優良企業・業界とは?隠れ優良企業・業界の見つけ方【シンクタンク研究員が解説】

多くの企業と日々接しているシンクタンク・日本総合研究所の研究員に、「優良業界ってどうやって探したらいいの?」「その中で優良企業を見つけるためのポイントは?」など、聞いてみました。

また、世の中には、それほど知名度は高くなくても、独自の強みを持ち成長を続ける「隠れ優良企業・業界」がいくつもあります。こうした企業や業界に目を向ければ、就職先選びの選択肢は大きく広がるはず。具体的な業界名も紹介しているので、ぜひ参考にしましょう。

日本総合研究所・吉田賢哉氏株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 
吉田賢哉(よしだ・けんや)

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

シンクタンク研究員が考える「優良業界」とは?

まず、「優良業界」には3つの条件があると私は考えます。

【条件1】業界の規模が大きい、あるいは拡大中である

例えば、市場規模が100億円の業界で半分のシェアを獲得しても、その企業は50億円規模にしか成長できません。一方、市場規模が1兆円の業界であれば、10パーセントのシェア獲得であっても、その企業は1000億円の売上が得られます。

市場規模が小さい「ニッチ業界」にもそれなりの良さがあるのですが、一般的には、市場規模が十分に大きな業界の方がビジネスチャンスが多いと言えます。また、規模が頭打ちの業界より急拡大している業界の方が、企業が成長する可能性も高く、従業員にとってもやりがいや働きやすさを感じやすいでしょう。

【条件2】他社との競争が激しくない

多くの企業が参入し、熾烈(しれつ)な競争を繰り広げている業界では、売上を伸ばすのもひと苦労です。また、売上を確保するために値下げ競争に陥る危険性が高く、利益も得づらいでしょう。一方、少数の企業による寡占化・複占化が進んでいる業界の場合、競争は比較的穏やか。そのため、利益が得やすくて「おいしい業界」だと言えるでしょう。

【条件3】取引先に対して有利な立場を築きやすい

世の中には、取引先に対して有利な立場に立てる企業があります。

例えば、ある商品を生産する企業が業界内にA社だけしかなく、その商品を仕入れたい企業が他業界に100社あったとしましょう。するとA社は、「ある1社が自社の商品を買わなかったとしても、他の99社に売ればいい」と強気に出られます。一方、仕入れる側の企業は「A社から商品を仕入れられなければ、商売に大きな影響が出るかもしれない」と恐れます。そのため、A社は有利な立場で価格交渉などができるのです。

上の3条件を満たしている業界の中には、学生の皆さんがよく知っている業界もありますが、一般的にはあまり知られていない業界もあるのです。そうした業界が、まさに「隠れた優良業界」として狙い目になると私は思います。

オフィス街風景

優良企業とは?「優良業界=優良企業」とは限らない!?

「優良業界の中にある企業は、全部優良企業なの?」と思うかもしれませんが、それは別の話になります。同じ優良業界の中にあっても、優良企業もありますし、そうとは呼べない企業もあります。そこで、次は優良企業の条件についてお話しします。

【条件1】売上が拡大中、あるいはずっと安定していて、収益性が高い

売上が減少しているようでは、「優良企業」とは呼べないでしょう。また、単に売上が伸びているだけでなく、しっかりと利益を得ていることも大切です。

【条件2】常に新しいことに挑戦し続けている

企業が売上を伸ばすためには、常に挑戦し続けなければなりません。例えば、商品開発や海外進出、技術開発などに投資を行うことで「次世代の商売の種」をまき、育てることが求められます。

【条件3】「ステークホルダー」(利害関係者)に、価値提供や利益還元をしている

利益を上げたら、顧客や従業員や株主といったステークホルダーに還元しなければなりません。そうでなければ、優秀な従業員が退社したり株主から見放されたりする危険性があるからです。また、取引先などから法外な利益を得ようとするのもNG。一時的に高い収益が得られたとしても、長期的には信頼を失って大きな損失を被ってしまうからです。その上、近年は企業が地域社会などに対して社会的責任を果たすことも求められています。

