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理系のシゴトバ

掲載日:2012年4月11日

Vol.61 家電をよりリッチ・豊かに彩る
意匠性に富んだカラー鋼鈑を開発

淀川製鋼所 大阪工場 鋼鈑部 商品開発センター
テレビコマーシャルの最後に流れる「ヨドコウ♪」というサウンドロゴ。そのサウンドロゴが流れるコマーシャルを見て「物置の会社」と思っている人も多いのではないでしょうか。ヨドコウ=淀川製鋼所は、実は77年もの歴史を持った鉄鋼メーカーです。設立は1935年。当初は圧延やめっき鋼板のメーカーでしたが、徐々に製品を増やし、現在では鋼板をはじめ、建材、物置やガレージなどのエクステリア商品、圧延ロール、グレーチング(鋼製みぞぶた)など、工業製品から一般消費財までの多種多様な製品を提供しています。特に主力製品であるカラー鋼板の分野では、国内市場をけん引するほどまでに成長しました。また同社はメーカーとして製品を提供するだけではありません。建設工事の事業も展開しており、阪神甲子園球場や関西国際空港、京セラドーム大阪、さいたまスーパーアリーナ、最近ではリニューアルされた大阪駅などの屋根の工事なども手がけています。今回は主力製品であるカラー鋼板の開発を行っている淀川製鋼所 大阪工場 鋼鈑部 商品開発センターを訪れました。

家電向けカラー鋼板を設計・開発する

大阪工場 鋼鈑部 商品開発センターがあるのは、淀川の河口に広がる工業地帯の一角、大阪市西淀川区百島(ひゃくしま)。JR大阪駅から最寄り駅の阪神電気鉄道阪神なんば線福駅までは約15分。福駅から徒歩で16分の距離にありました。同社の主力工場である大阪工場では、カラー鋼板など表面処理鋼板および圧延ロールを製造しています。工業地帯でありながら、大阪工場の正門を出るとすぐ、淀川が目に入るため、さわやかな気分が感じられました。
鋼鈑部 商品開発センターのシゴトバを紹介してくれたのは、主任の坂田道太さん。商品開発センターでは家電製品や住宅設備機器、建材、エクステリア製品などさまざまな用途向けのカラー鋼板を開発しています。写真は商品開発センターの執務エリアです。
「私が担当しているのは、家電製品向けのカラー鋼板。お客さまが要求する色や性能を満たすような原板(鋼材)や塗料の選定、および2〜3年後を見据えた新しいカラー鋼板の開発に取り組んでいます」(坂田さん)
カラー鋼板とは、鋼板の表面に塗料を塗装し、色調などの意匠性、および機能を付加した鋼材二次製品のこと。
「元素材である鋼板同様、カラー鋼板も写真のようにロール状に生産した後、コイルでお客さまに納品されるものもあれば、次工程でシートに加工されて納品されるものもあります」(坂田さん)
カラー鋼板はさまざまな家電製品の外装に使われています。写真は冷蔵庫のドアです。
「家電製品向けのカラー鋼板の開発で今、最も求められるものの一つが意匠性です。例えば塗装した塗料が本物の金属に見える鋼板が欲しい、ピアノの外装のような真っ黒でつややかな鋼板が欲しい、などと言われることがあるのですが、それを塗装で実現するのは非常に困難なことなんです。それらの斬新な意匠性を持ったカラー鋼板ができたとしても、耐食性、加工性、硬度、鋼板と塗膜の密着性など、お客さまが求めるさまざまな性能が伴っていなければ元も子もありません。つまり意匠性と性能のバランスをうまく取って、お客さまが求める鋼板をどのように実現するか。そこがカラー鋼板の開発で最も難しいところなんです」(坂田さん)
サンプルができ上がったときはもちろん、既存製品の改良時にも、要求された性能がきちんと満たされているかさまざまな試験をします。写真は表面性測定機で塗膜表面の滑り性(摩擦係数)を測定しているところです。
「実際に商品として出荷された後でも、細かい改良は日々あります。例えばある製品をダンボールで梱包して輸送した際に、ダンボールがすれて外装に傷が入ってしまうことがあったとしましょう。このようなときも滑り性の試験を行います。摩擦係数を調べ、見た目は同じながらも、ダンボールがすれても傷がつかない程度の滑りやすい鋼板にするためにはどうすればいいか、検討するんです」(坂田さん)
滑り性試験のほかにも、折り曲げ試験、鉛筆硬度試験(※)などさまざまな試験を行い、性能評価を行います。
※塗膜の硬さを評価する試験。塗膜表面に対して45度にセットした鉛筆の芯を押し付けて動かし、傷の有無によりその硬度を鉛筆の芯の硬さ(6B〜6H)で表す。
写真は量産している製品が、きちんと要求された色調を再現しているか評価しているところ。
「色差計で色の数値を測定し、色調をチェックするのはもちろんですが、写真のようにカラーサンプルを用意して色を見比べることもあります」(坂田さん)
デスクでは新たなカラー鋼板の仕様を検討したり、実験結果の評価分析を行ったりします。
「カラー鋼板は加工される形状によって、材料の選定が変わります。だから製品を設計するとき、私たち開発者はどんなふうに加工されるのか、そのイメージを頭に描きながら取り組まなければなりません。折り曲げる加工をする場合、あまり硬い塗料だと塗装が割れる可能性があります。だからといって柔らかくし過ぎると傷がつきやすくなる。そのあたりをどううまくバランスを取るか、塗料メーカーさんとコミュニケーションをとりながら仕様を固めていくんです」(坂田さん)
「今、どんなことに携わっているか、お互いの進ちょく状況を報告する会議はひんぱんにあります」と坂田さん。打ち合わせは社内だけではありません。営業担当者とお客さまである家電メーカーを訪問することもあるそうです。
「お客さまの生の声やリアクションを直接、目や耳にすることができるのがいいですね。お客さまが本当に求めているものは何か、人を介さず、直接知ることができるんです。感謝の言葉を頂くこともあれば、厳しいことを言われることもあります。でもそれらすべてがまた次頑張ろうというモチベーションにつながるんです」(坂田さん)
ハタラクヒト
手がけた製品を普段の生活の中で目にできるのがうれしい
 社員を代表して坂田さんに「淀川製鋼所 大阪工場 鋼鈑部 商品開発センターはどんなシゴトバなのか。どんな人たちが働いているのか、どんなやりがい、魅力があるのか」などについて、お話をうかがいました。

