地元を離れて進学した多くの学生が就活時に悩むのが、“どちらで就職するか”問題ではないでしょうか。地元に帰るか都会に残るかは、企業選びに大きくかかわることですし、スケジュールや交通費のことも気に掛かります。
そこで今回の記事では、地元就職(Uターン就職)する場合と都会就職の特徴、経験者はどうしたのか、両立するコツを紹介しましょう。
目次
地元か都会か、先輩たちの就職の決め手は?
地元を離れて進学した先輩たちは、地元と都会、どちらで就活をしたのでしょう。就職5年以内の社会人にアンケートをしたところ、一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の大学に進学した人のうち、進学先に近い「一都三県のみ」で就活をした人は約3分の2(63.8%)、「両方で就活」した人が約2割強(21.3%)でした。「地元のみ」で就活した人は14.9%、およそ6人に1人でした。
回答者数が100人以下のため参考値ではありますが、3割以上の就活生が、地元で就活をしていたことがわかります。
では、就職した地域はどうかというと、実際に「一都三県」に就職したのは7割以上(72.5%)、残り2割が「地元」(19.6%)という結果でした。それぞれの地域に就職した決め手を見てみましょう。
一都三県に就職
- 給与水準が高く、職が多いので選択肢が多かったから(3年目/SI)
- 大学時代の友人や先輩が近くにいる(5年目/介護・福祉)
- 都会に住みたいから(2年目/自動車)
地元に就職
- 東京に行って、地元の魅力を知ったから。親から家族の事もあり、戻ってくるように言われた(5年目/銀行)
- 将来の夢のために、家賃がかからない親元でお金をためたかった(4年目/専門商社)
- 地元の方が人が温かいと思ったから(3年目/ファッション)
地元で就活するか都会で就活するか迷ったときに、押さえておきたい観点は?
どちらで就活をするか迷ったときに、どうしたらいいのか、就活のプロとして数多くの企業の採用・人材育成を経験し、現在は就活生向けの支援を手掛ける廣瀬泰幸さんに、迷ったときに押さえておきたい観点を聞きました。
プロフィール
オールウェイズ代表取締役・廣瀬泰幸(ひろせ・やすゆき)
慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、株式会社リクルートに入社。大企業からベンチャー企業まで1000社を超える企業の採用と人材育成を支援。その後、一部上場企業の人事部採用責任者を経て独立し、2010年のオールウェイズ設立以降、1000名を超える学生に就活コーチングを行っている。著書に『新卒採用基準』(東洋経済新報社)がある。
就活前に地元と都会の違いを把握しておこう
「地元での就職と都会での就職にはどんな違いがあるのかを、考えてみましょう。一般的に、都会は求人をする企業数が多く、職種の幅が広いという利点があります。多くの場合、企業規模が大きければ、国内外の各地に展開していたり、多様な事業を展開していたり、人生の選択肢が増えるケースもあるでしょう。地元に比べると給与水準も高い場合が多いです。
しかし、給与が高い一方で、物価も高く家賃などの支出が多くなります。多様な展開をしている企業なら、メーカーに就職して飲食店事業に携わることがあったり、本社は東京でも配属先の支社は知らない土地になったりすることもあるでしょう。
地元での就職は、家族や友人が身近にいて、慣れ親しんだ場所で地元貢献ができる良さがありますが、知り合いが多いことを窮屈と感じる人もいるでしょう。
地元と都会での就職のそれぞれの特徴を知っておくことは必要ですが、それがメリットになるかデメリットになるかは、人によって違うのです」
都会での就職、一般的な特徴
- 企業数や職種が多く選択肢が広い
- 大企業やベンチャー企業などもある
- 給与水準が高い場合が多い
- 生活費が高くなる場合がある
- 通勤や生活空間にゆとりが持ちにくい
- 頼りにできる家族や友人が身近にいない
地元での就職、一般的な特徴
- 家族や友人が身近にいる場合が多い
- 都会と比べ、家賃や生活費が安い
- 慣れ親しんだ環境で暮らせる
- 都会と比較し、企業数が少ない
- 地域によっては交通手段が少ない
- 周囲に知り合いが多く窮屈
どちらで就職するか迷ったときは、どうやって決めたらいい?
では、就職先で迷ったときはどうしたらいいのでしょう。
自分にとっての優先順位を見つけよう
「一般的に言われるメリット・デメリットよりも、大事なことは自分にとって何に価値があるか、どういう優先順位か、です」と廣瀬さん。
「親との関係や何が自分の人生で優先順位が高いのか、さまざまな事情で迷っていたり、価値観がまだ定まっていなかったりするなら両方やってみたらいいのです。就活をしながら判断していけばいいのではないでしょうか」
行動量を落とさなければ、就職の軸は見えてくる
「誰もが最初から、自分の就職の軸をわかっているわけではありません。いろいろな人に会い、さまざまな会社のことを知っていく中で、自分なりの興味や関心の方向、優先順位が見えてくるのです。逆に言うと、ある程度、就活をしてみないとわかってこないと言ってもいいでしょう。だから迷うなら両方やってみたらいいと私は思いますね。
就活の今だからこそ、失敗したり、『何か違うかも?』というズレを感じたりしてOKなのです。就活は、就職する前にいろいろ試行錯誤できる機会。その時間を有効に使ってください」
両立する場合に大変だったことは?解消するにはどうすればいい?
