自分が人からどう見られているか、他人の客観的な視点から自分を知る「他己分析」。
自己分析や企業・業界分析を行う中で、「自分の強みは本当にこれでいいのだろうか?」「この業界や企業は本当に自分に向いているのだろうか?」と悩むことがありますよね。それらを確かめる手段の1つとして「他己分析」という方法があります。
そこで今回は、他己分析をするなら、誰に何をどう聞けばいいのか、そして、そもそも他己分析にはどんな意味があるのかなどを、キャリアアドバイザーと先輩たちの声から探ります。
他己分析、いつどんなふうにやればいい?そもそも意味あるの?
就活において、他己分析はどの時点で行うと効果的なのでしょうか?他己分析を行う意味と併せて、キャリアアドバイザーの勝田さんに聞いてみました。
―他己分析は、いつやると良いのでしょうか?
いつでも、必要を感じたときに行えば良いと思いますよ。
理想を言えば、企業選びを始める前の段階で、自己分析や他己分析がすでに終わっているのが望ましいです。自分のモチベーションがどこから来ているのか、自分はどんなことにやりがいを感じるのかがわかった上で企業選びに進んだ方がスムーズですから。
とはいえ実際は、企業選びを始めてから自己分析・他己分析の必要を感じたりすることも多く、「業界を絞ったけれど、自分に合っているのかわからない」と悩み、あらためて自己分析をしたり、他己分析を始める例も少なくありません。(以下、勝田さん)
―相手に向かって「自分の強みを教えて」などと聞くことには抵抗がありますが…。
例えば、相手が親なら「私/僕ってどんな子だった?」、友人なら「私/僕とのことで印象に残ってること、ある?」などと尋ねれば、相手も答えやすいと思います。そうした答えの中から自分の強みや弱み、特徴や性格、適性などが見えてくるでしょう。
あるいは、「今から自分のことを話すから、純粋に疑問に思ったことを何でも質問してほしい」という言い方で、質問を投げ掛けてもらう形で他己分析をすることも可能です。
―そのほか、気をつけると良いことはありますか?
目的を話した上で協力を仰ぐことでしょうか。「エントリーシートを書きたいんだけど、自分の強みについて何を書いたらいいかわからなくて」という言い方なら、相手もゴールをイメージできるので、協力しやすいと思います。
―そもそも他己分析って、やる意味あるんでしょうか?
やる意味はあると思います。前提としては、「客観的な視点で自分を捉えるために、他人に自己分析を手伝ってもらう」と考えると良いと思います。
他己分析をやるメリットは、大きく3つあります。
- 自分では気がつかなかった強みに気付ける
- 強みの内容を具体化できる
- 自分で強みと思っていたことについて、自信を持って語れるようになる
例えば、自分が当たり前だと思っていた「10分前行動」を、友人から「君のそういうところはすごいと思う。尊敬する」と言われると、自分の基準では評価できなかった自分の特徴が、他人の基準では強みとして映ることがわかりますよね。
また、他己分析をすることで、「行動力がある」という表現を「行動を起こそうとする意欲」なのか「積極的に現場に出向く力」なのかといった具合に細かく言語化できることも。「行動力がある」と複数の人間から言ってもらうことで、自分でもより納得感のある形で強みを自覚することができれば、自信にもつながるでしょう。
他己分析、誰に何を聞けばいい?
他己分析を行うと決めたら、誰に、どんなことを聞けば良いのでしょうか。引き続き勝田さんに聞いてみました。
―他己分析は、誰に手伝ってもらうべきでしょうか?
まずは、親や友人など、自分のことをよく知っている人ですね。特に親なら、「あなたは小さいころ、こんなことをよく言っていたよ」などと幼少時のエピソードを語ってくれるので、自分のこれまでの経験やその過程で培われた考え方などが引き出せます。そうしたエピソードは、志望動機などに絡めて語ることもできますよ。
―友人に聞く場合、どんな友人に聞くと良いですか?
親が「家に居る自分」を知っているのに対して、友人は「学校に居る自分」「バイト先に居る自分」を知っているので、そうした場での自分の姿を知っている友人や、同じ時間をシェアした人に聞くと良いでしょう。例えば、学園祭実行委員を一緒に頑張った仲間や、同じ趣味を持つ同士などです。
―近しい間柄ではない人、例えばキャリアアドバイザーなどに聞く場合はどうでしょうか?
キャリアアドバイザーなどの近しい間柄ではない人は、基本的に自分のことをよく知っているわけではないので、自分のことを聞くというよりは、自分のことを掘り下げるのを手伝ってもらうと良いでしょう。
―「掘り下げるのを手伝う」とは具体的にどういうことでしょうか?
親や友人だと距離が近過ぎてさほど疑問に思わないようなことでも、初対面の他人であれば純粋に疑問に感じることがあります。
「掘り下げる」とは、そうした事柄について「なぜそう思うの?」「そのとき、なぜそういう行動を取ったの?」などと徹底的に質問してもらうことを指すイメージです。
それらの質問に答えることで、自分の考えや行動を突き詰めて分析を深めることができます。その上、相手から「それって、こういうこと?」などと言い換えてもらうことで、自分の思いを伝わりやすい言葉に言語化することもできます。
「なぜ」「なぜ」と掘り下げてもらうのは、面接の良いトレーニングにもなりますよ。
<先輩たち500人アンケート>他己分析、やった?やってどうだった?
