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企業TOPが語る「仕事とは?」

社会に出たら、どんな毎日が待ち構えているのだろう。どんな仕事の醍醐味を、やりがいを実感することになるのだろう。そこで、日本を代表する企業のトップに、これまでの仕事を振り返っていただいて、仕事に対する熱い思いや、忘れられない仕事の瞬間、仕事から学んだことや生きる哲学などを教えていただいた。

掲載日:2010年12月3日

Vol.24 西武グループ(西武鉄道株式会社・株式会社プリンスホテル) 代表取締役社長 後藤高志

国民生活に密接にかかわるからこそ、新しい取り組みが必要

西武グループの事業は多岐に及びます。例えば、鉄道・バスを中心とした運輸事業、ホテル・ゴルフ場などのレジャー事業、プロ野球の埼玉西武ライオンズ…。西武鉄道、プリンスホテル、西武バス、伊豆箱根鉄道、近江鉄道など、持株会社の西武ホールディングスの傘下には63ものグループ会社が名前を連ねます。

それぞれの会社がベストを尽くすことが、結果的に総合力につながる…そんなグループなんです。そのためグループ経営としては、部分最適が全体最適に直結するようなシステムを目指しています。そして、国民生活に大きく寄与している企業グループだという自負があります。それだけ国民の皆さんの生活に密着しているからかもしれません。鉄道事業にしても、ホテル・レジャー事業にしても、もうできあがった世界なのではないか、と考える人がいるようです。しかし、実際にはまったくそんなことはない、ということをぜひ皆さんに知っていただきたいと考えています。

例えば鉄道事業では、2008年4月に、9年ぶりの新型通勤車両を導入しました。まったく新しい鉄道車両を作ろうと、社内から約10名の女性を含んだ約30名のプロジェクトチームを作り、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を繰り広げて設計から新たに考えました。こうして生まれたのが、新しい発想をふんだんに取り入れた「スマイルトレイン」です。スマイルの名にふさわしく、やさしい顔つきにし、車両と車両の間に大型ガラスの貫通扉を使用して隣の車両が見えるようにするなど、斬新な車両となり、今や沿線住民の皆さんに、大変喜んでいただいています。

さらに、西武池袋線の連続立体交差事業を推し進めていて、開かずの踏切を大幅に解消し、利便性を高めることが目的です。また、駅前の整備など、まちづくりに大きく貢献するのも鉄道事業の特色で、地元の自治体や住民の皆さんと真剣な議論を通してまちづくりを推し進めています。鉄道事業というのは、息の長い事業で、10年、20年、もっといえば50年先を見据えた事業になります。

そして、地域の発展にも貢献しています。沿線の秩父、川越、西武園、多摩湖、西武ドームなど、地域の名所をバリューアップできないかを常に考えています。お客さまの人命をお預かりしている鉄道会社の使命は、安全・安心の輸送です。その安全・安心に付随する、あるいは公共輸送機関という役割を通して、たくさんの取り組みを推し進めているんです。

私はかつて銀行に勤めていましたが、お金の動きを通して国民生活に寄与することが銀行の役割でした。しかし今は、もっとダイレクトにそれを実感でき、ホテル・レジャー事業は、お客さまに非日常の中で、たくさんの笑顔、感動、喜びを味わっていただきたいという事業です。結婚式の披露宴など、ライフサイクルの中でとても大切な1ページに、ホテルスタッフとしてかかわり合いを持てることは、とても大きな醍醐味があると多くのスタッフが語ってくれます。

だからこそ、ソフト面では、グループビジョンを実現するうえで、グループとして取り組むべきと思われる活動や施策をグループ社員で話し合う「ほほえみ向上委員会」を作ったり、お客さま満足度調査を徹底的に行い、お客さまにお褒めいただいた社員を表彰するなど、さまざまな取り組みを進めています。また、老朽化した施設をいち早く修繕し、新しい価値を生み出そうと温泉を掘るなど、お客さまに喜んでいただくために、ハード面の充実にも挑んでいます。

グループ経営について、埼玉西武ライオンズでは、プロ野球の人気球団として毎年のシーズンをより楽しんでいただけるような経営を目指しています。伊豆箱根鉄道、近江鉄道では、地域との深いかかわりの中で、大きな働きがいを見つけてくれているスタッフが大勢います。また、ハワイ事業など、海外と接点があり、働くフィールドは大きく広がっています。どれをとっても、チャレンジングな仕事があると考えています。

