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掲載日:2013年4月1日

Vol.166 食品編

コスト増と値下げ圧力の板挟みを避けるため、各社は海外進出や高機能食品の開発に注力

スーパー・コンビニのPB商品などがシェアを拡大し、価格競争が激しくなる傾向に。そこで各社は、食品のネット直販など新たな販売チャネルの開拓や、高機能食品への取り組み強化などを進め、「コスト増」と「値下げ圧力」の板挟みを避けようとしている。

経済産業省の「工業統計調査」によれば、2010年における「食料品製造業」の製造品出荷額は24.2兆円 。前年(24.6兆円)に比べ、1.4パーセント減となった。人口減少・高齢化社会の到来によって日本人の食料消費は減少が続くと見込まれており、国内の食品市場は縮小傾向だ。

コスト面でも厳しい状況が続いている。12年末から本格化した円安によって、小麦・大豆などの原材料価格が上昇。また、原油高によって原材料の輸入コストもかさんでいる。そのため、食品メーカーは製品の値上げを相次いで表明。ただし、コスト高を小売価格に転嫁できるのは、競争力が高い商品に限られるのが実情だ。冷凍食品など、競合メーカーが多くて小売店での特売が常態化している品目では、利益を出すことがますます難しくなるだろう。

不況によって消費者の節約志向が強まっているのも気がかりだ。安価なPB(Private Brandの略。小売業者が企画し、メーカーに生産を依頼した独自ブランドのこと)商品が人気を博しており、食品メーカーのシェアを奪っている。さらに、近年の小売業界では統合が進み、スーパーやコンビニが強大な販売力を背景にして価格交渉力(バイイング・パワー)を強めていることも、値下げ圧力につながっている。つまり、原料の供給元である「川上」ではコスト増、商品の販売チャネルである「川下」では値下げ要求が続くという、板挟みの状態なのだ。

こうした中、各社が力を入れているのが海外進出だ。各食品メーカーは、中国や東南アジア、東欧、南米など、若年層の人口増加が期待される地域で積極的な事業展開を進めている。特に、アジア諸国は大きな焦点。地理的にも食文化的にも日本と近く、また、急激な経済成長によって市場拡大も期待されている。現在は円安傾向になっているとは言え、広い視野で見ればまだまだ円は高い。そこで各社は、豊富な資金力を生かし、アジア企業の買収などによって販路拡大を目指している。また、日本食に対する信頼感・健康イメージを背景に、先進国や、新興国の富裕層を取り込もうとする試みも加速。しょう油や緑茶といった商品は海外での売り上げを順調に伸ばしているところだ。

高付加価値商品を強化し、利益拡大を目指す動きも活発である。その代表格が、特定の保健機能成分を含む「特定保健用食品(通称トクホ)」。また、「低カロリー」や「減塩」といった健康づくりを支援する食品の分野も、新商品が次々と生まれている。こうした商品は価格競争に巻き込まれる危険性が小さく、健康・美容マーケットの顧客を取り込む効果もあるため、各社が力を入れているのだ。

現在、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の行方に注目が集まっている。仮に日本がTPPに加入し、加盟国における関税が撤廃された場合、食品原材料の供給ルートは大きな影響を受けるだろう。また、食品の輸出には追い風となる半面、安価な輸入食品が増えて国内メーカーの脅威になる危険性もある。今後も、ぜひ関連ニュースに注目しておこう。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

食品メーカーは新たな「ライバル」とも競争中

地域の名産品 地方の名産品がネット通販などでも買えるようになり、全国に販路を拡大。食品メーカーのシェアを奪っている。
中食(なかしょく) いわゆる「デパ地下」などで売られている中食(家で食べるように売られる総菜や弁当類)も、強力なライバル。
PB食品 「セブンプレミアム」、「トップバリュ」といったPB食品は、低価格を武器にシェアを拡大している。

【このニュースだけは要チェック!】

アジアにおける生産拠点の新・増設に注目

・山崎製パンが、インドネシアのジャカルタ近郊に工場を新設すると発表。13年中に建設し、14年初から本格稼働の予定。所得水準が上がり、食生活の変化によってパン食が急速に普及しているインドネシアで、食パン・菓子パンの拡販を目指す。(2012年10月30日)

・ブラジルにおける日清食品ホールディングスと味の素の合弁会社「日清味の素アリメントス社」が、ブラジル北東部のペルナンブーコ州で新工場を稼働。ブラジル・アルゼンチン向けに、即席麺事業の拡大を目指している。(2012年11月13日)

この業界の指南役
日本総合研究所 マネージャー 奥田宗臣氏
日本総合研究所 マネージャー 奥田宗臣氏
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。ヘルスケア・医療関連ビジネス分野における民間企業の事業戦略策定・実行支援などに従事。近年は、医薬品・医療機器メーカーの新興国市場を中心に、マーケティング戦略立案支援、営業力強化のコンサルティングを軸にした活動を展開中。
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取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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