最後に、実際に就活を経験した先輩たちの声を聞いてみましょう。先輩たちは、他己分析をやったのでしょうか?経験の有無や、その結果について、アンケートで尋ねてみました。
半数は就活中に他己分析を行っていた
●就活中、他己分析をしましたか?(単一回答、n=500)
就活を経験した先輩たちに対して、就活中に他己分析を行ったかどうかを尋ねたところ、ちょうど半数が「はい」と回答し、2人に1人は他己分析を行った経験があることがわかりました。
約4人に3人が「友人・知人」を相手に他己分析を行っている
●就活中に他己分析をお願いした相手を教えてください(複数回答、n=250)
就活中に他己分析を行った先輩たちに、その相手を尋ねたところ、最も多かったのが「友人・知人」で74.4%と、約4人に3人に上りました。ついで、「親族・保護者」が34.8%で、約3人に1人。「大学のキャリアセンター職員」も2割を超える結果となりました。「その他」としては、「大学の先生」「予備校講師」などの教員、「アルバイト先の社員」などが挙がりました。
約4人に3人が他己分析が参考になったと感じている
●他己分析が参考になったケースはありますか?(単一回答、n=250)
続いて、就活中に他己分析を行った先輩たちに、他己分析が参考になったと感じたことがあるかどうかを尋ねたところ、74.8%と、約4人に3人が「ある」と回答。多くの先輩が、他己分析を就活に役立てていたことがわかりました。
参考になったと感じた時のエピソードは?先輩たちのリアルボイス
- 小学校の時の通信簿を見ながら母と話したところ、自分の人格がどのように形成されてきたのかを幼いころからたどることができました(大学4年生/ファッション・アパレル業界内定)
- 10年間、続けていたソフトボールでは、特に良い成績を残したわけでもなかったため、自分では評価していなかったが、友人に『10年続けたということだけでも大変な継続力だと思うよ』と言われ、強みにできることを発見した(大学4年生/食品業界内定)
- 自分よりも社会経験のある先輩方に、自分の強みを別角度から見てもらったことで、その強みを今後、どう生かしていくべきかがわかった(大学4年生/自動車業界内定)
- 自分では短所だと思っていた部分を、小学校からの友人が肯定的に捉えていてくれたので、自信を持って就活に臨めるようになった(大学4年生/電機業界内定)
- 人見知りなので、人とあまりかかわりたくなかったが、私のことをよく知っているバイト先の店長や、初対面のタクシーの運転手さんにも『営業向き』だと言われたことで、自分の隠れた適性を知ることができました(大学4年生/自動車業界内定)
- 友人から『意外と意志が強いよね』と言われ、自分の新たな一面に気づくことができた。自己PRにつながった(大学4年生/化学業界内定)
- 同じ部活の友人と、お互いの長所・短所を話し合ったところ、自分では気づかなかった部分を発見できました(大学4年生/公務員内定)
- キャリア支援の先生に、今まで自分がやってきたことを話したところ、そこから私の強みを導き出してもらえた(大学4年生/電機業界内定)
- SNSを通じて匿名で他己分析してもらえるツールがあり、匿名だったことで率直で遠慮のない意見を聞くことができ、自分の悪いところを指摘してもらえて、とても参考になりました(大学4年生/介護・福祉業界内定)
- 大学で出会った親友に、自分の強みや自分に向いていそうな職業を聞いたところ、自分ではまったく考えもしなかった見方を教えてもらえて役に立った(大学4年生/レジャー・アミューズメント業界内定)
他己分析が参考にならなかったのは、「すでに知っていたから」「見当外れだったから」
●他己分析が参考にならなかったケースはありますか?(単一回答、n=250)
同じく就活中に他己分析を行った先輩たちに、他己分析が参考にならなかったと感じたことがあるかどうかを尋ねたところ、47.2%と、約半数が「ない」と答える一方で、18.0%は「ある」と回答。約5人に1人は参考にならない他己分析があったことがわかりました。
参考にならなかったと感じたのはなぜ?先輩たちのリアルボイス
- 当たり障りのないことしか言われなかった(大学院5年生/農業業界内定)
- 見当違いなことを言われて、信じられませんでした(短大2年生/教育業界内定)
- 自己分析と同じ結果が出てしまい、あまり参考になりませんでした(大学院2年生/人材業界内定)
- 友達に自身の弱みを聞いた時、遠慮があったのか、明確な指摘をしてもらえず、物足りなかった(大学4年生/SI業界内定)
- 向こうから聞かれるばかりで、こちらの質問には答えてもらえませんでした(大学4年生/広告業界内定)
- 彼氏に聞いてみたら、私自身がすでにわかっていることしか教えてもらえなかった(大学4年生/専門商社内定)
- 結局、指摘されることはすべて過去か現在の自分にすぎず、これからどうなりたいかという将来のことについてはわからないから(大学4年生/ファッション・アパレル業界内定)
多くの先輩たちが参考になったと感じている他己分析。参考にならなかったと感じているケースでも、キャリアアドバイザーの勝田さんのアドバイスを参考にして聞き方などを工夫することで、就活に役立てることができそうです。
また、人から指摘してもらったことが見当外れと感じるケースでは、自分でも気づいていなかった部分を指摘してもらえている可能性も。まずは自分の思い込みを捨ててフラットな気持ちで相手の声に耳を傾けることが、他己分析を就活に役立てる第一歩なのかもしれません。
【調査概要】
調査期間:2019年2月5日~2月7日
調査サンプル:2019年3月卒業予定の大学生、大学院生、専門学校生、短大生の就職先内定者500人
調査協力:株式会社クロスマーケティング
取材・文/日笠由紀
撮影/鈴木慶子
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