上で紹介した3条件は、それぞれ関連しています。もし、売上が落ち込んで利益が出なくなったら、成長のための投資はしづらくなります。すると、企業は持続的な成長が不可能になり、さらに利益が出しづらくなるでしょう。そうした状況が続けば、従業員の待遇が悪くなって優秀な人材が退社したり、利益還元が不十分だと株主から見放されて資金調達がしづらくなったりするに違いありません。そうして、事態はより悪化していくわけです。反対に、売上と利益が拡大し、それを元手に未来への投資を続けて業績を伸ばせば、ステークホルダーから支持されてさらに成長しやすい環境が整うでしょう。

学生さんの中には、給与額や休日数といった待遇面ばかりに関心が向く人も少なくないでしょう。従業員もステークホルダーの一員ですから、「従業員にどれだけの利益が還元されているか」という視点は大事です。ただ、それだけに注意を奪われてはいけません。従業員の待遇が良くなるためには、その企業がしっかりと利益を上げ、取引先や株主などと友好関係を築いていることが大切なのです。3条件のそれぞれに、幅広く目を配りましょう。

隠れ優良企業・業界の見つけ方3選

それでは、いよいよ本題です。隠れ優良企業・業界はどうやって見つけたらいいのでしょうか?オススメの方法を3つ紹介します。

インターネットや書籍で情報収集

まずは、インターネットや書籍などを使って情報を集めるといいでしょう。リクナビなどの就活情報サイトや企業ホームページで「会社概要」や「IR情報」などを見て、売上や利益、従業員数などの推移をチェックしましょう。

また新聞やビジネス誌などでは、各業界・企業の初任給や生涯年収、顧客満足度ランキングなどの記事が作られることもあります。これらを読めば、業界・企業の成長性や安定性、待遇といった情報がある程度わかります。

企業の先輩社員など、人から話を聞く

その企業が技術開発などの投資に対し、どれだけ積極的か。あるいは、従業員や取引先にどの程度利益還元をしているかなどの情報は、インターネットや書籍などではなかなか手に入れられません。

こういう際に役立つのが、人を通じた情報収集です。その企業に勤めている先輩社員などから話を聞けば、リアリティーのある情報が得られることでしょう。

また、あなたの家族や親戚、知人の中には、社会経験を持つ人もいるはずです。もしその中に、志望業界に近い場所で仕事をしている人がいたら、参考になる話が聞けます。

同じ業界の複数の企業を比較して考察

1つの企業について調べてみても、その企業がどんな状態なのかはわかりづらいもの。そこでオススメしたいのが、複数の企業を比較することです。

ある業界で代表的な企業を2~3社取り上げてさまざまな情報を比較すれば、各企業の特徴や業界全体の成長性がぐっとわかりやすくなります。また、その業界に属する企業が集まって作られた「業界団体」もぜひチェックしておきましょう。業界全体の売上高や顧客数などを公開しているところが多く、参考になるデータが得られます。

優良業界・企業を見極める視点は、1つではありません。いろいろなチャネルを使って多彩な情報を集め、それらを組み合わせ、比較しましょう。大切なのは、多角的な情報収集に努め、1つの視点・指標をうのみにせず判断することなのです。

【具体例】隠れた優良業界の紹介

【優良業界の条件】

1. 業界の規模が大きい、あるいは拡大中である
2. 他社との競争が激しくない
3. 取引先に対して有利な立場を築きやすい

【優良企業の条件】

1. 売上が拡大中、あるいはずっと安定していて、収益性が高い
2. 常に新しいことに挑戦し続けている
3. 「ステークホルダー」(利害関係者)に、価値提供や利益還元をしている

優良企業については、個社をそれぞれ調べていくことが重要になりますが、優良業界については、まずはどんな業界があるのか知る必要があります。特に、前述した通り、一般的にはそこまで広く知られていなくても、優良業界と呼ばれる業界はたくさんあります。

そこで、以下の記事では上記3つの条件に当てはまる「隠れ優良業界」をシンクタンク・研究員の方に教えて頂きました。ぜひ、業界を選ぶ際の参考にしてみてください。

・世界で活躍する日本企業を支える『油空圧業界編』はこちら

・高い技術力を誇る『航空機部品業界』はこちら

・需要の高まりが注目を集めている『ジェネリック医薬品業界』はこちら

・専門性の高さからニーズが高まっている『ファシリティマネジメント業界』はこちら

※他の業界についても随時更新予定

 

取材・文/白谷輝英
撮影/平山 諭


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