挑戦しリスクを取るからこそ、成長できる

これからの日本は少子高齢化が進み、未来はあまり明るくない、などと報じられています。しかし、私はそうは思いません。日本には、世界の先端を行く技術、勤勉な国民性、治安の良さ、高い民度、さらには豊かな観光資源がある。世界に冠たる国なんです。これだけの潜在力を持った国はない。これをどう生かしていくか、という国家戦略、成長戦略が問われているのであって、決して悲観する必要はありません。

例えば、日本の観光立国化には大きな可能性があります。地方にある観光地は地方活性化の起爆剤になりえます。しかし、いわゆる観光以外にも、MICEと呼ばれる企業等の会議、イベント、見本市、コンベンションなどに大きなマーケットがあります。日本はアジア最大の先進国でありながら、コンベンションの開催がシンガポールに次いで2位なんですね。世界トップクラスを目指すためにも、まずはアジアナンバーワンになる必要があると考えています。すでにプリンスホテルは、多くの重要な国際会議に活用いただいていますが、幸いにも羽田空港の国際化といういいニュースがありました。今後が楽しみです。

また、今の時代の重要なキーワードのひとつである環境問題に関しても、鉄道はクリーンインダストリーの典型です。鉄道は地域経済の発展に貢献できるだけでなく、今や世界の注目を集める産業になっています。アメリカにしても、中国にしても、ブラジルにしても、鉄道網の敷設や充実が国家の重要な成長戦略です。そして鉄道事業の先進国といえば日本。日本ほど鉄道が私企業として発展した国はない。細やかなネットワークと鉄道と組み合わせたバス事業と併せ、世界に冠たるビジネスモデルなんです。そういう可能性を秘めている国であることも、ぜひ知ってほしいと思います。

銀行員だった私の20代は、生意気でした(笑)。若気の至りで上司につっかかることも、再三ありました。うまく気持ちが伝わらなくて、もう辞めてしまおうかと思ったこともある。でも、その都度、いろんな先輩がアドバイスをくださって。短絡的に考えるな、自分のことを大切にしろ、と。よき上司、よき先輩に恵まれたことに本当に感謝しています。

社会に出たらまず大事なこと。それは基本をしっかり身につけることです。そのためには、しっかり勉強しないといけない。業務はもちろんですが、それ以外でも勉強した方がいい。それは間違いなく仕事に生きます。それこそ学生時代はラグビー漬けだった私ですが、社会に出てからはずいぶん勉強しました。その姿を見て、母親が驚いたほどで(笑)。米国の経済学者ガルブレイスの著書を原書で読んだり、会計学の勉強をしたり。学生時代の教科書が、思いも寄らない発見をくれたりもしました。自分なりに勉強をしていく中で、自分の仕事に思い入れが出てくることにも気づきました。

そしてもうひとつ大事なことは、新しいことに前向きにチャレンジする、リスクに挑むということです。背伸びをしてジャンプして、ようやくギリギリ手が届く。そんな目標を持ってチャレンジをし続けた人は大きく伸びていく。実際に私自身、常にその意識を持っていました。成長の過程では、苦しいこともあります。つらいこともある。でも、そこから逃げないことです。真正面から立ち向かっていけば、必ず局面は打開できます。それこそ、朝の来ない夜はない。チャレンジをしない、リスクを取らない人間は成長しません。チャレンジをする、リスクを取るからこそ、物事は成し遂げられる。ぜひ覚えていておいてほしいと思います。

■PROFILE
1949年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。72年、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2000年、みずほホールディングス執行役員。04年、みずほコーポレート銀行取締役副頭取。05年、西武鉄道代表取締役社長。06年、西武ホールディングス代表取締役社長。07年より西武ライオンズ取締役オーナー。
■新人時代
われながら面白い新入社員だったと思います。今でもそうですが、しがらみや前例にとらわれるのが、あまり好きではないんです。本当はもっといいやり方があるんじゃないか、といつも考えていました。支店に配属になって、こうした方がいいんじゃないかと思うことを提案したり、レポートを支店長に出したりしていましたね。
■プライベート
休みの日でも、会社にかかわるホテルやリゾート、鉄道の現場に出向くことが多いですね。家で過ごすときには、本を読んだり、近所を散策したり、テレビを見たり、とのんびり過ごすようにしています。ゴルフも好きですが、最近のお気に入りは4年前に40年ぶりに再び始めたスキーです。何もかも忘れて、頭の中を真っ白にできるのがいいんです。写真は、視察に出向いたスキー場にて。
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取材・文/上阪徹 撮影/刑部友康 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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