小沢一敬(スピードワゴン)

おざわかずひろ・1973年愛知県生まれ。高校中退後、フリーターを経て、お笑いの養成所で知り合った井戸田潤と98年にスピードワゴンを結成。2002年「M-1グランプリ」で敗者復活から決勝戦に進出。テレビ出演が増え、甘い言葉をささやくネタで人気を集める。多趣味で知られ、麻雀(マージャン)の腕はプロ級。音楽や野球、ゲームにも造詣が深い。また、読書好きで自宅には1000冊を超える本、3000冊を超える漫画を所有している。10年には初の小説『でらつれ』で作家としてもデビュー。12年には映画『メンゲキ!』の脚本も手がけた。現在はBS-TBS『法円坂ホラー研究会』、NHK名古屋『さらさらサラダ』、wowwow『シネマの世代 〜シェアハウスへようこそ』などにレギュラー出演中。2013年12月7日には『東京センターマイク vol.4 〜スピードワゴンと数組の漫才師〜』をしもきた空間リバティーにて開催する。

自分から「何かをやりたい」と行動に移したことなんてない

僕なんかが仕事について語っていいんですか? だって、僕は基本、「何もやりたくない」「家から出たくない」という人(笑)。自分から「何かをやりたい」と行動に移したことなんてないんですよ。お笑い養成所に入ったのもそうでした。15歳で家を出て、地元で友達とプラプラして、生活費がなくなったら建築現場で働くというような生活を続けていたんですけど、さすがに20歳くらいになると、周りが学校を卒業したり、結婚したりして定職に就き始めたんですね。一緒に遊んでくれるヤツが減って、弱ったなあなんて思っていたころに、友達とテレビを見ていたら、名古屋に新しくできるお笑い養成所で研修生を募集しているというCMが流れて。友達から「一緒にやらない?」と誘われて、「暇だし、やってみようかな」ということでコンビを組んだんです。

 

相方の潤とはその養成所で知り合いました。100組ほどのコンビがいて、ライブに出る5組ほどを選ぶために毎週オーディションがあったんですけど、潤のコンビも僕のコンビも毎回残っていたんです。僕は自分から人に話しかけるタイプではありませんが、潤は昔から人懐こくて、いつの間にか仲良くなりました。卒業後25歳の時、潤はすでに上京し、僕は名古屋にいたのですが、潤の当時のコンビが解散したということで、「一緒にやらない?」と電話がかかってきたんです。僕の方は最初にコンビを組んだ友達が辞めてしまい、ほかにやることもないので誰かに誘われるままにコンビの結成・解散を繰り返していた時期だったので、「いいよ」と答えたのですが、腰が重くてなかなか上京できなくて。しびれを切らした潤が、車で名古屋に迎えに来て、家財道具ごと僕を東京まで連れてきてくれました。あのとき潤が来なかったら、今でも名古屋にいたでしょうね。

 

上京後しばらくは売れなくて、芸人としての月収は3000円。28歳の時、「M-1グランプリ」で敗者復活から決勝に進んだのをきっかけに月収30万円になりました。いきなり100倍。この「M-1」も僕は出たくなかったんです。「芸に順番をつけるなんておかしい」ともっともらしいことを言っていたけど、実は現実を突きつけられることが怖くて逃げていました。でも、潤に「このままじゃ仕事もないし、出ようぜ」って説得されて、出た。出たら、準決勝で負けたけど、見てくれていた人から仕事が来るようになった。すべて言われたことをやっただけだったんです。

 

最近では小説や脚本を書くなどお笑い以外のこともやっていますが、それも人から「やってみる?」と言われたから、「じゃあ、やろうかな」という調子。受け身だし、「やりたくない」と言うことの方が多い。これは謙遜(けんそん)でも何でもなくて、事実として僕はホントにもう、「ダメなヤツ」なんです(笑)。ただ、ひとつだけずっと自分の中にあるのは、「物事を決めつけなくていい」ということ。「芸人として売れるにはこうしなければいけない」とか「何事もまずはやってみる」とか、そうしたければやればいいけど、別にそうじゃなくてもいいんじゃないかと思ってる。誰かが決めたイメージやルールに自分を縛りつけなくていいって。

 

というのも、放っておくと、人はすぐイメージに縛られてしまうんですよね。例えば、僕らが「あま〜い」というネタをやっていたとき、どこへ行っても「『あま〜い』をやってください」と言われました。最初は楽しいからやっていたけれど、だんだん「やらなければいけない」と思うようになって、お客さんも沸かなくなった。漫才もそうで、最初は自分たちが楽しみながらネタを作っていたのに、いつの間にか、「これをやれば、ウケるんじゃない?」に変わったの。すると、ウケない。

 

