マレーシアにある日系企業の拠点に勤務。現地では、社内の仲間や顧客、駐在員仲間とのゴルフや日々の食事が楽しみ。
極力知り合いだけと仕事をしようとする
はじめまして。ブンガラヤです。マレーシアにある日系企業の拠点に勤務しています。
こちらのオフィスでは、約1割の日本人を除くと、あとは皆マレーシア人です。ただし、マレーシアは多民族国家であるため、その内訳は、マレー系マレーシア人と中国系マレーシア人が約4割ずつ、残り約2割がインド系マレーシア人となります。取引先や顧客としては、日本人が約2割、欧米人が15パーセント程度、マレー系マレーシア人と中国系マレーシア人が約3割ずつとなり、インド系マレーシア人が残りの5パーセント程度でしょうか。仕事で使う言語は、日本語6割、英語4割といった感覚ですが、現地スタッフと日本人スタッフとの間に“情報格差”が生じないように配慮して、私と日本人スタッフとのメールのやりとりを、できるだけ日本語ではなく英語にするように気をつけています。
マレーシアの仕事の仕方で特徴的なのは、初対面の相手やあまり知らない相手と仕事のやりとりをするのが苦手なこと。とかくよく知っている相手とだけで仕事を進めようとします。例えば、取引先の会社に確認しなければならない案件があるときなども、当該部署に直接確認せずに、自分の知り合いにちゃちゃっと聞いて済ませようとしてしまうのです。そこで、特に相手方のコンセンサスを得た上で仕事を進めなければならないときは、「誰に確認を取ったのか」「個人的な確認ではなく、会社としてオフィシャルに確認したのか」といった点を詰めておきます。そうしないと、あとで話が通っていないということにもなりかねないからです。
また、役職に対する階層意識が強く、上下関係の縛りの中で仕事をしている点も目を引きます。マレーシアでは、ビジネスの場面に限らず、目上の人を敬う傾向が日本よりもはっきりしているようで、役職のレベル感の異なる同士でミーティングを行うことは敬遠されるようです。そのため、マネージャーがジェネラルマネージャーに面談したいと思っても、アポイントがなかなかとれなかったりします。私自身、目上の役職の人にアポイントを取りたいときなどは、自分の上司にも同席してもらうことにして、上司の名前でアポイントを取るなどの工夫をしなければならないくらいです。ただし、「目上を敬う」と言っても、「年功序列」というわけではありません。ビジネスの場面では、あくまでも「役職主義」なので、年下でも役職が上なら、やはり気をつかわなければならないのです。
ただし、個人的に仲良くなりさえすれば、役職とは関係なく気軽なやりとりができるようになるのが、面白いところ。これはという相手に対しては、お茶に誘ったり、向こうのオフィスに遊びに行くなどして親しくなっておくようにしています。仲良くなった上であれば、聞きたいこともさっと気軽に尋ねられるからです。アポイントもとりやすくなり、通常であれば1週間かかるところが、その日のうちに返事がもらえたりします。そのために、非常に忙しい時期にも、時間を作っては相手のオフィスにおしゃべりに行くように心がけています。
部下への注意は個室で
なお、マレーシアの人々は、総じてプライドが高い人が多く、プライドを傷つけられたり、面子(めんつ)をつぶされたりすると非常に怒ります。仕事の場面で言うと、人前で叱られたり、自分がやったことをけなされたり、ダメ出しされたりするのが苦手なようです。例えば、当初の予定通りに進まなかったある案件について、先方の役職者と微修正をしたところ、それを知らなかった担当者が、後になって「自分が上に説明していた内容と違うじゃないか! これでは自分が社内をミスリードしていたように思われてしまう!」と怒ってしまったりするのです。とかくシナリオ通りには進まないのがビジネスだと思うのですが、自分の知らないところで変更されたことについて、「はしごを外された」ように感じるのでしょう。どうやら、マレーシアの人々は、私たち日本人以上に、自分が周りからどう見られているかということを気にする傾向があるのではないかと思います。会社からも、「部下を人前で叱ると部下のプライドを傷つけてしまい、トラブルのもとになることもあるので、叱ったり注意をするときは、会議室などの個室で二人きりになってからにするように」と注意されているほどです。
したがって、仕事の上で何か頼みごとをする際にも、その人を尊重していることが相手にしっかり伝わるようにする配慮が必要です。まずは、「しっかり頼むよ」「お願いするよ」というスタンスが基本。たとえその人がどんなに仕事ができなくても、窓口となっているその人を飛ばして上司と頭越しにやりとりしたりしてはいけません。そうして、忍耐強く仕事を進めることで相手の信頼を勝ち取ることができれば、次にその人と仕事をする際に、便宜を図ってくれたり、こちらの依頼を優先して捌(さば)いてくれたりするのです。逆に、「侮辱された」という印象を一度でも与えてしまうと、ずっとそのトラウマをひきずることになってしまうので、注意が必要です。
なお、現地の人々の中には、時間にルーズな人も目立ちます。仕事の場面でも、15分程度の遅刻やドタキャンは日常茶飯事。一番困るのが書類の締め切りを守らないことで、契約書などの重要な書類でも、放っておくと平気で1~2週間遅れます。特に、上司の承認を取ることはとても苦手なようです。その上、プッシュすると、「今週中にはできるから」と簡単に言ってのけるのですが、たいていは来週前半までは出てこないので、気をつけなければいけません。
次回は、マレーシアの人々についてお話しします。
魚といえば、地域や店を問わず丸ごと醤油煮にするのがマレーシアの一般的な調理法。特に、この「ガルーパ」の醤油煮は定番料理だ。
写真店で店員の手元を見ていたところ、印画紙の余白をカッターと定規でカット。ここでは、まだまだ手作業が主流だ。
構成/日笠由紀