学校やバイト先、SNSなどで「就活」が話題に上ることが増えてくると、「自分はまだ何もしていない!」「もしかして、出遅れている?」と感じる人もいるのでは? そんな皆さんの不安を払拭(ふっしょく)するために、今回は人事として新卒採用を20年担当、企業の採用担当者の視点にも詳しい曽和利光さんに、就活に出遅れを感じたときの巻き返し術をうかがいました。
プロフィール
曽和利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。
焦らないで! 出遅れ就活生が押さえておきたい3つのポイント
まずは、出遅れ就活生がこれから就活を進めていく上で、押さえておきたい3つのポイントを曽和さんから教えてもらいました。
ポイント1 売り手市場の理解を深め、「自分を求めてくれる企業」を探しにいこう
世の中にはたくさんの業界・企業があります。どこを受ければいいのかわからず出遅れた…そんなときは、業界ごとの「求人倍率」を見て、まずは「自分を求めてくれる企業」を探すことをオススメします。
求人倍率とは、「求人数」を「仕事をしたい人の数」で割ったもの。世の中にどれくらいの求人(仕事)があって、それにどれくらい応募(仕事をしたい人)があるかを表しています。つまり、1倍を超えれば、企業の求人数が仕事をしたい人の数を上回っていることになるのです。リクルートワークス研究所の「第34回 ワークス大卒求人倍率調査(2018年卒)」によると、2018年3月卒業学生の求人倍率は、1.78倍。すなわち「売り手市場」だったということになります。そして、この動向は、2019年卒以降も続くと言われています。
しかし、この売り手市場を細かく見ると、業界ごとに数字が大きく異なることがわかります。業界によっては1倍に満たない、買い手市場もあるのです。各業界の倍率を知らずにいると、選考に通らない場合も…。
そこで最初のスタートでつまずかないために、売り手市場で学生をより求めている業界・企業を受けてみるのもいいでしょう。あなたにピッタリな企業と出会えるかもしれません。
各業界の「求人倍率」はここをチェック↓
第34回 ワークス大卒求人倍率調査(2018年卒)
ポイント2 「人のつながり」を大事にして採用の足掛かりを見つけよう
近年、企業は「人のつながり」での採用を重視する傾向にあります。社員の知り合いや後輩で、自社に合っている人がいれば、社員に対して「紹介してください」なんて伝えている場合もあるんです。
そこで、身近な信頼できる先輩にOB・OG訪問をして、話を聞いてみてはいかがでしょうか。もしかするといい出会いにつながるかもしれません。
ただし覚えておいてほしいのは、先輩に会ったからといって必ずしも採用につながるわけではないということ。しかし、実際に働く社員の話を聞くことで、その企業のより深い魅力を知るいい機会にもなります。
ポイント3 企業に「自分の持ち味」を聞いてみよう
就活では、選考で企業に自分を伝える「自分語り」が重要になります。しかし、出遅れ学生の皆さんは、特にその経験が少ない可能性も。
そこで、もし1社でも面接などの選考に進んだ企業があったら、自分の印象についてフィードバックをもらいましょう。評価を直接聞くことで、自己分析にもなります。「これが自分の持ち味だ」と思っていることと、企業が持ち味だと思ったことは違ったりするものです。自分の持ち味が見えてくれば、自信にもつながるでしょう。
自己分析から面接準備まで、今すぐ始められるオススメの方法は?
