キャラクター玩具が好調だが少子化は懸念材料。ハイテク玩具の開発、海外展開に注目
一般社団法人日本玩具協会によれば、2014年度における国内玩具市場規模は、前年度比9.0パーセント増の7367億円(店頭価格ベース)。過去10年で最高を記録した。カードゲームなどの分野では売り上げを落としたが、雑貨(対前年度比20.7パーセント増)、ぬいぐるみ(同11.6パーセント増)、ハイテク型トレンドトイ(同8.9パーセント増)などが伸びた。中でも飛び抜けて成長したのが男児キャラクター分野で、市場規模は前年より78.6パーセントも拡大した。
背景にあったのは、アニメ・ゲームなどの分野で多面展開している『妖怪ウォッチ』のヒットだ。バンダイの「妖怪メダル」「DX妖怪ウォッチ」「DX妖怪ウォッチ タイプ零式」が絶好調で、市場拡大に寄与した。また、『アナと雪の女王』関連商品が人気となるなど、キャラクターおもちゃが市場を引っ張ったと言えるだろう。
ただし、中長期的に見ると不安は残る。厚生労働省が発表した14年の推計出生数は100.1万人で、統計の残る1899年以降最小となった。第2次ベビーブームだった1973年(年間出生数209.2万人)と比べると、子どもの数は半分程度に減っている。今後も少子化が進むことが予想されており、国内市場が縮小する懸念は大きい。
そこで各社は、さまざまな対策を打って売り上げの維持・拡大を狙っている。中でも目立つのが、新技術を積極的に導入する取り組みだ。日本玩具協会が15年6月に開催した見本市「東京おもちゃショー2015」では、本物のリニアモーターカーと同様に磁力の力で浮上・走行する「リニアライナー超電導リニアL0系スペシャルセット」(タカラトミー)、内蔵カメラで撮影した静止画・動画をPCなどで見られる超小型ヘリコプター「ナノファルコンデジカム」(シー・シー・ピー)など、ハイテクを駆使したおもちゃが注目を集めた。さらに、人工知能や無線通信技術を活用した商品や、「ウェアラブル玩具」(キーワード参照)も有望だと考えられている。一方で、アナログ・レトロなおもちゃを大切にしようとする動きもある。「少子化だからこそ子どもには本格志向のおもちゃを」という親世代の思いを背景に、高級な木製玩具(積み木など)の人気は上昇傾向だ。
従来からあったおもちゃに新たな要素を加えて魅力を高めようとする試みは、今後も続けられるだろう。例えば、伝統的な遊びだった「ベーゴマ」に、パーツを組み合わせてカスタマイズする楽しみを追加した「ベイブレードシリーズ」(タカラトミー)は、「従来型玩具+新要素」の代表格。また、世界的なブームになりつつある「けん玉」もその一つだ。難易度の高い技のプレー映像を動画投稿サイトにアップロードし、互いに見せ合うといった楽しみ方が拡大。スポーツやショーの要素を取り入れたことで、子どもはもちろん、大人の間でも人気が高まっている。
海外展開も重要な課題。『妖怪ウォッチ』を手がけるレベルファイブは米国大手玩具メーカーなどと提携し、16年には北米展開を行うと発表(ニュース参照)。妖怪という日本的な文化を背景としたコンテンツを、いかに海外で普及させるか注目されている。また、海外の人気キャラクターを、日本企業がグローバル展開する事例もある。
おもちゃ業界志望者が知っておきたいキーワード
日本玩具協会が主催するおもちゃの見本市。毎年1回、新商品の発表や商談の促進を目的に開催されている。一般公開も行われており、業界に関心がある人なら訪れて損はない。15年は6月18日から21日までの4日間開催され、16万872人(うち、一般公開日来場者は14万1289人)が来場した。
日本玩具協会が定めた、おもちゃの安全基準。「けがをしやすい形状ではない」「飲み込んでのどに詰まらせる恐れがない」「可燃性が低い」「有毒な化学物質が使われていない」などの条件を満たした商品に与えられる。
身につけられる(=wearable)おもちゃのこと。最近では、「Apple Watch」のような時計型おもちゃが人気となっている。例えば、「Jewel Watch」(セガトイズ)は着せ替えができる画面デザインを多数用意し、女の子人気をつかもうとしている。
子どもではなく、大人をターゲットにしたおもちゃを指す。スマートフォンを使ってドローン(無人飛行機)を操作するなどハイテクを使った商品や、往年のアニメ・特撮番組のキャラクターをモチーフにした商品などが該当する。
遊びを通じ、子どもの知能・運動能力を伸ばそうとするおもちゃ。「知育玩具」と呼ばれることもある。タブレット型など、デジタル技術を生かした商品が増えている一方、「レゴブロック」(レゴ)のようなアナログ商品にも安定した人気がある。
14年に「ハローキティ」(サンリオ)が、15年には「黒ひげ危機一髪」(タカラトミー)が商品誕生から40周年を迎えた。新製品の開発も大切だが、古くからの定番商品を息長く売ることも、おもちゃメーカーにとって重要。
このニュースだけは要チェック <海外市場の開拓は大きな課題>
・『妖怪ウォッチ』シリーズを手がけるレベルファイブが、米国大手玩具メーカーのハズブロ社などと協力し、「妖怪メダル」をはじめとする商品を16年から海外で本格的に売り出すと発表。国内と同様、アニメ、携帯ゲーム機用ゲームなどとの「クロスメディア」を展開する予定。(2015年4月7日)
・タカラトミーが、映画『インサイド・ヘッド』の公開に合わせ、関連商品を世界各国で展開すると発表。同社は『インサイド・ヘッド』のグローバルな玩具商品化権を取得している。日本企業が、海外発キャラクターを世界市場に送り出す事例として注目したい。(2015年7月8日)
この業界とも深いつながりが<テレビ局と協力してキャラクター玩具を作ることも多い>
テレビ
アニメなどのキャラクターをモチーフにしたおもちゃは、各社のドル箱
教育
エデュケーショナル・トイの開発で、教育系企業と協力することも
電子部品
無線通信用の機器を組み込んだハイテクおもちゃが増える傾向にある
この業界の指南役
日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。
取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか