一般的に理系は就職に有利と言われることがありますが、専攻によってバラツキがあるようです。例えば「生物・農学専攻の就職はほかの専攻に比べると難しい」という声も聞かれます。実際のところはどうなのでしょうか?
生物・農学専攻の学生が就活をスムーズに進めるには、どのように考え、どう行動すればいいのでしょう?理系学生を担当するリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーにうかがいました。
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目次
生物・農学専攻の学生は、就職が難しいって本当?
生物・農学専攻の就活は、ほかの専攻の学生に比べてやや難易度が高い傾向にあります。
その理由の一つは、学生側の「気持ち」です。生物・農学は研究で生き物を扱う機会が多く、ほかの専攻と比べると時間の拘束が比較的長い傾向にあります。研究がピークになると、学生が交代で研究室に泊まり込むこともあるようです。
自身の研究や学びに対する投下時間が長いことから、生物・農学の学生は「これまでの学びを無駄にしたくない。仕事でも生かしたい」という気持ちがほかの専攻の学生よりも強い傾向にあります。そのため、多くの学生が似たような企業・ポジションを志望することになり、結果として競争が激しくなっています。
生物・農学専攻の学生の多くが志す食品・農林水産・製薬・化粧品業界などはマーケットがすでに成熟している上、専攻が生かせる職種も限られています。少ない求人数に多くの学生が殺到するため、さらに倍率が上がり、有名メーカーなどでは倍率が何千倍にも跳ね上がり「超狭き門」になっているケースも見受けられます。
一方で、理系学生ならではの経験やスキルを評価し、歓迎する業界は多く、理系学生を積極採用する業界・企業は少なくありません。
例えば、研究などを通して、問題や課題を正しく思考できるロジカルシンキングや、物事を数値的な正確さや論理で考える力、PDCA(※)を回しながらより精度の高い結論を導き出す力などが備わっていると評価されています。専攻以外の業界にも視野を広げれば、可能性もぐんと広がります。
ただ、そのような業界・企業に目を向けず、専攻をストレートに生かせる業界・企業ばかりに応募し続けた結果、途中で応募先がゼロになってしまった…と悩む就活生は少なくありません。自身が置かれた状況を冷静に捉え、戦略を立てて就活に臨むことが重要です。
(※)…Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセス
生物・農学専攻の学生が就活の前に考えておきたいこと
上記の理由で、生物・農学専攻の学生が、専攻を生かして就職できるケースはそう多いとは言えません。
就活をスムーズに進め、自身の希望や強みなどに合った内定を得るためには、以下の視点で応募先を考えることが大切です。
本当に専攻を生かして働きたいのか、今一度考えてみよう
前述のように、生物・農学専攻の学生は、研究や実験に費やしてきた時間が長いため、ほかの専攻の学生に比べて「学んだことを仕事で生かしたい」と考える人が多いのが特徴。大学院生の場合は、特にその傾向が強いようです。
もちろん、専攻を生かしたいと考えるのは当たり前のことであり、それだけ真剣に学問に打ち込んできたのだと思いますが、本当にほかの道の可能性はないのか、もう一度考えてみるといいでしょう。
研究内容をそのまま生かせなくても、研究や実験で培った学業に対する姿勢や、研究プロセスに関する知識やノウハウなどは、ほかの分野でも十分に生かすことができます。もし「せっかく学んだことだから」「多くの時間とお金をかけてきたのだから」という理由だけで専攻を生かせる業界を志望しているのであれば、専攻とは異なる業界・企業の可能性についても検討してみましょう。
専攻を生かせる業界・職種に応募しつつ、別の業界にも目を向けてみよう
専攻を生かせる業界・職種が第1志望群であれば、別に第2志望群、第3志望群を持っておくと安心です。
そのためには、まずは自己分析が大切。自分が働く上で大事にしたいこと、自分の強みや持ち味などを洗い出し、それがかなえられる業界や職種がほかにないか、考えてみましょう。
例えば、「チームで協力し合う仕事に就きたい」「一つのことにコツコツと取り組むのが得意」などの思いや特性を持った人であれば、研究職だけでなくSE(システムエンジニア)なども候補になり得ます。専攻にこだわり過ぎず、このような「新たな可能性」もぜひ検討してみてください。
そして、専攻を生かせる業界・職種への応募と並行して、自分の思いや特性が生かせる業界・職種も併願することをお勧めします。食品・農林水産・製薬・化粧品業界などの理系職は競争率が高いと予想されるため、第1志望群の応募先が減ってきたら、第2、第3志望群の応募を増やしていくといいでしょう。
生物・農学出身の先輩たちの就活事例を紹介!
