(マレー人と結婚した中国系移民の子孫)によって発展を遂げた「ニョニャ料理」。中国料理とマレー料理のミックスとも言える。
ペナン島のホテルのダイニング。シックな調度に、植民地時代の名残りが感じられる。
美しく整えられたマレーシアのゴルフ場。世界的に有名なツアーが開催される名門コースだ。
構成/日笠由紀