これから就活を進める上で、具体的にオススメの方法はあるのでしょうか。「自己分析」「業界・企業研究」「エントリーシート(ES)・面接」でのポイントを詳しく紹介します。
1. 自己分析は「他人」からのフィードバックをもらうことが重要
自己分析には、2つのポイントがあると考えます。
1つ目は、他人からフィードバックをもらうことです。「自己分析」は、孤独に悶悶(もんもん)とワークシートをやっている人が多いですが、意外と自分のことは自分ではわからないもの。そのまま選考に臨むと、「自己認知が低い」と言われてしまう可能性も…。採用基準は企業によって違いますが、「自己認知」は共通した基準の一つです。ゆえに、あなたのことをよく知っていて、親身になってくれる友人、保護者、先生などから「自分はどういう人なのか」を聞いてみるといいでしょう。
さらに自己認知力を高めるために、積極的に自分に対するマイナス情報を聞くようにすることが2つ目のポイント。自己分析の最難関は、自分の欠点に気がつくことです。誰しもが持つ、欠点を認知することが改善へつながり、ひいては、社会人になってからの成長力にも関係してきます。怖がらずに欠点を聞きましょう。
2. 業界・企業研究は「目利きのできる社会人」のオススメを参考にする
出遅れ就活生が業界・企業研究するのはとても難しいと思います。知識がない状態から見極めるのは至難の業です。
そこで、身近な「目利き」ができる社会人に「自分にはどういうところが向いているのか」と業界・企業を見繕ってもらうのがオススメ。目利きのできる社会人とは、多くの業界と接点を持つ人のこと。例えば、人材、金融、マスコミといった業界で働く人は、業界を問わずサービスを提供しているので、いろいろな業界の特徴を知っている可能性が高いと言えるでしょう。
そういう社会人が周りにいないという場合には、「社会人が学生に勧める企業ランキング」や「上場企業で継続的に利益を上げている企業ランキング」など、就活以外のランキングでもいいので、社会人がオススメしている企業を見てみるのも一つの方法です。これらの企業は、学生認知度は低いけれど、業界シェアが高かったり、利益率が高かったり、といった魅力が詰まっている場合が多いです。学生が知らない「掘り出しもの企業」を見つけてみるのも視野を広げるコツです。
3. ESや面接はすごいことを伝える場じゃない!地味でカッコ悪くてもOK
ESや面接は、まずエピソード選びにつまずくことがあります。ここで頭に入れておいてほしいのは、企業の採用担当者が知りたいのは、「あなたの人となり」だということ。
ポイントは、「普通のこと」でもいいから「長い間続けてきた」ことの中で「努力・工夫」などが見え、「(最終的に)うまくいかなくても」いいから「苦労した」エピソードを選ぶこと。かっこよくないかもしれませんが、人間はピンチのときにこそ力を発揮する生き物。最後はダメだったとしても、そのとき自分の持てる力を余すところなく発揮したという話を伝えましょう。
また、「義務」として何かをやらなきゃいけない中で「状況をどう捉え、やってのけたのか」というエピソードは人となりを判断しやすいと思います。ここで言う義務とは、勉強だったり、生活のためのアルバイトだったり。自分がそれをやる意味を見いだす「意味づけ力」は、仕事をする上でのハイパフォーマンスにつながります。自己分析のところでも述べた「自己認知」の話と同様に、この意味づけ力も企業に共通する学生を見極める基準だと思います。
もう1つのポイントは、「具体的に話す」こと。固有名詞を言いたがらない学生が多いのですが、例えば「都内の飲食店でずっとアルバイトをしていました」では、詳細なイメージが伝わりませんよね。でも「東京駅構内の〇〇というコーヒーショップで3年間アルバイトをしていました」と言うと、グッと伝わりやすくなる。固有名詞が持つ情報量はとても多いのです。ESなどで文字数に制限がある場合は、数字や漢字を使い、一文を短くして工夫するといいでしょう。
出遅れても、あなたの座る席はきっとある
確かに、大手企業や人気企業は入りにくいかもしれません。けれども、そこは、もともと入りにくい。決して「出遅れてしまったこと」が原因で選考から落ちるというわけではありません。スタートに出遅れても、皆さんが座る席はきっとあるでしょう。広く目を向けられるようになれば「出遅れた」という感覚も自然となくなるはず。「自分を採用したいと思っている優良な企業もこんなにあるんだ」ということに早く気づいて、自分らしく就活を進めてほしいと思います。
就活が「うまくいかない」ときを乗り切る方法 ~ESが書けない、友達だけに内定が…。シーン別・マインドチェンジ術
取材・文/就職ジャーナル編集部 撮影/刑部友康
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