【イギリス編】しがらみを超えて合理的に仕事を進めるイギリスのビジネス

Reported by J
イギリスのロンドンにある日系メーカーの販売拠点に勤務。現地での楽しみは、ロンドン市内の散歩や、イギリス国外への旅行、革靴などイギリス名産品のショッピング。ジムのプールで泳ぐことを日課としている。

担当する業務の範囲が明確

はじめまして。Jです。イギリスのロンドンにある日系メーカーの販売拠点に勤務しています。

同僚は、英国人が9割以上で、ほかの国籍の人たちも皆、英語ネイティブ。そうでないのは、私とフランス人だけです。取引先も皆、英国人。だから、仕事で使う言語は100パーセント英語です。

イギリスのビジネスで特徴的なのは、役割範囲が明確で、自分の役割以外の仕事はしないこと。役割を超えた仕事は確実にその担当者の上司、そのまた上司へと“エスカレーション”する点です。例えば、スーパーで薬の効能を店員に聞こうとすると、「それは専門家に聞いてくれ」と言われます。自分の役割の範囲を超えているから答えないということのようです。アドバイスもしなければ、推測の話もしません。とにかく、自分の役割範囲に落ちてきた仕事だけやるわけです。

ただ、そうやって自分の役割範囲に落ちてきた仕事については、個々人の裁量内で、上司に確認などはせずに進めます。「あなたが私にこの役割を与えたから、自分で判断しました」という具合なので、判断が早いわけです。

また、合理的な仕組みを、しがらみ抜きにしっかり作るのも非常に上手。その結果、組織もプロセスもごくごくシンプルにでき上がっています。セールスの現場では、販売実績と覆面調査の結果、「あなたは売れていないからフランチャイズ契約終了」と販売店との契約を解約することも少なくないのですが、そこに一切のしがらみは存在しません。そんな場面に居合わせると、つくづく、ここはドライな国なのだと実感します。

雇い主は当たり前のように社員を辞めさせるし、社員も当たり前のように辞めてしまうから、人材は常に流動的。「チャンスがあれば転職」が当たり前なので、組織は決して一枚岩ではなく、「個人の集合体」としての企業という言い方がぴったりくる気がします。

会議時間が日本よりも長い

日本はやたら会議が多くて時間も長いイメージがありますが、当社のミーティングの方がもっと長いと思います。日本だと30分で終わる会議が、当社では1時間から2時間かかる感じです。日本は、事前に資料を作り込むなど準備をしてから臨むせいか、会議の場はある意味「決着会」となっていて、明確なゴールに向かって効率的に運営されています。

一方、当社の会議は、会議開始時刻前に三々五々集まりつつ、まずはコーヒーや紅茶を飲みながら雑談をスタート。しばらくおしゃべりをしてから、いつの間にか本題に入りますが、それでも皆がひたすら自分の意見を話していて、とても細かいことから本筋の話まで、実にごちゃまぜに話す中でコンセンサスができ上がっていく感じです。ホワイトボードは使わず、とにかく意見の応酬を続けているので、当然、次のミーティングの開始時間に食い込むこともあるわけですが、そんなとき次のミーティングは、遅れて開始すると思いますよね? 違うんです。次にミーティングが入れられる日程へと繰り延べられてしまうのです。時間の管理という点では少し甘いかなと思います。

そういう環境の中で円滑に仕事を進めるためには、とにかく「ここはイギリスの会社だ」と思うこと。実際は日系メーカーの販売拠点なのですが、ほぼ全員が英国人であることから、「自分は日本の会社の現地法人で働いている」と思っている人は非常に少なく、メンバー全員に「イギリスの会社」という認識が共通してあると思います。その上、そもそもイギリスという国そのものに、世界を牽(けん)引し続けてきたリーダー国としての自負があるのに加えて、当社の英国拠点は社内のセールス部門ではトップレベルの実績を誇っているため、「俺たちが最もデキるんだ」という意識があり、ますます誇り高くなるわけです。したがって、私は常に腰を低くしつつ、彼らをリスペクトする精神を貫いています。それが、この職場で円滑な人間関係を築くためには大切なことだからです。

次回は、イギリスの食文化についてお話しします。

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イングランド中央部の丘陵地帯コッツウォルズ地方の街「ボートンオンザウオーター」。街の中心をウィンドラッシュ川が流れており、「コッツウォルズのベニス」と言われている。

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イングランド南部にある「セブンシスターズ」。イギリス海峡に面しており、海の波に削り取られた白い崖が連なっている。

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映画『ハリー・ポッター』シリーズで魔法学校「ホグワーツ」のロケ地として知られるグロースター大聖堂の大回廊。

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ロンドンの南東方面ケント州にあるセント・オーガスティン修道院跡。世界遺産に登録されており、イングランドの歴史的建造物を保護する目的で設立された「イングリッシュ・ヘリテッジ」によって管理されている。

構成/日笠由紀

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