業界や企業などを絞って何度も応募してきたのに内定が取れず、「もしかしたら目指す方向性が違っているのかも…」と不安を感じている人や、就活を進めるにつれ「なんとなくこの方向ではない気がする」と感じ始めている人もいることでしょう。就活の途中で方向転換するのはアリなのか、方向転換する場合はどんなことに注意すればいいのかなどについて、数多くの就活生の相談に乗ってきたリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーが解説します。
プロフィール松浦李夏(まつうら・りか)
リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。印刷会社の営業、大手カフェチェーンの店員を経て、2018年株式会社リクルートキャリア(現・株式会社リクルート)に入社。ITなど情報系の学生、数学、生物、農学など理系学生と文系学生を年間400~500人サポート。面談では、学生が自分の「強み」や「らしさ」を見つけられるようアドバイスすることを心がけている。
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就活中の方向転換はあり?なし?
業界や企業を絞って応募を続けてきたものの、なかなか内定が得られない…と悩む人は少なくありません。何度挑戦しても自分が望む結果を得られない場合は、志望業界にこだわり続けるのではなく、視野を広げることで新たな気づきを得られることがたくさんあります。就活のスタート時は、自分の興味の範囲内で、業界や企業を選んでいく場合が多いでしょう。そのため、どうしても自分のこだわりや憧れなどを優先して業界や企業を選ぶ方が多いと感じています。「志望してきた業界・職種からの方向転換を考えた方がいいかもしれない」と思えたということは、あなた自身の視野が広がってきたということですので、方向転換は“あり”だと思います。
よくあるのが、「食品業界にしか応募しない」「マスコミ以外は考えていない」など、こだわりを持ちすぎるあまり、ほかの業界や仕事が目に入らなくなっているケースです。
ほかにも、「楽しそうだからエンタメ業界」「かっこいいから企画職」など、イメージが先行しているケースもあります。いずれも業界や職種へのこだわりや思い込みを強く持っているがために、自分の強みを理解しきれず、なかなか内定が得られないという人が少なくありません。
このような状況において、方向転換は視野を広げ、内定につながる良い打開策となる可能性があります。
関連記事:“志望業界・企業にこだわりすぎて内定がない!”とならないように気をつけることは?【就活なんでも相談室】vol.11
実際に方向転換した先輩の事例を紹介!
「就活がうまくいかない」と相談されたとき、キャリアアドバイザーとして方向転換を無理にお勧めすることはありませんが、一緒に自己分析を行いながら「あなたの強みは、こんな業界のこんな職種、こんな場面で生かせるのではと思います」とアドバイスすることはよくあります。そうすると、多くの学生が「その業界も見てみたい」と視野が広がり、結果的に別の業界や職種でスムーズに内定をもらえることは少なくありません。
ここで、実際に方向転換したことで内定につながった事例を2つご紹介しましょう。
事例1:業界や職種への強いこだわりが視野を狭めていた
食べることが大好きなAさんは、「食品メーカーで働きたい」という子どものころからの夢をかなえるため、私立大で理系を専攻。さらに専門性を高めようと、大学院に進学しました。大学院1年生の3月から食品メーカーの研究開発職に絞って就活を始め、食品メーカー約20社にエントリーシート(ES)を提出しましたが、一次面接に進んだのは5社。しかし、どの企業も二次面接以降に進めず、5月に相談にいらっしゃいました。
面談で、食品業界にこだわる理由などを掘り下げていく中で、Aさんは夢をかなえたいという想いが強すぎて、ほかの業界には目を向けていなかったことがわかりました。学生時代にAさんが頑張った研究について、「研究で培ったPDCAサイクル(※)を回す力、データ分析力、コツコツと研究を続ける根気強さなどは、食品業界以外でも通用する武器になる」と伝えたところ、ほかの業界への興味が高まったようでした。
そこで、方向転換先として半導体メーカーとIT企業を紹介。少子高齢化が進む中で、人に代わって機械が食品を生産することが今以上に必要となるため、「生産を支える」という点で食品業界に貢献できるのではないか、と提案しました。新たな2業界にAさんも興味を持ち、その後は食品メーカー6割、半導体メーカーとIT企業4割という配分で企業に応募、6月初旬に半導体メーカーから内定を得ることができました。
※ PDCAサイクル=Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセス
方向転換 成功ポイント
- 自分の強みをほかの業界でも生かせると気づいて、広い視野を持てたこと
- 希望業界への応募を継続しつつ、別の業界も追加したこと
事例2:自分には無理だと思い込み、職種の可能性を狭めていた
