「10年後の自分はどうありたい?」は、就活生を悩ませる質問の一つ。どのように答えたらいいのかわからない、企業の意図が見えない、10年後なんて想像もつかない…そんな人も多いのではないでしょうか。そこで、採用のプロ・曽和利光さんに「10年後の自分」の考え方、コツを聞いてみました。また、企業の人事担当者300人に、「10年後の自分」について実際に質問しているのか?質問の意図は?どの選考段階で質問しているのか?など、アンケートを実施しました。
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企業が「10年後の自分」について聞く理由は?「5年後の自分」との違いは?
そもそも、企業はなぜ「10年後」の未来予想図を聞くのでしょうか。採用のプロ・曽和さんに解説していただきました。
企業が知りたいのは、学生の「キャリア観」と「スピード感覚」
「10年後」という具体的な数字が入っていますが、採用担当者は「将来どのようなキャリアを積んでいきたい?」という意味で聞いている場合がほとんどです。これを踏まえて、企業が知りたいことは2つあります。
まず1つ目は、入社してからある程度の経験を積んだら、その後はどのようなキャリアを積んでいきたいと考えているのか、といった学生の「キャリア観」です。その学生がスペシャリスト(専門職のように、特定の分野において特殊な技能を有する人)志向なのか、それともゼネラリスト(総合職のように、幅広い知識や経験を有する人)志向なのかなど、学生が仕事を通じてどのように成長していきたいのか、知りたいと思っているのです。
そして、2つ目は「スピード感覚」です。「スピーディーに仕事をこなし、若いうちに大きな仕事を任されたい」「ゆっくり時間をかけてスキルを学んでいきたい」など、人によってその感覚はさまざま。企業は、学生がどのような感覚を持っているのか知りたいのです。
この2点が企業とマッチしているかは重要です。例えば、定期的なジョブローテーションによってゼネラリストを育てたいと思っている企業に「○○の分野を極めたい」というスペシャリスト志向の人が入ると、将来のキャリアパスにミスマッチが生じる可能性があります。また、事業特性上10年かけてじっくり人材育成することが大事な企業に、3~5年スパンで成長曲線を描いている人が入ると、お互いの不幸につながってしまうこともあるでしょう。
つまり、企業側がどんなキャリアを提供できるのか、そのキャリアが自分にマッチしたものなのかを考える上で、「10年後の自分」は一つの指標になるのです。
「5年後の自分」と「10年後の自分」の違いは、厳密にはない
前述しましたが、企業がここで知りたいのは「将来どうなりたいのか?」ということ。5年と聞く場合と10年と聞く場合に、採用担当者の意図に厳密な違いはないと思います。
ただし、企業や採用担当者によっては明確に使い分けている場合もないとは言えません。この場合、5年後は「若手のうちにどのような仕事をしたいか」、10年後は「ある程度一人前になったら、その先はどのようなキャリアを進みたいのか」について知りたいと考えるといいでしょう。
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「10年後の自分」の考え方と注意点
では、「10年後の自分」を考える際、何をとっかかりに考えていけばいいのでしょうか。
自分のキャリア観は、「キャリアアンカー」から考える
まず、自分のキャリア観を知るためには、「キャリアアンカー」の8つの軸の活用がオススメです。
キャリアアンカーとは、アメリカの組織心理学者エドガー・シャイン博士が提唱したキャリア理論のことです。個人がキャリアを選択するときの軸となる、重要度の高い価値観や欲求をまとめ、表しているものです。
キャリアアンカーの8つの軸と、重要度の高い価値観は次のようなものです。
- 管理能力:管理職に就くことを重視する考え方。人のマネジメント、面倒を見ることで成長する
- 技術的・機能的能力:一つの分野でエキスパートになることを好む
- 安全性:継続性と安全性の優先順位が高く、リスク回避が大事
- 創造性:クリエーティブな仕事、新規事業の創造を好む
- 自律と独立:自分で決めたやり方で仕事を進めることを好む
- 奉仕・社会献身:人や社会の役に立つことを好む
- 純粋な挑戦:困難な問題に立ち向かうことを好み、そこから得られる刺激がモチベーションとなる
- ワークライフバランス:自分が求める生活スタイルを重視する
軸の選び方は、自分と企業の共通点を探してみること
自分のキャリア観を探すには、「自分はどの軸に当てはまるか」×「企業側はどの軸に当てはまる人を求めているか」を掛け合わせて考えることが大切です。
どの軸も働く上で重要な要素であり、どれか一つだけ当てはまるということでもありません。そこで、事業内容はもちろん、組織風土やどんな成長スピードを想定しているのか、企業の教育制度やキャリアパスの事例をリサーチした上で、自分の軸との共通点を見つけていくといいでしょう。
「ワークライフバランス」を選ぶ場合は注意が必要
ワークライフバランスは、今やどの企業も環境を整え、アピールする材料の一つとなっています。しかし、採用前の段階で、学生の方からそこを第一に求めるのは、企業によってはプラスの材料にならない可能性があります。働く側にとって、ワークライフバランスは得られる当然の権利ですが、“権利”の主張は“義務”とのバランスによって成り立っています。会社に貢献するという“義務”を果たす前から“権利”だけ主張するのは、間違っているとは言えないものの、心証としてはよろしくないということになりかねません。
企業のスピード感覚は、OB・OG訪問や会社説明会でリサーチ
