【香港編】中国と香港との微妙な距離

Reported by TOSHIZO
香港にある日系企業の現地法人に勤務。中国に関連した書籍を読むことや、ゴルフが現地での楽しみ。

ナーバスなテーマのときはさりげなく話題を転換

こんにちは。TOSHIZOです。今回は、中国と香港の関係についてお話しします。

 

香港人の中国本土に対する思いは、非常に複雑だと感じます。私の経験のみならず、書物や報道を通じても、年齢や住んでいる地域、個人的な体験によって、中国本土および中国人に対する感情には差があるようです。例えば、中国人観光客のマナーの悪さを批判し、中国産の品を一切買わないようにしているような香港人でも、中国人が香港でショッピングを楽しんでくれることで香港の経済が潤っている事実は認めています。英国による統制下におかれてから、「自由」を満喫している香港人の中には、中国本土による政治的干渉に嫌悪感を示す人や、香港の方が生活水準が高いという自負を誇示する人も多くいるようですが、同時に、もはや中国なしでは香港は成り立たないことを、ほとんどの香港人が認めています。

 

一方で、中国との国境近隣に住む住民は、中国本土の深圳(シンセン)地区からやってくるバイヤーたちによる買い占め行為に大いに憤慨しています。なぜ買い占め行為が起こるのか? 数年前に中国で粉ミルクへのメラミン混入事件が起きたことを覚えていらっしゃいますか? 中国本土では、いまだに食の安全性を揺るがすような事件が起きています。2013年だけでも、鳥インフルエンザ、1万頭を超える豚の死骸が上海の河川に流れていた等の報道がありました。偽物・偽ブランド品もしかりです。まさに、「安全」と「本物」を求めて、毎日中国本土から中国人が香港に押し寄せるのです。ブランド品や宝飾品が毎日飛ぶように売れて、香港経済を潤してくれますが、一方で、粉ミルクや紙おむつ等の買い占め行為は、香港人の生活そのものに負の影響が出ます。中国人バイヤーは日帰りで国境を越え、買い占めを行いますが、それが国境付近の香港人の反発を招き、それらの地区では、反中デモが起きていました。2012年9月の尖閣問題による大規模反日デモとほぼ同時期のことです。それ以降、香港の電車内には手荷物重量規制が出されました。

 

このように、同じ香港人でも、年齢や立場によって、中国本土に対する思いには、バラツキがあります。そのため、「尖閣問題についてどう思う?」といったように個人的な意見を求められた際は、結論じみた意見を押し付けるようなことはせず、極力、経済の話題などに切り替えるように努めています。紋切り型で対応をするのは、不要なコンフリクト(衝突)を引き起こしかねないからです。

 

もちろん、中国本土の現地スタッフに対して、こちらから積極的に「反日感情」について話をすることもありません。彼らも、正面から反日感情を認めてしまうと、当社のような日系企業で働くことが自己矛盾につながりかねないようです。良くも悪くも「なぁなぁ」で済ませることが、お互い心地良く過ごすための秘訣(ひけつ)なのだと思います。

 

「尖閣問題」が勃発した当時は、香港でも反日デモがあり、日本人が殴打される事件もありましたが、私自身は、街を歩いていて特に身の危険を感じることは正直ありませんでした。一方で、中国大陸の華南地区での反日デモは大規模で激しく、華南地区の駐在員は危険を感じることもあったようです。香港でも、彼らが緊急時に避難できるようにと、ホテルを手配するなどの対応を求められました。幸い、緊急避難までの事態には至らなかったのですが、日本では想定し得ない危険と背中合わせでいることをあらためて感じましたね。

 

なお、尖閣問題に関しては、私が香港で見聞きしていることと、日本国内メディアの報道に乖離(かいり)があるのではと感じています。総じて、日本での報道内容がエキセントリックになりがちだったと思います。また、大規模デモが起きているのは事実であるにせよ、暴動・略奪の光景を繰り返し取り上げる一方で、その後の経過についての解説などは十分になされてないのではないか、あるいは、視聴者側の関心がなくなってしまっているのではないかとも感じています。

 

公園を占拠するアマ集団

香港の象徴的な風景としては、日曜日の公園が挙げられます。フィリピン人・インドネシア人女性の集団によって、ほぼ占拠されてしまうのです。彼女たちは「阿嗎(アマ)」と呼ばれる住み込みの家政婦。香港は不動産が高く、かつ教育費も日本の数倍以上と言われているため、専業主婦はごく少数で、多くの既婚女性は仕事を持ち、夜もプライベートライフを楽しみます。そのために、住み込みの家政婦のニーズは十分にあるというわけです。なお、週末は家族水入らずで過ごすのが一般的なため、週末はアマも休日となり、仲間と公園などに集まっておしゃべりに興じることができるのです。

 

現在、労働ビザを支給されて、フィリピンやインドネシアなどから来ているアマは約30万人いるとか。賃金は毎月5万円程度と聞いています。掃除・洗濯・料理はもちろんのこと、乳児を含めた子どもの世話・送迎、犬の散歩や買い物まで家事全般をこなすようです。賃金の一部を本国へ仕送り(送金)するため、銀行窓口に並んでいる姿も見かけます。彼女らは、解雇されて職を失うと労働ビザも失効するため、本国に送還されることになります。解雇の際には、雇用主が帰国の航空券まで手配するのが通例らしいのですが、それでも職を失うことは、アマにとって、本当に一大事です。貧富の差が激しいと言われる香港ですが、その縮図をここでも感じます。

 

次回は、香港での私の生活についてお話しします。

 

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英国の統制下にあった時代の名残りで、看板には英語と広東語が併記されている。こうした看板は、通りに必ずある。

 

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週末夕刻の香港の銅鑼湾(Causeway Bay)中心部メインストリートの光景。歩道は人ごみでごった返しており、大渋滞する道路を2階建てバスとトラムが行き交う。

 

構成/日笠由紀

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