地元と都会の両方で就活をするとしたら、難しいのはどんな点でしょうか。
廣瀬さんは、「時間とお金の2点に集約されます」と指摘します。
実際アンケートでは、4割以上は「大変だったことは特にない」と回答していた一方で地元でも就活をした先輩たちが「大変だった」と回答したのも、この2点でした。
時間については「面接を受けに行く往復の時間」(4年目/消費者金融)などの選考参加に割く移動時間のことがほとんどでした。お金については「交通費の捻出が大変だった」(5年目/化学)、「新幹線代」(3年目/損害保険)といった交通費が課題となっていたようです。
両方で就活をする場合に障害となる「時間とお金」の問題は、どう解決したらいいのでしょう。
解消法(1)時間があるうちに動いてみよう
「就活スケジュールは、2020年度も昨年度と同じように3月から採用情報の解禁、会社説明会やプレエントリーが始まり、6月から選考開始になる予定です。このスケジュールをどう受け止めるかがポイントです。6月まで『時間があるからまだ大丈夫』と思って何もしない人と、『時間があるから今いろいろな情報収集ができる』と思って動く人とでは、大きく違ってきます。
また、情報を集めて満足してしまうかどうかもポイントです。
時間があるからこそ、動いてみましょう。情報の多くは与えられたものです。サイトを見ただけでなんとなくわかった気になりがちですが、それだけで満足してしまわず、インターンシップや説明会などを利用して自分の目で見ること、わからないことを質問してみること、人に会ってみることを大事にしてください」
解消法(2)機会はつくってもらう!ダメもとで聞いてみよう
情報の収集に関しては、地域差はありません。地域にかかわらず、Webでエントリーシートや履歴書を提出できる企業も多いため、どこに居ようとあまりデメリットはないのです。
障害となるのは、説明会などのように日時が指定されている場合でしょう。物理的距離がある分、大学の授業や他社との調整が難しいこともあるかもしれません。
「多くの学生さんが、与えられた機会の中で一生懸命やろうとしますが、説明会の日時に行けないのであれば、『この期間であれば地元に帰れるので、その機会にお時間を頂けませんでしょうか』と相談してみたらいいのです。断られたとしてもダメもとです。何もせずにあきらめてしまうか、取りあえず聞いてみてチャンスを広げるかは大きな違いになります。
私のこれまでの経験から言えば、地元企業の人事担当者の多くは、そうしたアプローチや学生からの問い合わせをむげにはしません。都合がつかないことはあるかもしれませんが、前向きに対応しようとしてくれるケースがほとんどでしょう」
解消法(3)予算を把握し、準備をしよう
両立のためにかかる交通費など就活費用は、どのくらい必要なのかを把握しておけば、アルバイトをしたり、親や家族に相談したり事前に準備がしやすくなります。就活を経験した先輩たちの、お金事情を参考にしましょう。
就活中はアルバイトに割ける時間も限られてきます。なるべく事前に貯蓄しておいて、就活中のアルバイトを控えておくと、説明会や選考に参加しやすくなり、就活に集中できるでしょう。
就活中もアルバイトを続けた先輩たちはどんなことに気を付けたのか、両立のコツはこちらを参考にしてみてください。
関連記事:就活中のアルバイト、先輩たちはどうしてた?両立で気を付けることは?
動いていれば、迷いは時間が解決してくれる
「地元就職と都会就職の両立は時間のやりくりが大変ではありますが、どちらにするかという問題もその時間が解決してくれるとも言えます」と廣瀬さんはきっぱり。
「実は時間と予算の問題は社会に出てからも常について回ります。どんなビジネスにも締め切りや予算はあるからです。
実際に動いていろいろな人に会い、企業を知るうちに、次第に自分なりの優先順位や価値観が定まっていきます。面接の時間が重なるなど本当にやりくりがつかなくなった段階では、どちらかに絞れるようになっているはずです。
就職のような大事なことを決めるときに、時間とお金を理由に、やってみる前にあきらめてしまうのではなく、迷っているなら、動いてみてください。それが皆さんの可能性を広げることになるでしょう」
【調査概要】
調査期間:2019年5月10日~13日
調査サンプル:就職活動を経験したことがある1~5年目の社会人500人(出身地域問わず)
調査協力:株式会社クロス・マーケティング
取材・文/中城邦子
撮影/鈴木慶子
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