自分と企業のスピード感覚のマッチ度を知るには、OB・OG訪問や会社説明会などで、仕事の進め方、ジョブローテーション、昇進のタイミングなどを聞いてみるといいでしょう。
リアルの場での接点がない場合は、企業の採用ページの「先輩社員紹介」を見てみましょう。多くの企業は、実際に働いている社員の仕事内容や今までの異動歴などを紹介していますので、参考になります。
【回答例】プロが解説する「10年後の自分」の伝え方
実際に、「10年後の自分」を伝えるにはどのようにしたらいいのでしょうか?2つの回答例を基に、曽和さんに解説していただきました。
回答例1
プロの解説
「なぜ育成にかかわりたいのか」を過去の経験から説明しているので、思い付きではなく根拠のある思いとして伝わるでしょう。注意点は、「育成に携わりたい」というエピソードを用いる場合、企業によっては10年で育成の側に回るのは「まだ早い」と感じられてしまう可能性があるという点です。教えるだけの立場ではなく、まだまだ学ぶ立場でもあるという姿勢、目標をセットで話すことが大切です。
回答例2
プロの解説
30代のOB・OGのキャリアを参考にし、なりたい人材像を具体的に伝えることは有効な手法です。注意点は、理想とする生き方や考え方に対してなぜ共感しているのかという理由を説明する必要があることです。回答例のように、ロールモデルを軸に10年後の自分を語る際も、「大学時代にこういう経験をしたので、彼(彼女)のこの考え方に共感し、自分もこうなりたいと考えました」と結び付けていくと、企業側のあなたの理解はより深まるでしょう。
「10年後の自分」を考える上で大切なのは、「何をやりたいか」よりも「どうなっていたいか、どういうキャリアを歩んでいたいか」という観点で考えること。就活の選考は、「自分はどういう人間か」について事実をベースに伝える場。「隙あらば、自分の過去と結び付ける」姿勢で臨みましょう。
回答に迷ったらキャリアアドバイザーに相談しよう
「10年後の自分」の考え方や伝え方を説明してきましたが、いざ自分のことに当てはめて回答しようとすると難しいこともありますよね。もし回答に迷ったら、気軽にキャリアアドバイザーに相談するのがお勧めです。
企業の質問に対してのアドバイスだけでなく、履歴書・OpenESの添削から内定後のサポートまで、就活全体のサポートをしています。就活のプロである専任アドバイザーがマンツーマンで付いて、何度でもフォローとアドバイスをするので、いつでも悩みを相談することができます。
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「10年後の自分」は本当に聞かれるの?いつ聞かれる?企業の意図は?
続いて、過去5年以内に新卒採用に携わった人事・採用経験者300名にアンケートを実施し、「10年後の自分」についての気になる実態を聞きました。
約3割の企業が「10年後の自分」について質問している
■貴社の新卒採用面接において、「10年後の自分」について質問をしたことはありますか?(n=300、単一回答)
就活面接において、「10年後の自分」について質問をしたことがあるか聞いたところ、約3割の企業が「はい」と回答しています。
「10年後の自分」はエントリーシートよりも面接で聞かれる傾向がある
■「10年後の自分」は、就活選考のどの段階で質問していますか?(n=104人、複数回答)
続いて、「10年後の自分」の質問は、選考のどの段階で質問されているのか調査したところ、一番多かったのは「一次面接」で58.7%、次いで「二次~最終面接の間」で48.1%、「最終面接」26.0%、「エントリーシート」22.1%という結果に。「10年後の自分」はエントリーシートよりも面接で聞かれる傾向があると言えそうです。
企業の意図は「ビジョンを描く能力」と「成長意欲」が知りたいから
次に、「『10年後の自分』について質問したことがある」と答えた人に対して、その意図を聞きました。
■就活生に対して「10年後の自分」について質問している理由は何ですか? (n=104、複数回答)
「学生のビジョンを描いたり打ち出したりする能力を知りたいから」「学生の成長意欲を知りたいから」の2つが65%以上でほか項目より圧倒的に多いという結果になりました。曽和さんの解説にもありましたが、10年後の自分に対する具体的な内容というよりも、どうありたいかを考え抜く姿勢と意欲を見ていることがわかります。
「10年後の自分」以外でも、同じ意図の質問がある
「10年後の自分」という表現ではなくとも、学生の成長意欲やビジョンを描く力を見る際にさまざまな質問例があります。「上記の意図を聞く場合に、“10年後の自分”以外ではどんな言い方で聞いていますか?」というアンケートには、次のような回答が集まりました。
「この仕事を通して、どんな自分になっていたいですか」
「どのようなリーダーの下で働きたいと思いますか」
「自分の仕事のキャリアプランと人生におけるキャリアプランを教えてください」
「今の経済状況と10年後の状況はどのように変わっていると思いますか。また、自分は10年後、どのような立場にいると思いますか」
「自分の目標としていることは何ですか。それを実現するためにはどうしたらよいと思いますか」
ほかにも「『将来どうなりたいか』とあえて曖昧な質問をすることで、本人の価値観を知りたい。お金のことを話す学生、キャリアについて話す学生、家族の話をする学生などさまざまな考えが出てくる」といった回答も寄せられました。
【調査概要】
調査期間:2019年1月29 日~1月30日
調査サンプル:過去5年以内に新卒採用の最終面接に携わったことがある担当者300人
調査協力:楽天インサイト株式会社
取材・文/田中瑠子
撮影/刑部友康
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