<後編>白河桃子

しらかわ・とうこ●1961年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。住友商事、外資系金融などを経て著述業に。婚活、妊活、就活、キャリアプランなど女性のライフイベントにかかわるキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授と共に19万部のヒットとなった著作『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)で婚活ブームを起こす。少子化対策、女性のライフキャリア、男女共同参画、女性活躍推進、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティ、働き方改革、などをテーマに著作、講演活動を行う一方、「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」などの委員として政府の政策策定に参画。また、大学生、高校生向けに仕事、結婚、出産の切れ目ないライフプランニング授業を行っている。相模女子大学客員教授。

前編では多くの企業を取材してきた白河さんならではの会社選びの視点や、近年力を入れている「働き方改革」に関する活動についてうかがいました。
後編では「結婚」や「出産」といった女性のライフキャリアデザインをテーマに仕事をするようになった経緯や、仕事への思いをお話しいただきます。

過去の自分に言いたいことを、今の自分に言っている

-執筆を始めたきっかけは?

会社員時代に習い事をたくさんやっていて、雑誌の取材を受ける機会があったんです。その時に知り合った編集部の方たちに「風変わりなお見合い相手ばかりに出会う友人」の話をしたら、「面白いから、雑誌に書いてみなよ」と言われて…。会社勤めのかたわらでコラムの連載を始め、本になりました。その後、36歳で結婚してすぐに夫が海外勤務になって会社を辞め、転勤をきっかけに日本の雑誌や地元の日本メディアに原稿を書いたりしていて、帰国したのが40歳の時。年齢的に就職先を探すのは難しいかなと考えて、書くことを本業にすることにしたんです。ただ、当時は何か強い意気込みがあったわけではありませんでした。

 

-転機は何だったのでしょう?

『「婚活」時代』を一緒に書いていただいた、社会学者の山田昌弘先生と出会ったのが一つのきっかけでした。お話をしていると、山田先生は「家族社会学」というアカデミックな視点から社会を見ているのに対し、私は「女性が結婚・出産をしやすいか」という観点で社会を見ていることに気づき、そこをもっと掘り下げてみたいと考えたんです。

 

もう一つは、取材を通してたくさんの女性に会い、彼女たちの人生についてお話を聞かせてもらったことが大きいですね。結婚や出産について悩んでいる女性がたくさんいて、何が彼女たちの「こうしたい」という思いを妨げているのか。自分が取材をしたり、研究することで得た情報を発信することで、そのハードルを少しなりとも取り除けないだろうかと考えるようになりました。

 

『「婚活」時代』のヒットをきっかけに講演の依頼を受けたり、大学の教壇に立つようになってからは、若い女性からライフデザインについて相談を受けることも多く、「後から来る人たちのために、開けられる扉は開けておきたい」というような気持ちが強くなっています。私自身は結婚が遅く、子どもはいません。歩んできた人生そのものは充実していましたが、子どもは持ちたかった。20代、30代の自分が適切な情報を得て、決断することができていたら、もう少しやりようがあったのではという思いから、過去の自分に言いたいことを、今の人たちに言っています。女性誌では「遅すぎることはない」という発信をしていましたが、「遅すぎること」はひとつだけあるという反省もこめています。

 

好きなこと×できること×お金を稼げること

-フリーランスとして約20年。ライターだけでなく講演やテレビのコメンテーター、大学の客員教授、政府の委員と活躍される領域を広げることができたのはなぜでしょう?

最近しみじみと感じているのは、仕事というのは変化していくものなんだなということ。変化に対応できたのは、“専門性”の掛け算があったからかなと思っています。例えば、講演の依頼を頂くようになったのは『結婚』という“専門性”ゆえですが、依頼をお受けできたのは、パワーポイントというITの力もある。私は特に話すのが得意というタイプではなかったので、パワポの力を借りなければよどみなく話すということはできなかったと思います。

 

“専門性”というと資格を取れるような知識やスキルを思い浮かべるかもしれませんが、私は“好きなこと×できること×お金を稼げること”と定義しています。例えば“人と話すのが好き”というのも“専門性”です。そして、“専門性”は働き続ける限り身につくもの。長く活躍している人を見ていると、自分にどんな“専門性”の掛け算ができるかを常に意識していて、見習わなければと思いますね。

 

学生へのメッセージ

よく「やりたいことを仕事にしなさい」と言いますが、学生さんたちを見ていると、就職活動時には「やりたい仕事がわからない」という人が大半です。もちろん、やりたいことがあるのは素晴らしいことですが、学生さんたちは20年ちょっとしか生きていないのだから、やりたいことがわからないのも当然です。やりたいことがないのなら、無理に探す必要はありません。まずは経済的に自立するために自分ができることを考えてみましょう。仕事というのは生活のため、お金を稼ぐことも第一歩。その基本を踏まえた上で、出合った仕事をどうすればワクワクしたり、または結果を出せるようにできるかを考えて、磨いていくステップを踏む。やりたいことを探すだけでなく、今目の前にあることに「お金を稼ぐ」という最低限の条件をクリアしながら取り組むと、見えてくることもある。違う扉が開くこともあります。

 

白河さんにとって仕事とは?

−その1 世の中の「当たり前」が変わっていくさまを見る面白さがある

−その2 女性のやりたいことをはばむハードルを取り除きたい

−その3 自分が開けられる扉は開けて、次世代に道を開きたい

 

INFORMATION

『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(PHP新書/880円+税)。残業なしで、売り上げが倍増し、職場の雰囲気が良くなり、子育て社員がイキイキする。「働き方先進企業」のさまざまな実例を第一人者である白河さんが徹底解説。会社選びのガイドとしても役立つ一冊。

 

編集後記

大学卒業後、商社に就職し、その後は外資系金融などで14年間事務職として働いた経験を持つ白河さん。ご自身の就職活動についてうかがうと、「当時は“女性は3年くらいで結婚退職”という時代。なんとなく自分もそうなるんだろうと思っていました。実際、最初に勤務した商社は3年で辞めました。“結婚退社”ではありません。当時の社会の風潮では、それ以上働き続けるような雰囲気ではなかったんです。『働き続け、自分でお金を稼ぐのというのはいいことだな』と考えるようになったのは、外資系企業に入社後、活躍している女性の姿を身近に感じるようになってからです。ですから、私の就職活動についてお話をしても、読者の皆さんの役には立ちません。今の話をしましょう」と笑顔で、きっぱり。ブレない軸がありながら、たおやかな方でした。(編集担当I)

取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康

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