【エジプト編】30分くらいの遅刻は当たり前のエジプトのビジネス

Reported by 牛くん
エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務。現地では、赴任後に始めたゴルフや、駐在員仲間とのソフトボールがオフの楽しみ。ソフトボール仲間との飲み会も大事なリフレッシュの時間に。

訪問相手に会えない日もある

はじめまして。牛くんです。エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務しています。

 

職場には、私を含めた数人の日本人駐在員と、20人弱のエジプト人社員がいます。うち約半分が私の部署に所属している私の部下です。まあ、部下といっても、同僚のようなものだと私は思っていますが…。顧客はエジプトの法人が主で、普段、接するカウンターパート(仕事相手)もエジプト人。ただし、日本のメーカーやコンサルタントとやりとりしたり、海外のメーカーやコンサルタントとやりとりをすることもあります。事業パートナーがヨーロッパの企業のときは、さまざまな国の取引先とかかわることになります。

 

仕事で使う言語は、基本的に英語。日本人と会話するときの日本語を除けば、仕事の場面では90パーセントは英語でしょうか。あいさつ程度のアラビア語は話せますが、それを駆使して仕事をすることはありません。ただ、エジプトのスラング(俗語)っぽいあいさつを覚えて仕事相手に使ってみたところ、最初のつかみがうまくいくようになりました。「こんな言い方を知ってるのか! 面白い奴(やつ)だな」と思ってもらえるようです。

 

エジプトの人々と仕事をしていて感じるのは、時間に関する感覚が私たち日本人とは異なることです。約束の集合時間や納期を守らないことは常で、それに対する罪悪感を持たない人も多いように思います。会議などは、だいたい30分くらい遅れて始まるのが普通。顧客のアポイントを取って訪ねて行ったときなど、10分待ってまだ来ない、もう10分待ってもまだ来ない、を繰り返し、結局、訪問相手には会えずに「明日また来てください」と言われてしまうこともあるほどです。そのときも、相手にあまり悪びれた様子はありません。思うに、カイロは道路の渋滞がひどく、30分で行かれる距離に1時間以上かかることなどザラなので、渋滞を言い訳にしやすいという背景もあるのではないかと思います。

 

顧客に何かをお願いしている場合、頼んだ期日までに頂けないことも多々ありますが、そんなときも催促の仕方には気を使います。そもそも相手方は、当社に助言やサポートをして助けてくれる立場ですから、日々、良好な友好関係を築き、嫌われないようにしなければなりません。したがって、お願いした書類がなかなかもらえない際も、「再度、電話してごめんなさい」と謝った上で、なぜ急ぎでその書類が欲しいのか、その理由を説明してお願いします。エジプトの人々は、日本の技術や日本人の謙虚な性格を評価してくれているので、自分がその評価を損ねることのないように、十分、注意を払わねばならないのです。

 

話し好き、議論好きな点も、エジプトの人々の特徴だと思います。さらに言えば、自分の主張はする一方で、人の話を聞くのが苦手な人たちだとも思います。私が話をしているのに、平気で割り込んで自分の主張だけを繰り返すようなことは日常茶飯事。一応は上司である私が話している時だって、彼らは自分が言いたいことを遠慮なくかぶせてきます。「日本人の顧客とは、キャッチボールをするつもりで会話するように」と常々言っているのですが、たとえ顧客相手でも、その癖は一向にあらたまりません。

 

割り込むのは会話だけではありません。列に割り込むのも平気です。仕事の場面に限らず、空港のチェックインカウンターやセキュリティチェックの列に割り込まれることも珍しくありません。会議中に誰かと電話で大きな声で話し始めることもよくあります。ある程度のレベルの、国際的なビジネスマナーが身についている人を別にすると、多くのエジプト人にこの傾向が見られるように思います。

 

「良かったことリスト」をもとに人事評価

こうした文化のあるエジプトで仕事をする上で、気をつけていることがいくつかあります。まずは、なるべく相手と直接話をすること。直接話をするということは、一見、二度手間のようですが、意思疎通という観点で言えば、結局、一番の近道だと考えます。日本人同士でさえ、メールの字面だけではニュアンスが伝わっていないことがあるわけですから、ましてや文化の違うエジプト人を相手に、英語でメールを送るとなると、いつ思わぬ誤解を招くとも限りません。それだけに、時間の許す限り、なるべくなら直(じか)に話して、それが無理なら電話、それも無理ならやむなくメールというのが、私のつけている優先順位です。

 

部下である彼らには、顧客へのヒアリングをしてきてもらうことが多いのですが、「こういうことを聞いてきて」というだけでは、意図が明確に伝わらないことが往々にしてあります。本人が納得していないことがこちらにもわかるので、そういうときは「なぜこの質問をする必要があるかわかってる?」と問いかけたり、必要があれば背景や理由を説明したりします。こうしたやりとりは、対面でないと、なかなか難しいことなのです。

 

また、エジプト人は、褒められるのは得意ですが、叱られるのは苦手です。そこで、できるだけ具体的に「良かった点」を褒めて、仕事への意欲を高めるようにしています。彼らは、褒められると気持ち良くなり、仕事の質が上がる傾向があるからです。そのために、私は普段からスタッフが何か良いことをするたびに、携帯やパソコンのデータベースに「誰が」「何月何日何時に」「どんな良いことをしたか」を記録しておいて、人事評価の時にフィードバックするようにしています。「あの時は、こうしてくれて助かったよ」と伝えると、彼らも「自分のことを、そこまで見てくれていたのか」と再認識して、今後も引き続き評価されるようなことをしようと奮起してくれるようです。

 

一方で、叱るときは叱ります。しかし、公の場所では怒りません。彼らは、とてもプライドが高いからです。そのため、注意をするときは、会議室に呼び出して諭すようにして言い聞かせます。自己中心的な考え方をする部下には、「あなたが私の立場だったら、どう思う?」と問いかけることで、相手の身になって考えることの大切さに気づいてもらうわけです。頭ごなしに叱るとケンカのスイッチが入ってしまい、絶対に謝らなくなってしまう彼らですが、このように一対一で愛情を持って接すれば、同じように愛情を返してくれるのです。

 

次回は、エジプトの文化や社会についてお話しします。

 

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カイロにあるハンハリーリ市場。エジプトで一番大きなスーク(アラビア語で“市場”のこと)と言われている。

 

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同じくハンハリーリ市場。このように、スークの道は入り組んでいて、初心者だとたいてい迷子になる

 

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カイロ市内のゴルフ場。エジプトには世界トップクラスのゴルフコースが複数ある。

 

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同じくゴルフ場。ゆったりとくつろげる休憩スペースも整備されている。

 

構成/日笠由紀

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