結局、自分たちが面白いと思うことをやらないと、ウケないんですよね。お客さんをバカにして、「僕たちに期待しているのはこういう笑いなんでしょ」と決めつけてしまった時点で終わる。だから、仕事でも何でも、僕はすべてその場で考えるようにしているんです。最初からあれやこれや考えすぎると、思い込みにとらわれて、ヘンな感じになってしまうから。

 

お笑いのライブもそうです。事前にいろいろ考えて「これを絶対に言おう」「これを絶対にやろう」と思っていても、考えていたことって忘れちゃう。そのときに焦って思い出そうとすると、気を取られて、その場に合わないことをやってしまったりする。間合いを読むには、用意してきたもので勝負しようとすると難しいんです。でも、経験がないと、用意をしないと不安なんですよね。だから、いっぱい失敗をしました。白状すると、最近になってようやくですよ。ちょっとリラックスしてライブに臨めるようになったのは。

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うまくいかないのを周りの人たちや環境のせいにしても意味がない

先日、ある番組のスタッフさんと初めて飲みにいっていろいろ話したんですけど、そのときに「この仕事でご一緒するまで、小沢さんのことずっと嫌いでした」と打ち明けられたんです。テンションが低めで何を考えているかわからないし、台本にケチをつけるような難しいタイプだと思われていたらしくて。「でも、誤解でした。今は好きです」って言ってくれて、ホッとしたんですけど(笑)。

 

確かにデビューしたころは「台本に書いていることは絶対に言いたくない」って思っていた時期もありました。「台本通りのことをやって何が面白いの?」なんてわかったような口をきいて。ところが、ある先輩が「それは違う」と。「作家さんはいい番組を作ろうと思って、この台本を何日も徹夜して書いている。その台本に書いてあることを言わないなら、それよりも何倍もすごいことを瞬発的に出さなければダメだ。台本通りのことをやりたくないなら、書いてあることは全部やった上でやりなさい」と言われ、その通りだと肝に銘じたんです。

 

仕事というのはひとりでやるものではないから、現場で空気を乱しちゃダメだというのはいつもありますね。一方で、周りに期待をしないというか、寄りかかりたくないと思ってる。だから、仕事がないときも、事務所のせいにしたりはしなかった。うまくいかないのを周りの人たちや環境のせいにしても意味がないし。

 

そう考えるのは、僕が育った環境が恵まれたものではなかったからです。裕福な家庭に生まれたわけじゃないし、みんなで悪いことをして自分だけ捕まってしまうようなこともあった。それでも、当時の友達に言わせると、「小沢は運がいいよね」って。高校もほとんど行かずに中退したけれど、家を出て、学校では出会えないいろいろな人たちと遊ぶようになって世界が広がった。上京して最初に仕事をもらった劇場がつぶれたり、うまくいかないことはいろいろあったけど、今でも芸人として仕事をできている。だから、基本、「環境って関係ないよね」と思っているところがあるんです。

 

僕は麻雀がすごく好きなんですけど、その理由は配牌(はいぱい・最初に配られた牌)が悪い人でも勝てるから。人生と一緒だなと思って。仮に裕福な家に生まれて、頭もよく生まれた人を「配牌がいい」とすると、貧乏で何も秀でたものがなく生まれた人は配牌が悪い。でも、負けが決まったわけじゃない。いるものを残し、いらないものを捨てて何かをもらう。「これが来たから、どうしよう」と繰り返し考えて進んでいく。そのうちに、勝てることもある。だから、麻雀が好きなの。どうなるかは自分次第だから。

 

もちろん、負けることもあるけど、麻雀に負けってないんですよ。例えば、今日負けたとしますよね。そこで麻雀をやめたら負けになるけど、明日やれば勝つかもしれない。これはあらゆる物事の鉄則。すべてのものを「まだ途中」と思えるようになったら、すごくラクになりますよ。

 

気づいたら、仕事じゃなくて麻雀の話になってたけど、いいのかなあ?(笑) 。僕はいつも思いついたことをしゃべっているだけで、深い意味はないから、皆さんはくれぐれも真に受けないでくださいね。最後に言いたいのは、「何とかなるのが世の中」ということ。「やりたいことがわからない」と悩む人も多いらしいけど、わからないなら、無理に見つけようとしなくても大丈夫。見つかったときにやりさえすればいいんです。

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INFORMATION

小沢さんの初めての小説『でらつれ』(講談社/税込み1470円)は、人生の岐路に立つ男女のさまざまな恋愛が描かれた16編からなる連作短編集。作品ごとに違うスタイルで物語が紡がれており、飽きずに一気に読める。「子どものころから本が好きで、いろいろな作品を読んできました。本を書くお話を頂いた時に、好きなジャンルで書こうとまず思ったんですが、好きなジャンルがあり過ぎて。じゃあ、全部書こうということになったんです」(小沢さん)。

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取材・文/泉彩子 撮影/鈴木慶子

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