私立大・文系のBさんは、東京勤務で転勤のない事務職を希望。業界は問わず、商社など知名度のある企業を中心に就活していました。大学3年生の3月から活動を始め、15社ほど受けましたが、5月初旬に全滅。就活に疲れ、一時就活を中断し、7月に入って相談にいらっしゃいました。
Bさんが事務職を希望したのは、「営業はプレッシャーが大きい。理系ではないのでモノづくりはできない。だから、事務職以外にできることがなさそう」という理由から。事務職自体に思い入れがないため、「なぜ事務職なのか」「なぜ当社を選んだのか」という採用担当者の問いに、うまく答えることができませんでした。
そこで、まずは「文系だから無理」というBさんの思い込みを解くことから始めました。Bさんにお勧めしたのはシステムエンジニア(SE)職。IT企業のSEは、理系出身者にしかできない仕事だと思い込んでいたので、現在IT業界は成長が著しく、需要に対してエンジニアの数が追い付いていないこと、教育体制を整え文系学生を積極採用している企業もあること、システム開発はチームで手掛けるのでチームメンバーと相談しながら助け合って業務を進められることを説明。また、文系でも入社後に半年から1年の研修を実施している企業もあり、知識習得の時間がしっかりと設けられていることを伝えました。また、IT企業のSEはデスクワークが中心で、企業によっては在宅勤務の推奨や転勤が少ないなど、働き方の自由度が高いため、Bさんの希望に合致していることも説明しました。
次に、学生時代に頑張ったことを深掘りしていくと、後輩と2人で部員30人の水泳部のマネージャーとして、練習場所の確保や大会運営、他校のマネージャーとの調整役などを経験してきたことが明らかに。「この経験で培ったコミュニケーション力や調整力は、営業やエンジニア、クライアントとの連携が不可欠なSEにも通用する強みになる」と伝えたところ、IT業界やSEに対する見方が変化していきました。
そして7月後半、「SEの仕事に興味があるなら、無料のプログラミングサイトを試してみては?」と勧めたところ、翌日には「自分にもできそう」と返信があり、IT企業の説明会に参加することを決心。その後IT企業5社に応募し、8月末に内定を得ることができました。
方向転換 成功ポイント
- 無料のプログラミングサイトをすぐに試すなど、アドバイスを素直に聞き入れる力があったこと
- 運動部のマネージャー経験から自分の強みを発見し、志望動機と関連付けられたこと
就活途中に方向転換する場合のポイント
ほかの業界や職種への方向転換を考える際の、基本となるポイントをまとめました。
なお、方向転換するといっても、当初からの志望業界をあきらめる必要はありません。志望業界と並行して、ほかの業界へも視野を広げれば、それだけ内定を得られる可能性も高まるでしょう。
自分の強みについて抽象度を上げて考えてみる
学生時代に頑張ってきたことについて、あらためて自己分析して自分の強みとフラットに向き合い、ほかの業界・仕事でも生かすことができるかどうか考えてみましょう。その気づきが視野を広げ、今まで意識していなかった業界や職種への方向転換を考えられるようになります。
新しい志望業界の難易度と求人倍率をリサーチする
新たな方向性が見えてきたら、その業界の難易度や求人倍率をリサーチしておきましょう。新たに興味を持った業界の現状を理解した上で、「自分の強みを生かすならこの業界も選択肢の一つだ」と考えることがポイントです。
出遅れたとは考えず、心機一転プラス思考で
途中で方向転換すると周りと比べて遅れたように感じるかもしれませんが、業界・企業研究は情報収集をしっかりと行えば十分に追いつけます。出遅れているとネガティブに捉えず、同じフィールドに立っているのだとプラスに考えましょう。
ゴールデンウィーク前を見直しの目安にする
方向性を見直すなら、ゴールデンウィーク前はお勧めのタイミングです。就活を本格的にスタートし、この時点まで手応えが感じられなかった場合は、この先も同じ業界・業種で就活を進めたいのか、ほかに優先したいことはないのか、あらためて自問自答してみるとよいでしょう。
政府主導のルールでは、6月から採用選考活動開始となっています。一方、独自の採用スケジュールを立てる企業もあり、志望している業界や企業によって、ゴールデンウィーク前に内々定を出す企業も現れるでしょう。そういった状況と比較して、焦りが生じてしまうかもしれませんが、「自分は自分」と考え、今一度自身の方向性を客観的に見つめ直してみましょう。
方向転換後は、その事実を伝えるのも一つの方法
方向転換後、新たな志望業界の面接で志望動機を聞かれたら、もともとの志望業界から方向転換したことを伝えるのも一つの方法です。例えば、「今までは〇〇な理由で〇〇業界に絞って活動してきましたが、途中でじっくり考え直した結果、自分の強みである〇〇はこの業界の〇〇職でこそ生かせると感じました」など、しっかり熟考した上で方向転換したことを伝えられれば、本気度が伝わりやすくなるでしょう。
取材・文/笠井貞子
編集/伊藤理子
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