生物・農学専攻で、自身の思いにしっかり向き合い就活の軸を決めて走り切った結果、自分に合った内定先に出会えた先輩の事例をご紹介します。ぜひ先輩たちの紆余(うよ)曲折と決断を参考に、視野を広げてみてください。
Case1:選考が生かせる業界とほかの業界を併願し、納得のいく就職先に出会う
大学・大学院と生物学を専攻し研究を進めてきたAさん。研究が大好きで、6年間みっちり取り組んできた研究内容を仕事でも生かしたいと、食品メーカーを志望していました。
しかし、キャリアアドバイザーと対話する中で、「研究を通して未知のことを明らかにしたり、失敗を分析して成功につなげたりするのが好きで、計画を立てて効率的に研究を進めるのが得意」であることがわかりました。
その対話を通して「あくまで食品業界が第1志望だが、自分の強みや持ち味を生かせるならば、必ずしも食品業界でなくてもいいのかも」との気づきが得られ、第1志望を食品業界、第2志望を強みが生かせそうなIT業界、半導体業界として就活をスタート。食品メーカーの研究職からも内定を獲得しましたが、最終的には「自分の活躍の影響範囲がより広い業務にかかわりたい」と半導体メーカーの生産管理職に就職を決めました。
Case2:化学メーカーに絞って応募先がゼロに、視野を広げて新たな可能性を探し内定を獲得
大学院で生物科学を専攻しているBさん。研究テーマをフルに生かせそうな化学メーカーに絞って応募したものの、選考に落ち続け、6月の時点で応募先ゼロの状態になってしまいました。
そこで、「なぜ化学メーカーなのか」をあらためて聞いたところ、「ずっと勉強してきたからほかは考えられない」との答え。そこで、どういう点にやりがいを覚えたり、熱中したりしてきたかをヒアリングしながら思いをひもとき、「研究結果を数値で示すのが好き」「PDCAサイクルを回しながらより精度の高い結論を導き出すのが好き」「計画を立てて着実に研究を進めていくのが得意」という強みや特性を洗い出し、それに沿って視野を広げて応募先を探しました。
途中、修士論文の中間発表と就活とが重なり、就活を中断せざるを得なかった時期もありましたが、最終的には半導体メーカーの開発職に内定。「専攻を生かすことしか考えていなかったが、視野を広げたことで自分の新たな可能性に気づけた」と喜んでいただきました。
Case3:志望理由をひもといて説得力を上げ、第1志望の食品メーカーに内定
大学で生物学を専攻していたCさん。「勉強してきたことを生かしたいから食品業界を志望しているが、競争率が高いので受かるかどうか心配」とリクナビ就職エージェントに相談に来られました。
なぜ食品業界がいいのか質問すると、「今まで勉強してきたから」との答え。そこで、そもそもなぜ生物学を専攻したのか、高校時代にまでさかのぼりヒアリングしました。
すると、もともと数学が得意だったが、机上で数式を解くよりも自ら手を動かして実験し、結論を導き出すのが好きで、生物学の道を選んだことが明らかに。大学では、主に食品の遺伝子組み換えの研究を行い、「食品は人々が口にして、健康な体をつくるもの。その食品の質そのものを高めたい」という熱い思いを持っていることがわかりました。
食品業界に対する漠然とした思いが言語化できたことで、それを志望理由として伝えたところ、順調に選考が進むように。そして、第1志望である食品メーカーの生産管理職に就職が決定しました。
生物・農学の担当キャリアアドバイザーがいる就職エージェントを活用するのも方法
専任のアドバイザーがマンツーマンで就活をサポートする「就職エージェント」。職業選びに悩んだときもアドバイスを受けることができます。
例えばリクナビ就職エージェントでは、理系の専攻ごとに特化したアドバイザーが付き、就活をフォロー。理系学生全般の就職動向をつかんでいる上、生物・農学専攻の先輩の就職事例も多数保有しているので、職業選びに関する詳細な情報やアドバイスがもらえます。就活がうまく進められるかどうか不安を抱いている方は、ぜひリクナビ就職エージェントの活用を検討してみてください。
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取材・文・編集/伊藤理子