 坂田さんが信州大学大学院工学系研究科物質工学専攻を修了し、淀川製鋼所に入社したのは2005年4月。
「材料メーカーを中心に就職先を探していました。ある日、就職情報サイトを見ていたら、ヨドコウという名前が目に入ったんです。あっ、物置のCMで有名な会社だと思い、ほかにどんなものを作っているのだろうと調べたんです。すると素材から一般消費財まで自社で製造していることがわかり、その幅広さにより関心が高まりました。ぜひ、ここに入りたいと思いましたね」

 入社後は半年間の製造現場の研修を経て、現在の部署に配属。以後、家電製品向けのカラー鋼板の設計、開発に携わっている坂田さん。
「いちばん、やりがいを感じる瞬間は自分が開発したカラー鋼板がお客さまに採用され、その製品が量販店で並んでいるのを見たときですね。自分の作った製品を普段の生活の中で目にすることができるのは、本当にうれしいことなんです」

 ただうれしいことばかりではありません。さまざまな苦労もあります。
「新製品の場合、テストではうまくいっていても、量産ラインではうまくいかないことも多々あります。実は塗料を平滑に塗るのは難しいことなんです。以前、量産ラインに回したとたん、塗布した面に塗料の泡立ちが原因で不具合が見つかったことがありました。そのまま不良が続けば、納期に間に合わなくなります。泡立たないようにするにはどうすればいいのか、再度実験し、改善することができました。このように量産ラインでしか確認できないこともある。そこが苦労するところでもあり、技術者にとっては面白いところなんです」

 塗料メーカーとの打ち合わせでは、学生時代に学んだ材料系の知識が役に立っています、という坂田さん。商品開発センターにはどのような出身専攻の人が働いているのか、聞いてみました。
「いろんな出身専攻の人がいますが、多いのは材料系と化学工学系です。とはいえ現在の仕事で必要な知識は、仕事を通して身につけてきたもの。あまり出身専攻にとらわれることはないと思います。上司、同僚、製造現場の人たちなど、職場の違いや上下関係を問わず、コミュニケーションが活発なシゴトバです。わからないことや相談したいことがあれば、いつでも気楽に話しかけることができる。風通しのよさは抜群ですよ」

国の重要文化財に指定されている施設も

1974年に国の重要文化財に指定されたヨドコウ迎賓館(兵庫県芦屋市)です。同建物を設計したのは米国ウィスコンシン州出身のフランク・ロイド・ライト。初代帝国ホテルの設計者としても有名です。ヨドコウ迎賓館は一般公開されており、誰でも気軽にライト建築の粋を味わうことができます。

淀川製鋼所にまつわる3つの数字

カラー鋼板を主軸に建材、エクステリア、さらには屋根などの工事の事業も展開している淀川製鋼所。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

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取材・文/中村仁美 撮影/福永浩二 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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